第二話
「はあ・・・」
広崎風花はため息をこぼした。
「どうしたのー?恋の病?」
冗談めかして言われたそのセリフに思わずぎくっとなってしまう。
「えっなに?風花、当たり?」
驚いて途端に食いついてくる友人。
「・・・そんなわけないじゃん」
「えーほんとかなー」
大学の授業が始まる前の休み時間。隣にいた友人に目ざとく指摘され、思わず動揺する。
恋の病といえばそうかもしれない。もう授業が始まるというのにあの人のことが頭から離れない。
「誰が好きなのー?」
「だから違うって!」
「えー」
成瀬博希。頭を占めているのはこの人のことだ。
ムキになって言ってるのがますます怪しいよ、と言われ顔が赤くなってきた。状況がやばい方向になってきた。
「じゃあ、風花はどんな人を好きになるの?」
にこにこと聞かれ、さらに顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「・・・そういう夕菜はどうなの?」
これ以上の追及を避けるために、質問を質問で返すという手を使った。
「えー私?」
高木夕菜は首をかしげた。綺麗な茶色に染めた長い髪。一見すると派手できつそうな印象だが、その印象とは違い、のんびりとした喋り方で大人しい性格をしていると思う。
私が夕菜と仲良くなったのはつい最近だ。この授業でたまたま隣の席に座り、喋ったのがきっかけだが、学部は違うし、この授業以外は私とかぶってないので会う機会はあまりない。この授業だけの付き合い、といってもいいだろう。
「うーん、そうだねー・・・タイプっていうか私のことを理解してくれる人がいいな」
「理解?」
「うん、わかってくれる人」
それって・・・
「結構難しいよね?」
お互い分かり合うのは結構難しい。それは確かに理想だけど、分かり合うまでは些細なことですれ違ったり、喧嘩したりすることも多いだろうから。
「まあ、そうだね」
と夕菜は苦笑した。
ふわり、と白いものが降りてきた。そっと手を出してみると雪が手袋の上にのった。俺は傘を広げ、また歩き出す。昨日から少しずつ降り始めた雪は道の上に薄らと降り積もっていた。
はあ・・
そう吐く息は白い。
そういえばあの日も雪が降っていた。
10年前の12月22日の終業式。
俺は小学5年生だった。




