シャチくん
私はちょっと変わっています。でも、周りはもっと変わっています。
この学校は弱肉強食が全てで、だから私は格好の餌で、でも死んでなくて。
全てはお隣にいるシャチくんのおかげです。愛らしいパンダ柄に反して、身体は筋骨隆々に逞しく、つるつるとした身体がむしろ恐ろしいくらいです。
海のギャングと呼ばれる彼は、クラスの草食系(草食主義者)をばくばくと食っていたりします。クラスの三分の一は彼にやられ、今ではすっからかんです。
そんな容赦無い彼ですが、何故か私のことは食べません。いや、むしろ守ってくれるくらいです。
先輩のチーターに襲われそうになったとき、横から噛み付いて助けてくれたのはシャチくんでした。そして、素っ頓狂な私をよそに餌を貪っていた彼に、私はあろうことか恋のようなものを感じてしまったのです。だってあれっきり、シャチくんはずっと私と一緒に行動してくれるのです。というかむしろ友達みたいな感じなのです。じゃれあったり(無論私に傷ひとつつかないように多少遠慮はしてくれている)するし、私を非常食呼ばわりしたりされたり。そこにある毒に中毒があり、私は余計シャチくんに夢中になります。もう恋人同士でいいんじゃないの私たち。そう言ってしまいたくなるくらい、私とシャチくんは仲良しなのです。
そして現在、眠たくなりそうな先生の話になんて一切耳を傾けず、シャチくんの横顔をじっと見つめているわけで。
賢い彼は黒板に目を釘付けにし、せっせとノートに黒板を写していました。