表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春々恋歌  作者: 由樹
22/24

22:待ち詞

「ゆーぞーさんっ。これからどっかで会えませんか?」

達也と別れてから数時間後、自宅の近くの公園でさわやかな風に吹かれながら雄三に電話する。

「これからバイトで、後二時間位したら終わるけど。どこが良い?俺今新宿」

「んーじゃぁ新宿に行きます。ってか……え?」

「何?」

「ゆーぞーさんってバイトなんてしてるんですか?あんなお金持ちなのに」

「や、お金稼ぎたいんじゃなくて、バイトがしたいんだよ。まぁ…やりたいことしてお金入るんだから一石二鳥みたいなさ?」

…ん、ちょっと違うかも。

と口の中で言う雄三の声を聞きながら、

「じゃぁバイト先に行くよ。どこ?」

「やっ、それは男がすることだし!別んとこにするべ」

いきなり早口で、何故かなまる。

「えーなんでなんで?雄三さんの働いてる姿が見たいよぅー」

からかうように、だが半分本気で言ってみる。

「恥ずかしいからやめなさいっ」

こっちは本気で照れる。

「…なんか、怪しい。ハッ!もしかして浮気相手といるとかっ」

「いねぇよ。俺は巷じゃ一途で有名なんだ」

「あははっ。巷って!」

二人で爆笑。

「ファミレスだよ。南口のペペル」

「ペペル?私、よく行くよっ」

「マジ?毎度有難うございます☆」

「やめれー、かゆいよっ」

「はは。じゃぁもう行かなきゃだから、終りごろさりげなく来て」

「はいはーぃ」

いつもこんな感じでふざける。それが自然になってきた。

でもまだ…あの言葉を期待しないわけにはいかない。


約束の時間少し前にファミレスに着いた。

「お、来たか。後5分だから待ってて」

おぉー…。

なんかテキパキしてるよ。

バスケで鍛えたフットワーク?

「箕村君、あがって」

なんだか偉そうな人が声をかける。

雄三が美帆にアイコンタクトし、奥に引っ込んだ。

美帆は店の裏に行き、待機。

一分かからないくらいのスピードで雄三が出てくる。

「ここ、時間に厳しくてさ。彼女来てんだから、五分位切り上げてくれりゃ良いのにな」

笑いながら喋る。

「私は雄三さんの仕事姿が見られて良かったよ。手際良かったね」

「丁度忙しかったし、美帆が来たからはりきった。格好良かったろ」

雄三が軽く冗談めかして訊く。

「…悔しいけど、カッコ良かったかも」

真面目に答えると、

「えっ、いや照れるからっ。からかうなよ」

また照れる。

そんな雄三を見ている美帆の口は思わず、

「…雄三さんて、可愛いね」

と真面目に言ってしまう。

「…今日の美帆はなんなの?やけに素直じゃん」

「いつもでしょ」

一瞬悩んだように空を見ながら、

「ま…ね。さてどこ行くか。ゲーセン?カラオケ?なんか食べる?」

「あー…その前に訊きたいことがあって」

雄三は不思議そうに見つめ、

「おぅ?」

と気の抜けた返事をする。

「えと…雄三さんはさっ。美帆のどこが好きなの?」

訊くのはすごく恥ずかしい。達也のときも本当は顔から火が出る程恥ずかしかった。

でも――諦めたくないから…。

「…ん?」

少し沈黙し、聞き返してくる。

「私の、どこが良いと思ったの?」

恥ずかしさを抑えながら、もう一度ゆっくりと訊く。

雄三は優しく笑い、

「どこかなんて言えるわけないじゃん。美帆って子が好きなんだし。…美帆だから好きになったんだよ」

え…。

「……私じゃなきゃ、駄目だった?」

「うん。美帆じゃなきゃ駄目だよ」

そして慌てて、

「ってかこんなキモいこと言ってごめん。重いとか、思うなよ?」

「…うんっ」

雄三の顔を見て、美帆は目がなくなるくらい笑った。

いた…。

本当にいたよ…。

…昴が、言ってた。


今回が、一番のヤマだったとも言えます。ずっと捜していた詞が本当に現れた、すごく大切な場面でした。最終回まで秒読みです。読んでくださり、感謝感激です☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ