真剣勝負
「行きますっ!」
声を出し気合を入れた僕は、魔剣を鞘から抜き正面に構えた。
ナムルさんがしっかり剣を構えたのを確認し、足に力を込め地面を蹴った。
その直後ーー僕とナムルさんの距離がゼロになった。
ここ数週間、僕の身体能力はあり得ない程高くなっていた。
これも召喚の恩恵なのだろう。
その身体能力をフルに活かしてナムルさんに突進を仕掛けたという訳だ。
その体勢のままに僕は、剣を水平に振るう、と見せかけてナムルさんに体当たりをかました。
「なっ!?」
体当たりをくらい体勢が崩れたナムルさんに僕は畳み掛ける様に剣を振ったが、ナムルさんは、すぐに体勢を立て直し剣で受け止めた。
僕たちは、そのまま鍔迫り合いになった。
「はぁ、はぁ、あんまり驚かないんですね?」
「いや、十分驚いているよ。まぁ、経験の差が違うからね」
いくら身体能力が高くなったとは言えそれは、元々の身体能力からすればという話だ。
今でも本気で動けば直ぐに息が上がってしまう
それでも普通の人からすればその動きの速さは、もはや超人の粋なのだがそれでもナムルさんには、まだ足りないらしい。
お互いに距離を取り再度、剣を構え直した。
今度は、ナムルさんも警戒したらしく、油断なく剣を構えている。
僕とナムルさんの緊張が高まっていく。
その均衡を先に破ったのは僕だった。
僕はさっきと同じ様に一気に距離を詰めるだが今度は体当たりをせずに剣を右から左に振る。
それをナムルさんは剣で受け止める
それを予測していた僕は、剣を止められたままナムルさんの腹部を狙って蹴りを放つ、ナムルさんはそれを見て直ぐに飛び退いた。
「ッ!」
逃すかっ!ナムルさんが飛び退いた直後、僕は距離を取らせてなるものか、と地面を蹴ってナムルさんに肉薄
その時、僕はナムルさんが少しニヤついたのがわかった。
嵌められたっ!そう認識した時には、もう遅かった。
なんとナムルさんは後ろに飛び退いた直後の体勢から足を伸ばしナムルさんを追いかけようとした僕の足に引っ掛けたのだ。
当然の如く僕は転び地面に這い蹲ることとなった。
「があっ!」
僕は痛みに悶えながらもナムルの状況を確認した。
あんな体勢であんな無茶をすればナムルさんだって僕と同じ様に転ぶ筈だ、と
だがその予想は外れ、ナムルさんは、地面に着く寸前に地面に手を伸ばしバク転をして普通に着地した。
い、いくら騎士の装備をしてないとはいえ身軽すぎだろ・・・
だが、ナムルさんは今まで受けるだけだったのに反撃して来た。
つまり、少し、ほんの少しだけ余裕が無くなったのだ。
これは模擬戦だ、だから別にナムルさんに勝つ必要なんて無いが、それでも僕は、ナムルさんに勝ってみたかった。
これでほんの僅かだが勝機が見えた。
この模擬戦、絶対に勝ってみせる!
お読みいただきありがとうございます




