一方その頃
2本目です!
創真が牢屋を脱獄し、転移陣を見つけていた頃、フェルは自分の部屋に居た。
族長である父(もちろん天使族にも家族がいて、天使族の全員が血の繋がりなど関係なく主神をお父様、と慕っているのである)にしばらく大人しくしているようにと部屋に半ば閉じ込められる形であるのである。
フェルは月明かりに照らされる自分の部屋の壁を見つめながらあの時の事を思い出す。
『連れてきてしまったからには仕方ないその者は処刑とする』
その言葉と同時に部屋に入ってきた二人が創真の頭を殴り気絶させる。
『創真!?、メオン!ビクトルク!その人はいい人、きっとこの現状をどうにかしてくれる!お願い止めて!』
部屋に入ってきた二人は古くからの顔見知りでそこそこ仲の良い二人であった。
『君はこいつに騙されたんだよ。大丈夫これで君は自由だ』
必死に創真を助けようと説得を試みるが全く聞く耳を持ってくれない二人は、そのまま創真を担いで何処かへ行ってしまった。
その後、族長である父に部屋へ入れられてしまったのだ。
「創真は、約束してくれた。なんとかするって。それなのに、なんで皆分かってくれないの?」
フェルは皆が分かってくれないこの現状にただ呟くしかなかった。
「お父様はあの時、創真を処刑すると言った。なら連れてくなら多分・・・」
ラズベリー処刑場
その場所は天使族ではない別の種族が犯罪を犯し、処刑を言い渡された時に連れて行かれる場所。
ラズベリー処刑場は、監獄でもあり処刑代でもあるのだ。処刑場の中に入れば特殊な素材で出来た壁や石が囚人の魔力を際限なく吸い取り、魔力量の多い天使族でも1日も居れば魔力枯渇で死ぬ。
更にラズベリー処刑場の外にはエンシャントドラゴンに限らず全てのドラゴンがごく稀に起こす【魔力暴走】と言う病が発症したドラゴン達で溢れている。
【魔力暴走】というのはドラゴンだけが発症する病で一度、発症すれば知能が低下して暴れまわるだけの獣と化す。更に【魔力暴走】を治す方法は見つかっておらず仕方なく街から遠く離れた場所へと連れて行くのだ。
そんなドラゴン達が時々処刑場の中に入り囚人達を殺して回るのだ。
正に一度入れられてしまえば死んでもそこから出る事は叶わない、地獄。
フェルはその先を言いかけて躊躇うのも頷けるような場所なのだ。
創真が連れていかれて数時間、今や創真の生存の確率は驚くほど低い。
『何故連れてきた』『人族だぞ』
フェルの心の中は父が言った冷酷な言葉が何度も渦巻いていた。
確かに創真は人族だ。それは5年前の大事件の首謀者と同じ種族。
でも、それだけなのだ。果たして同じ種族、と言うだけであれ程まで憎まなければならないのだろうか?
「そんなの、おかしい。人族だけど創真は、何もしてない、それなのに処刑なんて絶対におかしい」
そう呟いたフェルはすぐに出かける支度を始め、数分後には窓から飛び出していた。
ラズベリー処刑場がある方向へ向かって。
創真がもう既に抜け出しているとも知らずに創真を助けるため、必死に向かうのであった。
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