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 朝日が眩しい。うっすらと目を開けてみるとそこには美しい女性の顔があった。

 誰だろう。輝く金髪。長いまつげに縁取られたペールブルーの瞳。形のいい唇。俺の顔を心配そうにじっと覗き込んでいる。

 ああ、俺はきっと夕べこの女と寝たんだ。いや、朝だとはいえまだまだもう一発くらいはいけるかも。

「はい、ハニー。キスしてくれよ」

 俺は身体を起こすと彼女の首に手を回し、そっと唇を……。

 次の瞬間。顔面に猛烈な衝撃を食らい、地面に激しく後頭部を打ちつけた。一瞬、何も見えなくなり、頭がくらくらした。と、同時に鼻に強烈な痛みを感じ、手を当ててみると鼻血が噴出していた。

「何を寝ぼけてんだ。このやろう!」

 え? この声は男? そう思った途端、夕べ起こったことをようやく思い出した。

 鼻を押さえたが、あまりの痛さに涙が溢れてくる。ぼやけた目で前を見ると、レイは腰に手を当てて俺を睨みつけている。

「す、すまなかった。てっきり夕べ女と寝たんだと」

「俺が女に見えるか?」

 見える、と言いたかったがさすがにそれを口に出すのは躊躇われた。これ以上痛い思いをしたくはない。

「とにかく起きろよ。早めにここを離れた方がいい」

 俺は立ち上がり、身体についた土を払い落とした。夏とはいえ、森の地面の上に寝たせいか身体が痛い。

「夕べはすまなかった。危うくお前を殺すところだったよ」

 そうか。夕べは興奮してしまって気付かなかったが、もし、あの時、盗賊共が現れなければ俺は今頃、干からびた死体に成り果てていただろう。

「ああ、もういいんだ。それより傷は?」

 レイは惨殺死体のようになったTシャツをするりと脱いだ。胸にあった傷は綺麗に消えている。これは凄い。

「このとおり。もう何ともないよ」

「本当だ。凄いもんだな。ヴァンパイアって」

 俺はリュックの中からハードロック・カフェのロゴが入った黒いTシャツを取り出すとレイに渡した。まだ鼻がズキズキする。

「これを着ていけ。もう着替えはないから汚さないでくれよ」

 レイはTシャツを着ると、少しだけ笑みを見せた。

「ありがとう。迷惑かけてすまなかったね」


 俺達はすぐに出発した。道に戻ると、森を抜けるまで黙々と歩き続けた。

 俺はヴァンパイアに出会ったのは初めてだったから、いろいろと聞いてみたいこともあった。だが、うっかり立ち入ったことを聞いたりすると何をされるか分かったもんじゃない。

 夕べ、こいつは一族の掟を破り人間の女を愛してしまったために捕まり、罰として眠りにつかされたと言っていた。いったいどんな人生を歩んできたのか。そもそもこいつの年はいくつなのか。

「お前、どうして杭を打たなかったんだ。せっかくのチャンスだったのに」

 前を歩いていたレイが突然、俺に問いかけてきた。

「どうして……か。いや、どうしてかな。その気がなくなったんだ」

 レイは急に立ち止まって振り向いた。

「眠ってるあいだに俺に殺されてたかもしれないのに? 呑気な奴だな」

 その眼差しの鋭さに、言葉が詰まってしまった。

「あ……あ、いや。それはそうなんだけど」

 レイは俺の様子を見てにやりと笑った。

「お前、ハンターじゃないな。まあ、初めからそう思ってはいたけど」

「ど、どうしてそう思うんだ?」

「本物のハンターは杭を打つことを躊躇ったりしない。一瞬の迷いが命取りになるからだ。お前は昨日俺が目覚めた時、杭を持って考え込んでいたじゃないか」

 そうか。俄かハンターだということはばれていたのか。

「でも、よかったよ。お前が本物じゃなくて」

「は?」

「俺はハンターを絶対に生かしてはおかないから。もし本物だと思っていたら俺は夕べお前を殺していたかもしれない」

 背中がぞくっとした。彼の言葉に嘘はなさそうだ。

「じゃあ俺からも聞くけど、お前はなんで杭を打ってもいいなんて言ったんだ」

 レイは俺から目を逸らすとまた歩き出した。

「本当にそう思ったからだ。自分がヴァンパイアだと思い出した瞬間に死にたいと思った。でも」

 一陣の風が木々をざわめかせる。甲高い鳴き声をたてながら大きな鳥が樹上を通り過ぎ、レイの言葉を遮った。

「……でも、今はそうは思っていない。俺はヴァンパイアだ。与えられた運命を受け入れるしかないんだ」


 ようやく森を抜け、大きな道路と交差するところまで辿りついた時にはすでに昼近くになっていた。

 時おりやってくる車に親指を立てて合図を送っても、男二人と見ると、みなスピードをあげて通り過ぎていってしまう。

 車の巻き上げる砂埃がざらざらと顔に当たる。ここには道路のほかはなにもない。後方に見える森以外は地平線の彼方まで草っぱらが続いている。そのうえ、茹だるような暑さだ。空には雲ひとつない。考えて見ると夕べからシャワーも浴びていないし、水すらも飲んでいない。喉は渇くし、腹は減るし、おまけに身体がべとついている。道路の端で座り込んでいたレイがふっと溜息をついて立ち上がった。

「デビィ、ぜんぜん捕まらないね」

「ああ、まあ男だとなかなか止めちゃくれない」

 暑い。ここには日差しを遮る場所すらない。

 リュックを開けてみたが、喉を潤せるようなものは入っていなかった。だが、中にあった汚れたタオルを見たとき、あることを思いついた。くしゃくしゃに丸まったタオルを二枚取り出すと、レイに渡した。

「なんだよ、これ」

「それを胸に入れてみてくれ」

「はあ?」

「いいから、やってみろ。頼む。車を捕まえるためだ」

 レイは首を傾げながらTシャツの中にタオルを突っ込んだ。

「これでいいのか?」

「いいな。ばっちりだ。ついでに今度車が来てドライバーが男だったら、よろしく頼む」

 俺はそう言いながら、少しずつ後ずさりした。

「お前、まさか……」

 ようやく事態が飲み込めたようだ。や、やっぱりまずかっただろうか。

 レイは何も言わずに俺をじっと見詰めて考え込んでいた。

「……まあ、このままいつまでも突っ立ってるわけにもいかないしな。仕方がないか」

 その時、一台の白いワゴン車がこちらに近付いてくるのが見えた。

 レイは道路に歩み出ると、少し足を開いて左手を腰に当てた。車のドライバーは男だった。他には誰も乗っていない。

 車が通り過ぎる瞬間、レイはシャンプーのCMモデルのように腰をくねらせて右手で髪をかきあげながら妖艶に微笑んだ。

 急ブレーキの音が鳴り響いた。


「おい、レイ。お前って本当にゲイじゃないよな」

 ようやくありつけたチーズバーガーに齧りつきながら、俺はレイに問いかけた。

「違うって言ったろ! あれはあくまでも非常手段。クローデット・コルベール(注1)の真似をしてみただけだ」

「なんだそりゃ? いや……でも、ぞくっとするほど色っぽかったぞ。あ、もしかして女装趣味とか」

「ない! いいか。もうあのことは忘れろ。二度と口に出すな」

 レイはうっすらと顔を赤くして、でかいオムレツに何度もフォークを突き刺している。親の敵と言わんばかりの突つき方だ。

 なんというか面白い奴だ、こいつは。ひどくクールなところがあるかと思うと、突然、思いもかけないことをする。ヴァンパイアじゃなかったらずっと友達でいたいところだ。

 さっきの車の奴はウディ・アレンそっくりなセールスマンで、車の座席には白いレースのカバーがかけてあった。助手席に乗ったレイに嬉しそうに話しかけていたが、ほとんどは自分の仕事の愚痴だった。俺はつくづく隣に座らなくてよかったと思った。

 降ろしてもらったレストランの中は昼時ともあってそこそこに人が入っていた。レイはフォークを置くと、ブラックコーヒーのカップを口に持っていく。そうしながら、目の前に置いてあった小さなスプレー缶を手に取った。

「レイ、それはなんだ?」

「護身用スプレー。主成分は唐辛子だって。さっきのオヤジから貰ったんだ。お前にやるよ」

 レイが投げて寄越した缶を受け取ると、ラベルにはにっこり笑った唐辛子の絵が書いてあった。商品名は『スーパー・ペッパーマン』……あんまり売れそうにない。

「食欲ないのか? ぜんぜん減ってないぞ、オムレツ」

「ああ、もういらない。食べるか?」

 俺は腹が減っていたのでありがたくオムレツを頂戴した。


 腹いっぱいになり、食後のコーヒーを飲んでいると、奥の席にいた男が立ち上がり、にやにやしながら近付いてきた。どうやら酔っ払っているようだ。角刈りの金髪で、黒いランニングからは蛇の刺青をした腕が覗いている。ターミネーターみたいに体格のいい男だ。そいつはずかずかとこちらに歩いてくるとレイの横で立ち止まった。

「よお、兄ちゃん。いいもの見せてやろうか」

 そう言うと、いきなりテーブルの上に手に持っていた重そうな麻袋をどすんと置いた。

 麻袋を開け、男が手を突っ込んで取り出した物を見て、俺は吐きそうになった。

 それは女の生首だった。ブルネットの髪を肩まで伸ばした女の土気色の顔は酷く悲しそうにみえた。口の中には鋭い二本の犬歯が見える。ヴァンパイアだ。

「こいつは俺が夕べ狩ったんだ。いい女だろ?」

 気が付くとレイが立ち上がっていた。全身が怒りで震えているのが分かる。男を睨みつけるその目が青い光を放ち始める。やばい。

「どうした? 怖くて声も出ないか? このチキンや……!」

 男が叫ぶのと、レイが男を殴りつけるのはほぼ同時だった。

 男の身体は吹っ飛び、カウンターに激しくぶつかって止まった。口から血を噴出して呻いている。手にぶら下げていた生首がごろん、と床に転がった。

 レイは怒りに顔を歪め、男の方へ一歩踏み出した。

 店の中にいた客の視線が一斉に集まってくる。

 彼の唇から鋭い牙が覗いているのを見た途端、俺はテーブルの横に立てかけてあった剣を取り、レイの前に回って顔にまっすぐ突きつけた。

「ばかやろう。目を覚ませ、レイ!」 

 俺の怒鳴り声にはっとしたように我に返ったレイの牙がすうっと引っ込んだ。

「あ…ああ。すまなかった、デビィ」

 レイはもとの椅子に崩れるように座り込むとテーブルに肘をつき、両手で顔を覆ってしまった。

 振り向いてみると、さっきの男は怒りで顔を真っ赤にしながら立ち上がろうとしているところだった。男が腰から銃を抜き、こちらに銃口を向けたとき、何かが後ろから男の頭を直撃した。

「この、酔っ払い! テーブルを汚しやがって! さっさと失せやがれ!」

 カウンターの向こうから身を乗り出した女が叫んだ。黒い髪を無造作に結い上げ、大きく胸の開いた赤い花柄Tシャツを着た体格のいい彼女のその手には大きなフライパンが握られている。

「くそっ。覚えてやがれ!」

 男が頭を抱え、首を拾って出て行くまで彼女は腰に手を当てて睨みつけていた。


「悪かったね。あいつはあたしの店の常連なんだけど性質の悪いハンターでさ。普段はでかい斧持って歩いてるんだ。物騒な奴だよ」

 女は熱く湯気を立てるコーヒーのマグカップをふたつ、テーブルの上に置いた。

「すみません。お騒がせしてしまって」

 レイが弱々しい笑顔で謝ると

「いいんだよ。悪いのはあの男だから。これはあたしの奢りだよ。それじゃ、ゆっくりしてって」

 女は人懐こい笑みを浮かべて、テーブルを離れた。歩くたびにでかいスイカみたいなお尻が左右に揺れている。やがてカウンターの向こうから大声でコックを指図する声が聞えてきた。


 レイはコーヒーを一口啜ると、ふっと溜息を漏らした。

「すまなかった、デビィ。あの首を見たとたんに嫌なことを思い出してしまって……。俺はまだ完全に衝動をコントロールできないようだ。お前が止めてくれなかったらどうなっていたか。ありがとう。感謝してるよ」

「ああ。いや、俺もちょっとやばいと思ってさ。それだけだ」

 汚れた窓の外はまだ日差しが強そうだ。だが、そろそろ次の町に行かないと日が暮れてしまう。

 俺は少しだけ心配だった。彼は携帯電話もインターネットも知らない。これから感じる時代感覚のズレに戸惑うことはないだろうか。俺は家に帰らなくちゃいけない。でも、あと一晩くらいは付き合ってもいいか。

「レイ、今夜は俺と一緒に泊まらないか? 今の時代のことをいろいろ教えてやるよ。三十年分のギャップを少しでも埋められるかもしれない」

 レイは少しだけ微笑んだ。

「ああ。でも、この状態では夜の間にお前を襲わないという保障はできないよ。ここで別れよう」

「そうか。残念だな」

「ひとつだけ約束して欲しい。俺のことは誰にも言うな。家族にもだ。夕べはうっかりして喋りすぎてしまったけれど、これ以上、一族に迷惑はかけたくないんだ」

「分かった。約束する」

 何となく離れがたい気がした。でも、ここできっぱり別れてしまったほうがいいのだろう。

 リュックからいくばくかの金を取り出してレイの前に置いた。レイは戸惑ったように俺の顔を見た。

「何も言わないで受け取ってくれ。これは今夜の宿代と明日の食事代にして欲しい。お前は何一つ持ってないからな。その代わり、あとは自分でどうにかしてくれ。何か出来る仕事はあるのか?」

 レイは金と俺を真剣な顔で交互に見ていたが、やがてそっと手を伸ばした。

「じゃあ、借りておくよ。金が出来たら返すから、嫌でなければ家の住所を教えてくれ。それから俺はちょっと腕のいいバーテンダーなんだ。心配はいらないよ」

「分かった。いい働き口が見つかるように祈ってる」


 リュックを背負い、立ち上がりかけた時、薄汚れた窓の外に一台の大型バスが駐車するのが見えた。中にはぎっしりと人が乗っているようだ。やがてドアが開き、若い女が入ってきた。グレーのスーツに薄茶色の髪を肩できっちりと切り揃えたきつい眼差しのその女は、なんというか、ドラマに出てくる意地悪な女教師みたいだ。カウンターにつかつかと歩み寄って、先ほどの店主に声を掛けた。しばらく何かを話していた女は、やがて店主の手に何かを握らせた。店主は満足そうに頷くとカウンターから出てきて、ぱんぱんと手を叩いた。

「ちょっと聞いとくれ! こんなかにバックパッカーはいる? いたら手を上げて」

 一番奥の席に陣取っていた五人のグループが一斉に手をあげた。俺も一応はそうかなあと思いながら(まあ、旅の動機は情けないけど)手を上げる。レイは黙って外のバスを眺めている。

「ちょっとこの人の話を聞いてやって。なかなかいい話だよ」

 さっきの女がにっこりと営業的な笑顔を浮かべて、話し始めた。

「皆さん、こんにちは。当バックパッカー支援組織『パッカーズ』では、この先の町ダンウィッチのホテルで、今夜バックパッカーのための無料ご招待パーティを開きます。食事、宿泊ともタダですから、予定のない方はぜひおいでください。今、外に送迎バスを待たせてありますので」

 それはまた、ずいぶんと上手い話だが。

「あの、それって誰がお金を出したパーティなんですか?」

 聞いたのは、五人の中の一人、ピンクのTシャツを着た長い髪の女の子だった。

女は笑顔を崩さずに答える。

「私達の活動はさる資産家の方の厚意によって行われています。今夜の会場となるホテルは経営難で潰れたところを私達が買い取ったものです。このパーティを皮切りとして、パッカー専用の格安で安全、清潔なホテルをオープンする予定です。本日ご招待する方は、事前モニターとして宿泊後、アンケートに答えていただければ結構。怪しい団体ではございませんのでご安心ください」

 五人の団体はしばらくひそひそ話し合っていたが、やがてひとりが手を上げた。

「あたし達、行きます」

「ありがとうございます。あなた方はどうなさいますか?」

 女がこっちを向いて聞いてきた。

 俺が答えようとすると、レイがいきなり俺の腕をきつく握って首を横に振った。

「え? な、何だよ、レイ。あ……あの、すみません。少し時間をください」

「よろしいですよ」

 女は先の五人を先導して外に出て行った。

「行っちゃ駄目だ、デビィ。やめたほうがいい」

レイが囁いた言葉に俺は少し腹が立った。

「なんでだよ。タダ食いできるチャンスじゃないか。それに俺達はここで別れるんだぞ。あとはどうしようが俺の勝手だろ!」

「行くな。嫌な予感がする。取り返しの付かないことになるぞ、デビィ!」

 俺はレイの手を振り払って立ち上がった。

「悪いけど俺は行くよ。じゃあ、元気で」

「デビィ」

「なんだ」

「その剣は持っていけ。必要になるかもしれない」

 レイが何を心配しているのか分からないが、俺はありがたく剣を頂戴することにした。

「その剣、剥き出しじゃないか。これ、よかったら持っていきな」

 店主が俺のほうにベルトのついた皮の鞘を放り投げた。慌ててキャッチしたベルトを腰に着けながら礼を言った。

「すみません」

「お代はいらないよ。それは誰かの忘れ物だからね」

 ちょうどその時、女が戻ってきた。

「俺も行きます」

「よかったわ。もう出発しますから早く乗ってくださいね」

 女の後を追って出て行こうとすると、後ろでガタン、と音がした。

「仕方ない。俺も行くよ」

 レイだ。むすっとした顔のまま、俺の後を追ってくる。

「勝手にしろ!」

 俺は女に促されてバスに乗った。バスの中には大勢のバックパッカーがすでに乗っていた。後ろの方の二人掛けの空いている席に腰掛けたが、レイは俺の隣には見向きもせずにもっと後ろの席に行ってしまった。レイの姿を見た一人の男がさっそく席を立ってレイの隣に座り、懸命に話しかけている。奴はこれからも苦労しそうだ。そう思ったら何だか可笑しくなった。


    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 女はバスに乗り込む前に携帯を手に取った。

「……はい。実験体は全て揃いました。これからホテルに向かいます」

 うまくいったわ。女はほくそえんだが、バスの中から鋭い視線を感じて振り向いた。金髪の青年がにこりともせずに女を見ている。気付かれた? いいえ、そんなはずはないわ。

 

    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 バスのエンジン音が響きだす。この後、俺はレイの言葉に従わなかったことを猛烈に後悔することになる。

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