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春々恋歌  作者: 由樹
23/24

23:盛沢山

「私、ちょっと悩んでたことがあったんだけど…それ聞いてはっきりした。美帆は雄三さんのことが大好きだよっ☆」

少し恥ずかしそうに、満開の笑顔で雄三を見つめる美帆。

「…ほんとに?良かった。実は俺、美帆は投げ遣りなんじゃないかって、ちょっと心配してた」

「へへっ。ごめんなさぃ」

ちろっと舌を出す。

「―で、どこ行く?」

「…のんびり、歩こ」

ゆっくり、ゆっくり、時を刻んでいくように。



次の日、すぐに伝えたくてまだ朝だったけど達也に電話した。

「もしもし、達也?…うん、電話久しぶりだね。えと…まだ返事してなかったから、しようと思って」

…どうしよう…。

辛くって言えないよ。

達也が私のこと、どれだけ好きでいてくれたかわかったから。

私から遠ざかって行った理由も、全部私のためだったから…。

でも、私には雄三さんしかいない。雄三さんが、そう言ってくれたように…。

「私、他に好きな人がいるの。達也と別れてからずっと…一人でいたんだけど、やっと大好きだって思える人が出来た」

達也以上に、大切だと思える人。

「それは、俺の代わりとかじゃなくて…本当に好きな人なの?」

かすれた声で言ってくる。

「最初はきっと、代わりだったんだと思う。でも私自身、そんないい加減な付き合いはいやだったからずっと拒んでた。今は心から、大切な人だよ」

「……もう付き合ってたりする?」

「うん」

「そっか…わかった。俺、美帆はずっと待っててくれるんだろうって…甘えてたし、自惚れてた。いきなり言って、困らせてごめんな」

あっ……。

やだ…っ。

「…泣かないで…?私、達也が好きだって追い掛けてくれたとき、すごく嬉しかったんだよ。達也とのことはこれからもずっと、大切な思い出として残るから…」

…っ。

泣くな、ばか。

私まで泣いてどうすんの。

うっ…

「今までありがとう。これからも、友達でいてください…っ」

「……あぁ、時間はかかるかもだけど、また友達として仲良くしよう」

泣きすぎた。

達也の涙はとても久しぶりに聞いたけど、それでも前のわけがわからない別れの涙とは違う、あったかい涙。

二人の気持ちは、通じてる。


―また、一緒にここに来よう―


思い出の中の達也の言葉が昨日のことみたいに思い出される。


ありがとう、達也。


報告しなきゃいけない人が、一人いる。

菜茄。

調子が良くて明るくて、一見いい加減なようにも見えるけど、本当は人一倍優しい子。

菜茄ならきっと、達也とのことを言ったって大丈夫。

だけどね…。

そこまでは、言う必要がないと思うの。

言ってどうなる?意味がある?

菜茄がただ、へぇ〜って思うだけで何が目的で言ったのかもわからないよね。

言わなきゃいけないときが来ればもちろん言うけど、そんな時が来るとは思えない。

親友だからってなんでも話さなきゃいけないわけじゃないし、私も菜茄のことを全部知ってるだなんて思ってないもの。

雄三さんと付き合うことになった、それだけ伝えよう。

久しぶりの、菜茄への電話。

結局…夏休み最初の頃から連絡とってなかったな。

久々だから話すの楽しみ。

「もしもし菜茄?おはよー」

ふぁぁ…

菜茄の欠伸。

そっか、今まだ十時だっけ。

菜茄は予定無いと午後まで寝てる人だった!すっかり忘れてたよ。

「ごめん、いきなし電話しちゃって。また後でかけなおした方が良い?」

「や……ぅん、元気元気。大丈夫」

すごく眠そう…。

とっさに電話してしまったけど、よく考えたら人を起こして、彼氏できたの☆って言うだなんて……相当非常識だ。それこそ、意味がわからない。

「ほんっとにごめん!くだらないことだから二時頃かけなおす」

これじゃはた迷惑な友達だ…。

「や、平気。目覚めてきた。それより、美帆が慌てて電話してくるくらいだから気になる」

慌ててたかな…。

「慌てたつもりはなかったんだけど…」

思ったことをそのまま伝える。

「だって美帆がこの時間に電話してくるなんて結構重大なことなんじゃない?もう起きたから、早く話して」

急かさないでよ…。

そう思った美帆だが、すぐに本題に入ることにした。

「雄三さん、覚えてる?」

「うん、恭迅の友達。忘れるわけないでしょー菜茄が合コンセッティングしたんだもん」

そうだった。

美帆は思い出す。

美帆と雄三を巡り会わせてくれたのは、何を隠そう菜茄だ。

「私、雄三さんと付き合うことになったよ。菜茄のお陰」

結局自分は菜茄に助けられていた。

新しい学校にすぐ慣れることが出来たのも、結局はタイプが違って見えた菜茄と仲良くなれたからだ。

「あぁ、やっと?良かったじゃーん。おめでちょっ☆」

「ありがとー!でも、やっとってどういう意味?」

ぷっ、と菜茄が笑うのが聞こえる。

「あのね〜ずっとお似合いだったよ?空気感とかぴったしだったし。逆になんでくっつかないのか不思議だった」

「そんなに?」

こういうのって当人はわからないものなのかな。

「うん。まぁ、こうなるだろうな〜って恭迅と言ってたよ」

……あれ?

「恭迅さん?まだ連絡とってたん…」

「あぁっ!!美帆に言ってなかったかなっ!菜茄、恭迅と付き合い出したんだよ。恭迅から告ってくれたんだ」

菜茄が美帆の声を遮るように慌てて言う。

るんるん気分が伝わってくる。そっかぁ…菜茄も…。

「あっじゃぁ、このメンバーならダブルデート出来るね」

「あぁ、美帆ってダブルデート憧れてたもんねぇ。体調には気を付けてよ?」

菜茄が美帆のイタイところを突っ込む。

「はぁい!元気で行きますっ」

笑いあう。

思いがけず、幸せな展開。これからも楽しいことが盛り沢山になりそうな予感。

夏が、もうすぐ終わろうとしている。

たくさんのことに、カタをつけました。次回が最終回です。どうぞ最後まで、読んでみてください。読者の皆様本当に有り難うございます。

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