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春々恋歌  作者: 由樹
19/24

19:愛し君

ずっと待ち望んでいた人に。

やっと会えたのが思いを断ち切る勇気が出た日だったなんて。

そして、自分から別れを告げることになるなんて、思ってもみなかった。

少し歩幅を緩め、ゆっくり歩く。

私は知ってる。

こんなとき彼は、決して追っては来ないことを。

付き合ってるときもそうだった。

喧嘩をしても、それは私が怒っているだけ。

立ち上がる私に、何も言わない。

…何も進歩してないんだ、私達。

おかしくって涙が出ちゃうよ。

「美帆っ!」

左手首を掴まれる。

「ひゃ?!」

勢い良く振り返る。

そこには、達也の顔。

「美帆…ごめん。俺が言いたいことは、たった一つだけなんだ」

「え…何?」

追い掛けて来るなんて。

進歩してないのは、私だけなのかな。

達也は、ちゃんと成長してる。

「俺、まだ美帆のことが好きなんだ。すごく後悔した…美帆を手放したこと」

私は、じっと達也の目を見つめる。

「でも俺が美帆に別れようって言ったんだから、忘れなきゃいけないって思い続けた。…けど、無理だった」

沈黙したまま達也を見る。

「だから今日も美帆に会えるかもって、思い出のクレープ屋に来たんだ。そしたら…やっと会えた」

小さく頷く。

「それで俺、自分に嘘つかないって決めた。―なぁ、美帆…。もう一度やり直さないか?これからは絶対、美帆にも嘘つかないから」

目の奥が熱くなってくる。

私が欲しかった言葉がここにある。

手を差しのべれば、手が届く。

達也は―ここに、いる。

サブタイトルの“愛し君”。深い意味を込めてみたのですが……紹介するのはまた今度にしますね。読んでくださって、有り難うございます。

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