危機
「人族に!?」
人族に天使族がさらわれるかもしれない、その言葉に創真は驚くしかなかった。
今、創真がいる場所は人類未踏、未だ誰も踏み入れたことのない未開の地だったはずだ。何故そんな場所に人族がやってこれるのか。
(多分、火島は僕を殺すために転移させた筈だ。出来るだけ遠くに、戻ってこれない様な場所に。それでも僕は何とか生き残っているけど、人が居るなら助けてしまうかもしれない。それでは火島の目的は達成出来ない。何故そんな可能性のある場所に転移させたのだろう?)
そんな事を考えているとフェルが話の続きを始めた。
「10年前から、それは始まった。ある日、狩りに出掛けた仲間が戻ってこないという事件があった」
それからその事件の全容が語られた。
その事件の後、調査の為に天使族の中から数十人が集められ、周辺の捜索にあたったらしい。だがしかし行方不明者を見つけるどころか、その調査隊も戻ってくることは無かった。
それきり被害の拡大を防ぐ為、調査は打ち切り、それ以来仲間が消えることは無かったらしい。
そんな事件から5年後、天使族達が住む町に、襲撃があった。襲撃してきたのはゴーレムでその周りには特殊な結界が張ってありその範囲に魔法が入ると魔法が消えてしまったのだ。
更にそのゴーレムの中には5年前に消えた天使族の仲間達が居たのだ。どうもその人達はゴーレムの動力になっている様で下手に攻撃も出来なかった。
魔法を使う天使族達には天敵であるそんな能力を持ち、更には味方を人質に取られ皆、成す術なく次々と捕らえらていった。
フェルを含むエンシャントドラゴン達と一部の天使族達は、襲撃された際、すぐに避難した為、難を逃れたのだが、後から逃げてきた仲間によって町の状況を知ったフェルは、怒りで我を忘れ敵討ちの為に町へと引き返した。
町へ入る手前で追ってきていた仲間に止められ、捕まることは無かったのだが、逃げる際、フェルの目に人族とそれの周りにいる町を襲撃したゴーレム達が映ったのだ。
それによりこの事件は人族によるものだと知ったフェルは、騒動が収まった後、町の周辺を調査したところ、町からそこそこ離れた場所に巧妙に隠蔽された転移の魔方陣が設置されていることに気が付いた。
その魔方陣を調べたが、天使族になる前のフェルにはまだ効果しか分からず改竄は不可能であった。
仕方なく監視の魔法をその場に仕掛けその後は、観察に努めたフェルだったが、つい先日、魔方陣に魔力が集まるのを感じた。
それによりまた襲撃される事を察知したフェルは、ダンジョンを制覇する実力を持つ創真に助けを求めたのだ。
「 天使族が動力になってるゴーレム・・・?まさかっ!?」
創真はそのゴーレムに見覚えがあった。そう、あの日偶然見つけた地下室にあったゴーレムの中にも天使族が居た。
そのことからも襲撃の犯人は王国の人間で間違い無いのだろう。
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