第七話
2月8日からは後期試験期間となる。私は夕菜と受けていた授業の試験を受けに来ていた。でも、夕菜の姿はなかった。
もちろん受講者は全員受けなくてはいけない。あとで追試を受けるつもりなのだろうか。
前に話をした時、微妙に喧嘩をしたような雰囲気になったしまった。だから、一応謝りたいと思ってるのだが。
試験終了後、夕菜と多分仲が良い(授業の後、話しているのを見かける)子に声をかけた。
「あの、夕菜って今日欠席かな?」
いきなり話しかけられて戸惑っている様子だったから、
「あ、ごめんね、いきなり。私、この授業で高木夕菜と仲良くなったんだけど、今日どうしたのか知らないかな、と思って。」
そう声をかけた。
「あの、夕菜って誰のこと?」
声をかけられた彼女は戸惑ったままだった。
「えっ、高木夕菜っていう、私とよく一緒にいて、あ、茶髪の長い髪の子なんだけど」
彼女は首をかしげた。
「ゆいなちゃんのこと?」
「ゆいなちゃん?」
そして、携帯を取り出して写メを見せてくれた。
そこに映っていたのは確かに夕菜だ。
「そうそう、この子だよ」
彼女は怪訝そうな顔をして私を見た。
「でも、この子の名前は、―――――――
谷崎結菜、だよ」
タニザキユイナ、ダヨ
「それに、なんか退学するんだって。だから大学には来ないよ。」
その時の私の感情をどういう言葉で表現したらいいんだろう。頭が真っ白になってなにも考えられなくなった。なにも感じられなかったのだ。
ごめん、勘違いしてたみたいありがとうね、そんな言葉をかけ、私は足早に教室を出た。
『そうでないといつか忘れちゃうじゃない。どんな姿でも目に焼き付けて忘れないようにしたかった。』
『それをしたのが女の子で、それをして見せたのが男の子なら、彼女は彼のことが好きだったのかもね』
ようやく彼女が言っていた言葉が頭の中に浮かんだ。
夕菜―――谷崎結菜は成瀬のことが好きだったのか
だから、自分が転校する前に彼に忘れられないようあんな出来事を起こしたのか。