20:想い人
「…あ…」
声がかすれる。
今なら…少し大人になった今の私達なら、うまくやり直せるかもしれないね。
「達也を脅した人、今はどうしてるの?」
「えっ?…あぁ、別れたこと知ったら、わかったってそれきり。今、海外で留学してるらしいけど」
「留学?一体誰なの?」
「うん……もう言って良いかなぁ。暴走族の彼女の石原安咲美と、仲間達だよ」
「えっ、安咲美達?!なんでまた…」
はぁー
深い溜め息。
なんであのグループに目ぇ付けらんなきゃならなかったわけ?
そんなに関わってなかったのに。
というか、あんまり学校に来てさえなかったのに…。
「今更だけど、どうして俺らの仲を裂きたかったんだろう…」
「んもぅっ。達也が聞いといてくれたら良かったのにぃ!」
「ごめんって」
「はぁ…気になる…」
…でも、達也がずっと私のこと好きでいてくれてたのは、嬉しい。
私も、ずっと―…。
「ん?」
わっ…忘れてたぁっ!
達也のこと諦めて、今は他の人と付き合ってるんだ!
雄三さん…。
ど、どぅしよ…。
ヤケになって付き合うなんてやめときゃ良かったよ。
でも、二股したって、別に……。
…ってバカ!んなことしてバレたら、達也とも雄三さんとも二度と会えなくなるやん!
バレなくたって二人を裏切ることになるし…罪悪感で生きてけないっ。
私はそういう悪いことって出来ない質なんだよ。
小悪魔な女の子とか、悪い雰囲気の人にも憧れや魅力を感じることはあるけど。
あぁ……。
私は、一体誰のことが好きなんだろう。