7:恋の病
一晩、寝たり起きたりしながら考えた。
私には頼れる誰かが必要なんじゃないかってこと。
不安定な私を全部包みこんでくれる、優しくて大きな存在。
雄三さんは…多分、好意を持ってくれてる。
でも、こんな私を認めてくれるかはわからないし、私自身雄三さんに全てを任せられるのかはわからない。
もうずっと恋の病だよ。
§
《突然ですけど、雄三さんって好きな人いるんですか?》
具合が悪いという人からいきなりこんなメールが着たら、どう思うだろうか。
雄三はどんな意味なのかと、不思議に思った。
この前、電話を切られてしまったばかりなのに。
今までのことで、自分に好意があるから訊いてきたのではないことは重々承知している。
《もう全快したの?》
と、雄三は気になっていたことを尋ねた。
《あ、はい。ぼちぼちです。》
美帆は予想に反した返事が着たので、少し挙動不振になりながらも返事を打った。
《そっか、良かった。ちょっと気になってる子はいるよ。》
《誰ですか?学校の人?》
なんだかいやに突っ込んでくるなぁと思いながら、
《いや、町で知り合った人。》
と曖昧な返事にしておく。
《私が知ってる人なら協力しますよ。助けてくれたお礼です(^-^)》
…あぁ、そういうこと。
このメールを見て、雄三は落胆した。
美帆の眼中に自分は全く入っていないことがわかったから。
だが、裏を読むと、わざと雄三の気持ちに気付いていないふりをしているということも出来る。
―これはあくまで雄三の希望に過ぎないのだが。
《協力なんて良いよ。お礼の代わりに二人で遊びに行こう。》
この返事を見て、今度は美帆が落胆した。
もう諦めてくれると思ったのに…。
内心は、もし諦めなければ自分を包み込んでくれる人になってくれるかもしれないと、淡い期待も抱いていたのだが。
……ふぅ。
溜め息を軽くつき、
《わかりました。どこ行きますか?》
「〜〜よぉっし!!」
メールを見た瞬間に左手でガッツポーズを作り、意気込む。
…さて、どこにしようか。
いきなり自宅というのもアレだし、やはりカラオケ?
《渋谷・原宿辺り歩いて、カラオケは?》
《カラオケ好きなんですか?私も好きですよー。》
知ってるよ。楽しそうに歌っていたから。
《じゃ、決定な。体調に気を付けて。集合はハチ公前に朝11:00!遅刻厳禁!!以上。》
11時かぁー、とのんびり思っていると、
《明後日な!》
と付け足しのメールが着た。
ぷっ
思わず笑ってしまう。
以上、なんて言って終らせたのに。
どこか抜けてるんだから…。
雄三からのメールをじっと眺めていた。
美帆の心に愛情が沸き始めていたことには、まだ誰も気付いていなかった。