巨大スライム
フロアマスターのいるフロアに入るとそこに居たのは、巨大なスライム。
創真は故郷へ帰る第一歩目を踏み出すため、勝率が低いこの戦いに挑む。
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僕が扉を潜りフロアの中に入ると、巨大スライムがこちらに気がつき戦闘態勢を取った。(体を蠢かせたのが戦闘態勢と言うのなら)
と、思ったら次の瞬間、そのジェル状の体の一部を飛ばしてきた。そのジェルはかなり大きく人の頭くらいなら包み込めそうな程だ。
しかもそのジェルは酸性なので当たったら一発アウト、攻撃に当たるわけにはいかない。
飛んできたジェルを避けようと僕は地面を蹴る。すると、一瞬前まで僕が立っていた場所に次々と球状のジェルが降り注ぎ、地面に当たって弾けた。
更にいやらしいことにその弾けたジェルが広範囲に撒き散らされる。当然僕のところにも飛んできたので避けようとするも、ジェルが小さ過ぎて全部かわすことが出来ない。
咄嗟に魔剣を盾にしてジェルを防ぐ、出来ればこの方法は取りたくなかった、何故ならナムルさんに貰ったこの魔剣を溶かしてしまうことになるからだ。
咄嗟にやってしまったので仕方ないと言えば仕方ないのだがとても残念だ、と思いながらジェルを受けた魔剣の表面を見る。
すると驚いたことにその場所には、傷一つ付いていなかった。スライムの酸は強力で少しでも当たればそこから腐食が広がっていく筈だ、だと言うのにこの魔剣は、溶けるどころか傷も付いていない。
もしかしたらこの魔剣が纏っている魔力によるものなのかもしれないな、だとしたらこれは嬉しい。
今は戦闘中なので素早くそう結論づけ僕は再びスライムを見る、さっきの攻撃をしてからは何もしてこない様子を見ているのだろうか?
だったらこっちから行ってやる!そう思い、僕は魔剣を構えて駆け出す。巨大スライムがぼくの間合いに入った瞬間僕は魔剣で斬りつける。
普通の武器でこんなことをすれば武器が溶けて使い物にならなくなる。だがこの魔剣ならスライムの酸に溶かされることはないので魔法が使えなくても戦えるはずだ。
改めてその確認をした僕は一気に攻める、素早さでは僕が上なのでそのスピードで翻弄しようと周りを走り回りながらスライムの攻撃を避け、魔剣で斬りつけて、そのジェル状の体の一部をスライムから切り離す。
だがスライムを倒すには魔法を使うか体の中にある魔石を砕くしかない、だが僕は魔法を使えないしこの剣ではスライムの魔石に届かず魔石を砕くことなど出来ない。
だから僕が取った方法はこれ、スライムの体を構成しているジェルを切り離し、スライムを小さくする。そうすれば魔石にも魔剣の刃が届くようになるはずだ。
この作戦は長期戦でもあり、タイムリミット付きでもある。何故ならスライムは、ある程度、ジェルがなくなり体が小さくなってくると、周りのジェルを呼び戻して体の再構築を始めるからだ。
そうなれば僕が勝つことは出来ない、だから少しずつその体を削って再構築を始める前に魔石を砕くしかない。
巨大スライムの周りを走り、攻撃を避け、魔剣でジェルを切り飛ばす。
それをすること10分程が経った頃、巨大だったスライムはジェル状の体を が最初の半分くらいの大きさになっていた。
「はぁ、はぁ、これなら魔石に届くんじゃないか?」
そう判断し、僕は一気に勝負を決めに出る。攻撃を避けつつ、距離を詰める。そして、とうとう魔石が魔剣の届く範囲に入り、剣が魔石に突き刺さる、ことはなかった。
「なっ!?」
思わず声を上げてしまった。今、魔剣の切っ先が魔石に当たる寸前なんと魔石が動き魔剣を避けたのだ。
驚いて僕が動きを止めている間、流石に危険だと思ったのかスライムがフロア全体に散らばったジェルを集め始めた。
それに僕が気がついた時にはもう手遅れだった。スライムは元の大きさを取り戻していたのだ。
しかもオマケだと言わんばかりにスライムのなかにある魔石は、不規則にジェルの中を泳ぎ回っている。
「まじ・・・かよ」
もはや絶望しかなかった、僕の体力はもう殆ど残っていない、しかもあのスライムだってアホじゃない、今度は警戒して同じ作戦では通用しないだろう。
「それでも・・・やるしかないんだぁぁ!」
僕はやけくそ気味に突進をする。剣でスライム体を少し吹き飛ばすもすぐに戻ってきて、巨大スライムにくっついた。
僕が動けないでいると、巨大スライムは酸を吐き僕の周りに着弾させた。今度のそれは粘性が強いらしく弾けはしなかったが、その場にずっと残っている。
どうやら僕が勝てないと知り弄んでいるようだ。このダンジョンを作ったやつも、このダンジョンのモンスターも実に性格が悪い。
ゆっくりと近づいてくる巨大スライム、僕は無理だと分かっても最後まで足掻こうと魔剣を構えてスライムを睨む、無駄な抵抗だった。
そしてとうとうスライムが僕を飲み込もうとしたその瞬間、僕から白い光が広がり、スライムがその動きを止めた、その後、恐れたように後ずさりしていく。
僕にもその光の正体がわからず、困惑気味に自分の体を見下ろすと、その光は僕のポケットの中から広がっていた。
恐る恐る、ポケットに手を突っ込み中にあったものを取り出してみる。そこにあったのはクリスタルの鍵だった。
「なに、これ?」
こんなもの僕はポケットに入れた覚えは・・・あ、よくよく見たらこれ、転移した時に持ってた錆びついた鍵に形が良く似ている。
それにあれを入れていたのも同じポケットだ。
まさか、あの錆びた鍵が?
「なんでぇ!?いつのまにか錆び取れたの?え、なんでこんなご都合主義なタイミング!? いや、助かったけどさ!おかげでまだ生きてるけどさ!?」
助かったのにもかかわらずそんな事を叫んでしまった。
でも、今は助かったけどスライムを倒せた訳じゃない、状況はなにも変わっていないのだ。
「だけどっ!まだ生きてる!ここからなんとかするんだっ!」
無理やり自分に言い聞かせ奮い立たせる。
さぁ、出来るかどうかわかんないけど、反撃開始だ!
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