18:真実話
「…美帆に、悪いことをしたのかなって、思った」
ペットボトルの水を少し口に含み、話す。
え…?
“悪いこと”って、何。
そんなレベルだったの…?
「今だから言えるんだけど…俺、脅されたんだよね…」
苦い言い方をする。
「美帆と別れないと、美帆のことを…リンチするよ、とか言われてさ。最初は俺が守るから関係ねぇよって、タカくくってたんだけど…」
「脅された…?リンチ……?」
意味がわからない。
いきなりなんの話?
貴方には好きな人が出来たのでしょ?
聞いてないよ、そんなこと…。
「…実際、美帆の目の前に花瓶が落ちてきたり、家の表札が壊されたりしてたろ?俺、そんなの有り得ないから言いに行ったんだよ。その…脅してきたヤツらに」
「うん」
相槌をうちながら聞く。
「したら…これからも美帆を危険な目に合わせるし、リンチも決行するから、さっさと別れな。って言われた」
危険…。
そう言えば、ガラスの破片が数枚、靴箱に入ってたこともあった…。
「俺、ずっと考えた。美帆と別れたくないけど、リンチされるなら別れるに決まってるし。…今は、警察に行けば良かったのかなとか思うけど」
「…そ…そんなことが、あったの?」
「驚かせてごめん」
「なら…どうして私に話してくれなかったの?当事者は私でしょ」
「美帆は正直だから、動揺しちゃって隠せないと思って」
「だって…。理由を言ってくれれば、あんなに辛い思いしないで済んだのに…」
唇を噛む。
「辛いって…何かあったの?」
「ばかっ、達也と別れたことだよ!達也は他に好きな人が出来たって、そう言ったじゃんっ!!だから、私、ずっと辛くて…誰も信じられなくなった…っ」
涙が溢れる。
「ごめん、口止されてたから…」
「盗聴されてるわけじゃないんだから、きっちり話してくれれば別れたふりだって出来たでしょ?てかなんで、ウチラを別れさせたかったの?」
目的は何?!
私は精神がおかしくなるくらい…ずっと苦しんでたのに…っ。
「理由…?さぁ、知らないけど」
「…なんで。理由もわからないで従ったの?」
忘れてた…。
達也って、大切なとこでヌケる人だったんだ!
「うん…。とにかくそうしなきゃって、慌ててた」
やってらんない。
「もう、いい」
私はベンチから立ち上がって、達也に別れを告げた。