勝てば良いんだ
創真とフェルがようやく再開し、お互いの無事を喜んだが、その喜びも束の間に転移陣を調べると天使族の街に人族が攻めてくるのは7日後だという事が判明した。
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7日、それがフェルと創真が天使族全員に創真を受け入れることを説得し人族が攻めてくるのでそれに対抗する準備を整えなければならないタイムリミットであった。
残り7日しかない事がわかり、慌ててどうしようか二人で悩むが何も浮かばない。
「7日でどうすれば良いんだ・・・」
「7日後には人族が攻めてくる。そうすれば私たちは、創真の同じ種族と戦うことになる。そうすれば人族がたくさん死ぬかもしれない。それでも良いの?」
フェルのその言葉は殆ど嘘であった。五年前の事件では人族など一人も戦場に出てきたりはしなかった。
戦闘は全て天使族を動力としたゴーレムで行なっていた。だから今度の戦いでも同じで犠牲になるのは天使族だとフェルも分かっていた。
それでも創真には聞いておきたかったのだ。族長が創真を受け入れるにしろ、受け入れないにしろ。人族を敵に回してまで協力してくれるのかと。
「うん?別に同じ種族だからって味方するわけでは無いし。ましては僕を殺そうとした人たちだからなぁ。別に何とも思わないな」
「そう・・・じゃあ、これからも宜しく」
フェルは同族を殺されかけたという事で死んでも何とも思わない。と言う創真の考えが不思議でたまらなかった。
このノルニドラでは基本的に同族は、見方。他種族は敵。という考えが当たり前であったから。
だからこそフェルは同族を道具にしている人族を憎むのだ。
「うん。宜しく」
フェルのそんな考えには全く気が付かず気軽に返事をする創真であった。
そんな話を挟みながらも、二人で話し合った結果、やはり人族が使役するゴーレムをなんとか出来るのは、創真しかいない。という事にまとまり、創真が戦闘に参加するため、天使族のせめて族長の説得が必要だという事で意見が固まった。
そうと決まれば善は急げと直ぐに天使族の街へ向かうのであった。
数分後
今はエンシャントドラゴンになったフェルの背中に乗り創真はありえない速度で移動中であった。
「う、うぉぉぉぉぉ!?」
『結界張ってるけど風とか大丈夫?』
「大丈夫、凄くスピードが出てて楽しくてテンションが上がってるだけだからさ!」
『これが楽しいの?』
「当たり前だよ!まさかドラゴンの背中に乗って食べる日が来るなんて!」
『ふーん』
フェルからすれば飛ぶなんて当たり前のことであったが創真は今、オタクとして一つの夢が叶っているのだ。
そんなこんなで数分後、二人はとうとう街の入り口に立っていた。二人と入り口の間には天使族の戦士達と族長が立ってこちらを睨んでいる。
「フェル!何故、人族など助けた!私の言いつけを破ってまで!」
「創真は悪い人族じゃない!それに五年前のあの悲劇でわかってるでしょ?今回の戦いでもあのゴーレムが使われる!あれをどうにかするには創真の力が必要なの!」
例によって創真が口を出せるのような雰囲気ではない、だが今回は空気を読んでいる場合ではないのだ。
「失礼ながら口を挟ませてもらいます。あなた方が過去の事件により人族を憎んでいることは分かっています。」
出来るだけ相手を刺激しないように、丁寧な言葉遣いを心がけながら話す。
「僕に協力しろ、とは言いません。せめて共に戦わせてください」
「そう言って背中を狙うかであろう!卑怯な人族めが!」
「そんなことはしません!誓います。そんなに疑うなら奴隷契約の魔法でもなんでも使って僕から自由を奪って下さい」
「何故だ、何故、貴様は人族でありながら我らを同族である人族から救おうとする。何故そこまでして我らに協力しようとするのだ」
何故?か・・・そう聞かれればこう答えるしかないだろう。
約束したからと
「約束したから、フェルにどうにかするって約束をしたんです。何度も助けてくれたフェルに・・・」
「たかが口約束でそこまで言うのか・・・ならば良いだろう。私と戦い、勝てば共に戦うことを許そう。しかし私は貴様を殺す気でやる。この戦いで貴様が負ければ容赦なく殺すぞ?それでも良いのか?」
負ければ殺される
「っ!創真、断って。もう関わらなくて良いから、戦っちゃ駄目、絶対に殺される!」
フェルが必死に断るように言ってくる。
でも勝てば・・・そう勝てば良いのだ。
「わかりました。その勝負、受けます」
そう言って僕は改めて思う。本当に僕はアホなんだろうな。と
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