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俺、赤羅魏弘樹は駅のホームにてアキトの学校が終わるのを待っていた。

ちょうど、暑さで喉の水分がなくなり水を飲むか考えていた時学校を終わらせたアキトがやってきた。


「ヒロキ、お待たせ!」


今日は初めて、近くの図書館へと行く。


「ったく、休みまで待てばいいのにヒロキはせっかちだな!」


「待てないよ!図書館ってアレでしょ!世界の本全てが詰まってるんでしょ!?」


そう、漫画やドラマや映画の図書館はそれはもう前面に本が詰まっていて、それはもう、素敵で。

きっと本の香りが漂っていて、上の方の本なんて梯子をださなきゃダメなんだろうな…


「世界全てかはわからないけど、今から行くところはいつも通う本屋の倍は本があるからな!」


「か、かっけぇー!!」


しかもクーラーもきいていて、まるで天国ではないか!

俺は今日から毎日図書館に通う、絶対。


…絶対、来年は高校生になるんだ。


「ほら、ついた。」


駅から少し離れて、静けさを何処と無く感じる。

これから本に囲まれた世界に入るのかと思うと俺の足は宙に浮きそうなくらい軽くなった気がした。


「…ヒロキ。」


「な、なに!?」


アキトは苦く笑いながら振り向いた。



「休館日…だった。」


















次の日になった。

場所はわかったので、俺だけで行くことにしようと朝早くに起きてご飯を食べ、外にでかけた。

今度の休みにしようと言われたが待てるわけが無い。


「とっしょっか〜ん…♪」


参考書をみっちり詰めたショルダーバッグを振り回しながら俺は図書館へと向かった。









「ん…」


扉はあかない。


「…はやく、来すぎた。」


時刻は八時。

開館は九時!


「オーマイガッ!」


頭を抱えてその場で崩れ落ちた。

しまった…てっきりあの本屋みたいに二十四時間営業じゃないのか…かなりのハンデだな…


「…待つしかないよな」


俺は暇をつぶすためにその辺に生えている草を眺めた。

いわゆる雑草、と言われるものだ。

でも雑草だって可愛い花を咲かすし、健康にいいものもある。

雑草とひとまとめされるのはなんだか嫌だ。


「…何してるの?」


突如後ろから声をかけられ、僕の心臓と身体は跳ね上がった。

ただでさえ人見知りの僕に最大の試練が来たらしい。

声は女性の声で、しかも予想だとそこまで歳をとってない、僕と同じくらいだろう。

このまま聞こえなかったフリをすれば逃れられたりしないだろうか。

ちょうど触れようとしていたアリは俺の手を無視してそそくさと逃げて行ってしまった。


「あの…聞こえてる?」


「は、はぃ…」


反射的に答えてしまった。

自分からでたとは思えないか細い声になんだか笑えてしまう。

しかし後ろを振り向く勇気はなく僕はただ目の前に咲く雑草と目を合わせる。


「もしかして、本返したいの?」


女の子は気をつかっているのか、優しく聞いてくれている。

まさか会館時間を間違えて一時間前に着いたなんて誰が言えようか。

ここは本を返しにきた程で話すのが正解かもしれない。


「そ、そう、そうです。」


「なら、立って。こっちに返却ポストがあるから。」


俺の放置していた手をあたたかく柔らかい何かが触れた。

さっきとは違う形で心臓が跳ね上がる。

引っ張られるがまま振り返るとそこにはセーラー服を来た可愛い女の子がいたのだった。





「それにしても、重そうな荷物ね。これからお泊まり会にでも行くの?」


彼女はなおも俺の手を離さないまま歩く。

気にしていないのだろうが俺にとっては一大事だ。


「いや、勉強を…」


「へぇ、中学生がこの時期から勉強なんて偉いね?何処の高校受けるの?」


「へ?」


中学生、という単語に嫌な予感がした。

彼女は何も悪意はないのだろう、悪意はないのだろう。


「…俺、一応…高校一年生…の歳…なんだけど…」


彼女はハッ、とした顔をした後少し気まずそうに目を逸らした。

いいんだ…そりゃ少し童顔だし、なにせパーカーだし、制服じゃないし、それに、中学生ですらなったことはないし…


「ごめんね?私女子校だから男の人と話すことってなくて…近くで見るのも初めてなものだから…」


「俺も、女の子と話すのは初めてかもしれない。」


母もいない身柄だ、数回来たことのあるイノウエさんやカナちゃんに雪ちゃんくらいだろう。

それにこの子からは、なんだかいい香りがする。


「あ、返す本はここにいれるのよ。私これから学校だから急がなきゃ…。」


ゴトンッ、と彼女が借りたであろう本が小さいポストの中へ吸い込まれる。

すっかり本を返す人間となっていた事をわすれていた。

そうか、彼女とはここでさよならなんだ。

そう思うとなんだか胸がキュッ、としまった。


「あ、あの、ありがとう。」


「いいのよ、それじゃあさよなら。」


彼女は握っていた手を離すとひらひらと手をふって足早に去って行った。

それからはずっと青く晴れ晴れとした夏空を眺めながら彼女の事を考えていて、気がつくとすでに九時になっていたのだった。














「…おーい。」


図書館に行ったヒロキは図書館で勉強したとは思えないほどにやけた顔をしていた。

まさかエロ本でも見つけて読んでいたのではないだろうか、けしからん。


「図書館、どーだった?」


俺の問いかけなど気にせず上の空な声が返って来る。


「うん…」


「ヒロ、一体図書館で何があったってんだよ。」


この浮かれ具合からするとヒロキはきっと、恋、をしたんだと思っている。

図書館でべっぴんな受付のお姉さんにでも恋をしたんだろう。


「可愛い…女の子が…」


女の子!?まさかヒロキは幼女に手をだしたのか!?

友人の驚異的な性癖に少々心が焦る。

落ち着け、俺、ちゃんとヒロキを受け止めてやるんだ!


「で、何歳?六歳ぐらい?」


「……え?」


「え?」








一通り、起こった事を聞かせてもらった。

まさかあのヒロキに好きな人ができるなんて俺には驚きでしかなかった。

しかも一目惚れ。


「で、どうすんの?」


「え?」


「え…ってその子のこと好きなんだろ?」


空気が固まる。

しばらく固まったヒロキはみるみるうちに顔を赤くした。


「ハ、ハァー!?な、ななな何言ってるの!?お、お前それは違うっていい匂いがして可愛くて柔らかくて胸がドキドキしたのは女の人に慣れてなくて戸惑っただけで恋なんて僕わからないし!!!!」


何故こいつは乙女ではないのだろうか。


「落ち着けって。」


予想以上に面白い反応をするヒロキに俺の悪戯心がくすぐられる。

恋をしたことがないんだろうなあ…


「駅近くの女子校なら一つしかないし、図書館に行ってればまた会えるんじゃねぇの?」


ヒロキは嬉しそうに目を輝かせた。


「本当!?本当!?」


「何回か会ってさ、仲良くなったら図書館以外でも会えませんか?って誘っちゃえばいいんだよ」


なんて饒舌に語る俺はまだちゃんとした恋などしたことはないのだが。

ヒロキに先を越されたような気がしてなんだか悔しい。


「ねえ、どんな子なの?」


「ポニーテールに赤いリボンで、髪は薄いクリーム色だった。気品溢れるけど可愛くて、女の子って感じだったよ!」


「まあ、そりゃあ女の子だしな。」


ヒロキが好きになったんだ、きっとかわいい子なんだろう。

こいつもいつかは俺から自立するのかと思うとなんだか寂しい気持ちになった。

友達ができて、彼女ができて、俺から離れていくのだろうか。


「なあ、ヒロ、来年こそは一緒の学校、通おうな。」


「へへ、アキトと同じクラスになってみせるよ。」


その子供らしさを残した笑顔を見ると、つられて俺も笑顔になった。



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