17:幸日和
「おーし、メイクもばっちり☆」
朝起きると、空白の時間を埋められたからなのかすっきり爽快だった。
お肌の調子も良く、美容師さんが担当しているアイドルにだってヒケをとらないわ、と自信満々で家を後にした。
着いた先では、髪の毛がきれいだ!と誉められ、写真を撮らせてほしいと言われた。
来週には店先の看板に写真が載る筈だ。
美容師さんに誉められることさえ初めてなので、嬉しかった。
今日はとても良い日だ。
そうだ。クレープを食べて帰ろう。
昔よく行ったクレープ屋さんで。
達也と一緒にたくさん来たっけ。
だからなんとなく…近寄りがたかったんだけど。
クレープを買い、近くの噴水に目をやる。
人混みの中で、浮かび上がるように目に止まった人がいる。
「!」
ばちっ、と視線がぶつかる。
うそ…。
なんで…。
今まで…昨日まで会いたくてたまらなかったのに…。
それでも、ずっとずっと会えなかったのに……!
「達也…」
「美帆…」
同時に、相手の名前を呼んだ。
顔がひきつる。
心臓が、バクバクいう。
クレープを持つ手から、力が抜けていくのがわかる。
「―あ…、元気?」
始めに口を開く。
一瞬びくっと体を跳ねさせ、
「あ、ぁ、うん。美帆も…なんか変わった…な」
途切れ途切れに話す。
なんか気まずいよ?
なんで…。
おーっす☆とかって、明るくすれば良かった…。
「あ、今、美容院行って来たから」
「そか。そこの?」
「うん。昔から変わってないよ」
「…そか」
私は、変わってないよ。
不思議とそう伝えたくなった。
変わってない。
別れた時のままだって、自分に言い聞かせるかのように。
「クレープ食べなよ。アイス溶けちゃう」
「あっ、あぁ。うん」
不意をつかれながら、口に運ぶ。
美味しい。
「座って、ちょっと話しない?」
2、3秒空白を開けてから、静かに頷く。
何かに導かれるかのように、いつもの―いや、昔座っていたベンチに座る。
とにかくクレープを食べることに集中していると、達也が喋り始めた。
「…ずっと、美帆に会いたいと思ってた」
うつ向き加減の達也。
美帆は思いがけない言葉に目を見張る。
だって、達也が私から離れて行ったのだから。
「―ずっと、ちゃんと話したいと思ってた」
クレープが包まれていた紙をそっと握りしめ、達也を見る。
「美帆に、言わなきゃいけないことがあるんだ」
達也登場です。やっと出て来ましたー。パチパチ。(拍手)なんて浮かれてる場合じゃないですね。応援してくださる皆様、本当に感謝しています。これからも精進して行きたいと思いますので、よろしくお願いします☆