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第四話

広崎風花は今日の授業を楽しみにしていた。理由は単純。成瀬博希に会えるからだ。

成瀬とは学部が同じなので他にも会う機会がないことはないが、なかなか話せなかったのだ。

今日は話せるよう頑張ろう、と心に決め、教室に入る。


適当な席に着くと成瀬の姿を探すが見当たらない。まだ、来てないんだろうか。

「おい」

「ひゃあ!」

「・・・変な声出すなよ」

振り返ると成瀬がいた。ちょうど私の後ろの席に座っていたらしい。気付かなかった。

そんな呆れた顔しなくてもいいと思うなー。

「これ、ありがとう」

差し出したのは私のノートだ。

「あれ?なんで持ってるの?」

「・・・・・前借りただろうが」

そういえばそうだったか。

「どういたしましてー」

「うん、ああ」

なんとなくいつもと違う。なんか辛そうだ。

「なにかあったの?」

そう聞くとぎくっという効果音が付きそうなほど顔を引きつらせる。

「いや、別に」

「どうしたの?」

「しつこい」

―――あ、すねてる。

むすっとした表情になったことに気づいて「ごめん、ごめん」と謝る。

「昔のことを思い出してただけだよ」

「・・・・話してくれるの?」

キーンコーン・・・授業の始まりを告げる音。

「・・・今までさ一人で考えてたけど、結局どういうことなのか分からなくてさ。広崎に話して解決するわけじゃないけどなにか分かるかなって」

彼の目は笑っていなかった。

「じゃあ、授業終わりに」

目で前を向け、と訴えられ、慌てて前を向くと教授がなにやら話し始めたところだった。

そんなことを言われたら私が気になって授業に集中できないじゃん、と若干彼を恨めしく思う。









僕はきっと幻覚を見たんだ、と自分に無理やり納得させた。

そうだ、あれが彼女ならなんで橋の上で倒れてたんだ?しかも、血まみれで。

それに僕は彼女より早く帰ったはずだった。

お母さんと見に行ったときも血の跡なんてどこにもなかった。



だから――――僕が見たのは幻覚だ。






だからもう――――――――――――――この記憶から僕を解放してください。








休み明けの始業式、僕は学校に行った。きっと彼女に会えるだろうと信じて。

だが、教室でいくら待っていても彼女が来る様子はない。ついには、担任の先生が来て朝の会が始まってしまった。

冬休み、元気で過ごしていたか?そんな内容の話のあとに、先生は残念な話があるといった。

「谷崎のことだが、お家の都合で学校を転校することになった。急な話で生徒たちにすぐに伝える必要はないという本人たっての希望で――――――」

その後、先生は何と言っていたのだろう。僕はもう聞くことができず、耳を塞いで俯いた。

安心したかったのだ。彼女が学校に来て、いつも通り過ごしているのを見て僕はほっとしたかったのだ。






彼女は姿を現さなかった。



彼女はいなくなってしまった。




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