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王都へ

 俺は今、箱馬車に揺られながら王都への道を進んでいる。今は、羊の月(一月)でショーンの王都での貴族会議にくっついていく形での旅だ。本当なら生まれてまだ一歳の双子がいるから俺も屋敷で留守番の予定だったのだけど、ゲイルと進めていたソルベの店の件で行かざるを得なくなってしまったのだ。因みに、双子には一歳の誕生日に青と赤のリボンをプレゼントした。赤ん坊がけど二人とも見た目がそっくりで区別を付けるのが大変だからだ。


 春先から今までゲイルからの体術の指導に魔法の精密コントロール、今のところ初級魔法(ウォーターボール程度)なら同時に九つまで自由に動かせる、に加えてソルベの店の営業準備をやってきた。今回、店の件で王都にまで行かないといけないのは開店式に参加するためだ。開店に至るまでの土地の確保とか従業員の指導とかほとんどゲイルに丸投げだったけど店のオーナー名義は俺になっているので、責任者として行くことになったのだ。


 馬車の中は俺、ショーン、そしてターニャの三人だ。ゲイルは御者をつとめている。さて、貴族の馬車と言えば華美な装飾に色彩鮮やかな塗装、さらには周囲を固める多くの護衛を想像するだろう。

 今現在、馬車を固めている護衛は四名でこれが王都まで護衛を務める人数だ。この護衛たち、屋敷にそういった人が全く居ないので雇った人間かと思いきや、歴としたゲルハルド領の私兵だ。そんな私兵がいったいどこに居たのかというと、実はルーレの町を境にちょうど屋敷と反対の位置に練兵場が存在しているそうだ。私兵の数はだいたい百人ほどで五十が領内に、残りは王都に居ると聞いている。男爵家の私兵としては少ないと思うだろうけどショーン自身、男爵の爵位を授かって領地を運営し始めてまだ十年経っていない。私兵に金を回すなら他にもっと回すべきところが多すぎる上、急ぎ確保する必要がないので後回しになっているためだ。まあ、放っておいても、元聖騎士副団長ショーン・ゲルハルドの名前は有名らしいのでこちらからスカウトしなくても勝手に増えるそうだ。

 そんな護衛たちが守る馬車はどんなものかと言えば、これもまた貴族らしくないごく普通の黒塗りの馬車だ。漆塗りでも何でもないごく普通のどこにでもある黒い塗料で塗られている。唯一貴族らしく見える部分は馬車の扉に描かれているゲルハルド家の家紋だろうか。

 馬車に回すお金もないのかと言われそうだがこれは完全にショーンの性格だ。使っていれば塗装も部品も傷んで、塗装だけなら塗り直し、部品次第だが最悪買い換えになる消耗品にお金をかける意味が分からないそうだ。前世の感覚で言うなら維持費のかかる高級車を買わずに車検の残っている中古車を買い換えて使い回していくような感じだろうか。魔物や盗賊に襲われたりして前世の車と比べれば傷つき壊れやすい環境にあるから考えとして間違っていない。


 さて、馬車の中はどうなっているかと言えば、


「大丈夫か?」

「・・・あまり。」


俺は完全に乗り物酔い(ダウン)していた。ショーンが心配そうにこっちを見ているけど正直あんまり反応できていない。

 馬車に乗るのは前世の経験を含めても今日が初めてだ。乗り込む前は初めての馬車に興奮していたが走り始めて十分も経たないうちに今の状態の完成だ。ここまで酷いとは・・・。

 何が酷いってとにかく揺れが酷い。別に道が凸凹で突き上げが酷い訳じゃない。問題は馬車のサスペンションだ。この馬車、突き上げを防ぐためにサスペンションが付いているのだけど、減衰装置(ダンパー)が付いていない。おかげで一度揺れ出すと、上下にずっとふわふわと揺れ続ける。このせいで非常に気持ち悪い。今はもう自分が揺れているのか馬車が揺れているのか判断が付いていない。なんで、ショーンもターニャも平気なんだ?


「うーん、馬車ってこんな物だろう。」

「そうですね。これ以上の馬車となると王家や侯爵家の所有している最高級の馬車でしょうね。それでもこれより多少マシな程度ですけど。」


決めた。王都の滞在中に絶対ダンパーの試作品を作る。主に俺の安全な帰り道のために。



◆◆◆◆◆◆◆◆



 レーヴェンガルト王国、王都ゲルラハ。人口およそ十万人の都市で北を城壁で囲み南は海に面している。城壁は都市の拡充に合わせて築いているので王城を守る第一層、貴族や富裕層の居住区を守る第二層、そして外壁として都市全体を守る第三層の三重構造になっている。

 南の海は扇の形に広がっている。上陸できる場所も限られているので非常に守りやすく、仮に敵が海側から攻めてきても高火力、長射程の魔法か兵器を持ち出さない限り決定打には成得ない。何せ防衛側は無理に船を沈めなくても沖に張り付けにして兵糧が尽きるのを待てば良いだけなので楽なものだ。

 

 ならば射程の長い大砲の類がないのかと言われれば似たような物は存在している。魔法で矢を飛ばす兵器だ。構造はシンプルで風魔法で圧縮空気を作り出して内部のピストンを動かし、その勢いで矢を飛ばす、空気銃に近い原理だ。

 当初、この兵器はで巨大な矢を飛ばすか弓兵に持たせて運用するつもりだった。ところが実際に使ってみると、質量の大きい物を飛ばそうとするとそれ相応の魔力が必要になって予想より威力と射程が稼げない、弓兵に持たせても一発毎に詠唱が必要で普通に矢を射るよりも時間がかかる上に弓兵の消耗が激しくて使い物にならないのだ。

 そんな残念兵器だが、対人用の矢ならある程度の数をまとめて放つことが出来る。そのため、矢の補給が容易にできる拠点防衛で城壁や港に設置されている。海側からくる敵の船に大量の火矢を放てば運が良ければ沈んで、沈まずとも嫌がらせや消耗には繋がる。


 王都の特産品と言えば海の幸だろう。海に面しているので新鮮な魚介には事欠かない。後は、海路からの交易で入ってくる各地の工芸品の類だろうか。

 観光資源として建国当初からある城、それも簡単には近づけないので遠くから見るしかない、しかないのでアピールできる食材があるとあうのは大きなアドバンテージだ。何せ食というのは人間の三大欲求の一角を担っているのだからこれほど商売になる物は存在しないだろう。人間、城を見なくても生きていけるけど食べ物食べないと生きていけないからね。



 ターニャからの王都の情報を半ば死んだような状態で聞き流していると、ようやく王都の城壁が見えてきた。日は大分傾いて、西の空が茜色に染まり始めている。王都に入るための門は全部で三つある。一つは俺たちの前にある北門で後は西と東に一つずつだ。既に夕方だというのに門の前には多くの人が未だに並んでいる。

 俺たちの馬車はその列を素通りして、真っ直ぐと門の方へと向かっていく。向かった先は列の先頭で馬車を止めると衛兵が駆け寄って来る。その顔に見覚えがあるのかショーンが嬉しそうな顔で馬車の窓を開けた。


「久しぶりだな、マグヌス。お前が当番なら素通りさせてもらえばよかった。」

「それはやめてくださいゲルハルド様。私の少ない給料がさらに減ってしまいます。」


ショーンとマグヌスが阿呆なやり取りをしていると更に四、五人の衛兵がやってきて馬車の周りを固めるように動いた。


「申し訳ありません。一応規則なので馬車と同乗者を確認させてください。」

「仕方ない。お前のの給料が減ると俺がお前の奥さんに怒らるからな。」

「否定できないから余計に怖いですよ。」


軽口を叩きながらショーンが馬車の扉を開けるとマグヌスが馬車の中をのぞき込んできた。そのタイミングで着いてきた衛兵のうち二人が馬車の周りや下を見て回って不審なところがないかを確認している。


「いつも一人なのに珍しい。初めて見る顔ですね。」

「ああ、こっちは長男のカールハインツだ。あと、こっちはターニャだ。こいつは始めてって事はないだろ。

 カール、こいつはマグヌスだ。俺と同期で北門の隊長をやってる。」

「初めまして、マグヌスさん。カールハインツ・ゲルハルドです。」

「お久しぶりです、マグヌスさん。」


マグヌスは俺の方ではなくターニャの方を見て完全に固まっている。しばらく動きそうにないのでショーンが目の前で手を振って、強制的に再起動させた。


「ショーン、旧友からの忠告だ。浮気をするならもっとマシな嘘をつけ。」

「誰が浮気だ!俺はセイラ一筋だ!。」


突然マグヌスの口調が砕けたものになったけど、たぶんこれが普段の二人の遣り取りなんだろう。


「そもそもターニャは去年、王都に一回戻って来ているだろう。何でマグヌスが知らないんだよ。」

「それは私が急いでいるときに西門を使っているからですね。あそこの方が研究所から近いですから。それに、あそこの衛兵に一人エルフの方が居るのでほとんど顔パスで通れるんですよ。・・・っと、これでいいですか?」


話しながらターニャが自分の手荷物を漁っていると、中から昔懐かしいあの瓶底メガネが出てきた。それをかけると美人エルフが一転、野暮ったいモテないいエルフになった。


「た、確かにターニャ・コヴァル先生です。失礼しました。」

「構いませんよ。しかし、この格好でないと認めてもらえないというのは喜ぶべきか、悲しむべきか。どっちなんでしょうね?」

「それを僕に問いかけるのが一番駄目なんだと思いますよ。」


そもそもが自分の堕落した生活が原因なんだから甘んじて受け入れろ。


「おっと、あまりこういうやり取りをやっていると痛くない腹を探られるのでしたね。」


立ち直ったマグヌスが姿勢と口調を改めて馬車から一歩離れた。周りの衛兵もとっくに馬車の検分を終えて道を空けている。


「月並みですが、皆さん、ようこそ王都へ。」

パソコンが壊れて携帯でちまちま打ってたら遅くなりました。申し訳ありません。


復旧の目処がたっていないのでかなりペースが落ちます。


今回かなり誤字が有ると思うので見かけたら教えてください。

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