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第三話

今日は終業式で明日からは冬休み。持って帰らなくてはならないものがたくさんあった。冬休みの宿題、通知表、習字道具、絵の具セットとかいろいろ。習字道具とか絵の具セットは早めに持って帰っておくべきだったなと後悔した。

終業式が終わり、担任の先生の長い話が終わり、下校となると開放的な気分になる。明日から冬休みだ!

宿題はいっぱい出たけれど、今日はとりあえず帰ったらのんびりしよう。



ぱらぱらと降り始めた雪。いろとりどりの傘が校門を出ていく。

その中に立ち止まっているピンク色のかわいらしい傘。僕が近づくと同じクラスの女の子であることが分かった。確か名前は――――――

「谷崎」

声をかけたつもりはなかったが、そう呟く声が聞こえてしまったのか彼女ははっとして僕の方を見た。

「あ、いや、じゃあな」

振り返られたことに僕が戸惑ってしまい、足早に通り過ぎようとする。

「ねえ、空から花が降ってきているみたいだね」

ぼくは話しかけられ、足を止める。

なに詩人みたいなこと言ってるんだ―――そんな言葉が喉元まででかかったが、

「ああ、綺麗だね」

僕は空も見上げず、適当に答えて彼女の横を通り過ぎていった。

彼女は微笑んでいた―――と思う。




その後、寄り道もせず真っ直ぐ帰ったはずだった。僕は家に帰るまでに橋を渡る。橋の上には雪が薄らと積もり、橋を真っ白に染めていた。

だが、白い橋の上に不釣り合いな赤いものが見え、僕はなんだろうと思って歩く速度を少し早めた。

真っ白な橋の上にあったのは――――――






「・・・っ!!」

叫び声なんて出なかった。

橋の上の真ん中にはさっき話したはずの彼女―――――――――谷崎結菜が倒れていた。彼女の周りは赤い。真っ白な雪を真っ赤に染めていた。


反射的に後ずさる。1歩、2歩、3歩・・・

「うわあああああああああっ!!」

ようやく叫び声が出た時には僕はその場から逃げていた。

走って、走って、走って・・・僕は家に駆けこんだ。そのただならぬ様子を感じたのかお母さんが玄関まで出てきた。

「どうしたの!?」

「クラスの子が・・・血が・・!!」

お母さんはなんとか僕を宥め、途切れ途切れに話すことの内容をようやく把握できたとき、谷崎が倒れていた橋の上まで車で連れて行ってくれた。

だが――――――――









橋の上のどこにも彼女が倒れておらず、雪の上に血の跡もなかった。

あったのはたくさんの人が歩いた足跡だけ。




お母さんは彼女の家にも電話してくれた。すみません、うちの子が谷崎結菜ちゃんが帰るとき具合が悪そうにしてたと心配してるんですけど――――そういった内容で。

彼女のお母さんは不信感を隠そうともせず、

「はあ?うちの子ならちゃんと家に帰ってきてますけど?」

そう答えているのが僕の耳にも届いた。



彼女は生きている・・・それを確認した途端僕は安心した。


でも―――じゃあ、あの時俺が見たのはなんだったんだろうか

彼女が真っ赤な雪の上に倒れている姿が今でも目に焼き付いている。










僕は何を見たんだろうか







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