対抗策
勇輝たちが、プロメギルから戦争が始まると伝えられ、それについて様々なことを話し合っていたのと、同時刻。
天使族の街では、創真とフェルを交えた街の重鎮たちを集め、人族に対する対抗策を練っていた。
ここに集まっているのは五年前に何とかゴーレムたちの捕獲から逃げ切った天使族である。
「人族だけなら天使族が負けるわけも無いのだが・・・あの忌まわしきゴーレムたちが問題なのだ」
呻くように呟くのは天使族の族長、バーナルドである。
「天使族を動力とし強力な結界を張るゴーレム、しかも動力になっている天使族を狙いやすい位置に使い人質にもする・・・か。悪質だな」
そう、今は人族と戦うにあたって最大の問題であるゴーレムについて話し合っているのだ。
五年前に大量に投入され、その力で多くの天使族を攫っていったゴーレムは五年経った今、更に数を増やしているだろう。
そのゴーレム性能とそれを作った人間の意図を察し、顔をしかめる創真。
「我らの同族が囚われている以上、直接の破壊は出来ない。五年前の時、どうにか無力化を試みたのだが・・・近づいてもその高い性能に捕らえられてしまう。かと言って魔法を使おうにも結界が邪魔して阻害されてしまう」
「破壊は論外、無力化しようと近づけば捕まる。この状況でなんとかしようとすれば結界をどうにかして魔法を使うしかないでしょう」
その提案を出したのは勿論、創真だ。
「しかし創真殿よ、どのようにしてあの結界を無効化するつもりですかな?あれは魔法の適性が高い我らにもどうする事も出来なかった代物ですぞ」
そう言って創真に目を向けるのは集められた人の中で、一番高齢の天使族である。
「その結界ですが、どうやって魔法の発動を阻害しているのですか?それを聞かないと考えようが無いのですが・・・」
「ちゃんと調べた訳じゃないからこれは予測だけど、結界内にいる生物の魔力を吸い取ってるんだと思う。どうやって結界でその効果を発揮させてるか分からないけど、同じ効果を持つものなら皆も知ってるはず」
「なに!?それは本当かフェル!」
創真の質問に答えたのはフェルだ。それに驚いた他の皆はフェルに詰め寄るようにして質問し始めた。
「それで、同じ効果を持つものとは・・・はっ、まさかラズベリー処刑場の石材か!?」
「そう」
その人は答えを聞こうとして途中で答えに至ったようだ。
「あの石材と同じ?だったら僕はその効果を受けないんじゃないか?」
創真が思いついたことを口に出すと、フェル以外がギョッとした目で一斉に創真を見ていた。
「な、なんと!創真は、あの処刑場の効果を受けなかったのか!?・・・通りで生きてた訳だ」
バーナルドが、そう言う事だったのか・・・と言いながら疲れたように座った。
「その通りです。魔力量が少な過ぎて、僕はあの石材の効果を受けません。その効果が同じだと言うなら多分、僕は結界の効果も受けないでしょう。それを利用すれば・・・ゴーレムの無力化も出来るはずです」
「それは良い!勝てるぞ!今回の戦い・・・勝てるやもしれぬ!」
創真のその予測に部屋中が大騒ぎになるのであった。
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