13:前向き
これは、一体どういうことだ?
いきなり投げ遣りとも取れる態度。
付き合えるのは嬉しいけど、イマイチしっくりこない。
「もしもし?今メール見たけど」
別に怒っているわけではないのだが、感情の無い声になる。
「あ、そうですか。昨日あれから考えて、やっぱり付き合おうかと思ったんですが…どぅですか?」
イヤなら別に良いですよ、という口調。
「何、なんかあったの?」
じれったくて訊く。
「え、何も。どぅかしましたか?」
普通…なのか…?
「あのさ。美帆も俺のこと好きになってくれたの?」
「好き―そぅですね、なりそうですよっ」
明るく答えてくる。
「えぇーっと、じゃぁ…」
別に断る理由はなく、嬉しいことなので、
「よろしく」
「はい☆でゎまたー」
プチッ
電話が切れた。
付き合うことになった。
俺は昨日、これから長く片想い生活を味わい、アタックし続ける気でいたのに…。
あっさり幸せが手に入ってしまったようで怖い。
実際は、美帆はまだ自分のことを好きだというわけではないので、頑張っていかなければいけないが…。
「ふぇーー」
何ともなしに息を吐き、ベッドに倒れこむ。
彼氏が出来ました。
達也の次の。
だから…達也とは終わったんだよね。
や、前から終わってたんだけど。私の中でずっとくすぶってたから…。
…本当に、終わった?
終われたの…?
まだ、終らないよ。
変わらないよ…。
だって達也と話せたわけじゃないから。
けど、今更話し合うことなんか出来ない。
遅すぎる…。
なんか、さっぱりしたいなっ。
気晴らしに美容室にでも行こうか。
ちょっとカットして、根元カラーリングして。奮発してトリートメントもしちゃおぅか!
うん、楽しくなってきた。
早速。
予約入れよう。