6:昔の事
中学三年間、私と達也は同じクラスだった。
よく、バスケやサッカーなどのスポーツの話で盛り上がっていた。
なんでも相談出来て、大切な友達。
だから、時が経つに連れてお互いのことを好きだと思ったのは、とても自然なことだった。
付き合うきっかけは、達也の“付き合っちゃうか”という言葉。
はにかんだ表情が忘れられない、十四の夏…。
その頃は部活まっ盛りで、達也の所属するバスケ部はどんどん活躍していった。
私はジャズダンス部で自分を鍛え、メンバー全員が理想のプロポーションを手に入れた。
たまに行ける達也とのデートはとても幸せで、楽しかった。
何もかも、満ちたりていた。
中三の修学旅行で夜中、森へ抜け出して、満天の夜空の下で約束した。
―卒業しても、また一緒に来よう―
嬉しくて、でもなんだか恥ずかしくて。
答える変わりにキスしたんだ…。
だけど、幸せって続かないモノなんだね。
たくさんの星が、キラキラ祝福してくれていたはずなのに…。
卒業式前の日曜デートの、最後にあなたはこう言った。
―他に好きな子が出来たから…別れよう―
時々貴方が沈んだ顔しているの気付いてた。
だから元気づけようとデートに誘ったのに。
さよならするためじゃ、なかったのに。
最後のキスは涙で見えなかった。
大好きな、ぽかぽかした春の空。
私一人だけ、取り残された。
§
「疲れたから、寝る」
ふてくされたような口調で立ち上がり、階段をゆっくり昇る。
泣きたくなった。
泣きそうだった。
でもだめだってわかっているから我慢した。
自分でも過去のことばかり気にしてるなんてバカらしいと思う。
でも私は弱くて。
とても、弱くて…。
支えがない今、どうすれば良いのかわからない。