11:戸惑い
「はぁーなんか、がっかり」
昨日の雄三の家でのことを思い出しながら、考える。
雄三の家に行きたいと美帆が思ったのは、ペットの梅を見たいという理由だけではもちろんない。
美帆は雄三の良さをわかってきたつもりだし、本当に自分を支えてもらえるのではないかと期待したから。
そして美帆自身、雄三を好きになれるのではないかと思ったからこそだ。
だが実際は、ただ家に行っただけになってしまい、期待した分だけ余計がっくりきてしまったのだ。
―私だけが支えてもらうことを求めるのは、おかしいよね。
それじゃぁただ、相手を利用するだけになる。
そんな後ろめたいことはしたくないし、したらきっとすぐに別れることになる。
雄三さんも過去に何かあるんだろうな。
あの手紙だってきっと、元カノか誰かからの物で他人には触れられたくない物の筈。
今の私には関係の無いことだし。
付き合ったりしたら、すごく気になる物だろうけど…。
ピピピピ…
美帆の携帯が着信する。
『箕村雄三』…雄三さんからだ。
「もしもしっ」
何かな。メールじゃいけないことなのだろうか。
「おはよ。今平気?」
「うん、良いよ。何?」
「うん…あのさ、本当は昨日、言いたいことがあったんだけど。ちょっと、タイミング逃しちゃって」
雄三の、少し角張った声。
…緊張してる…?
「何、どうしたの?」
「驚かないで聞いてくれる?」
えっ、何かな。
驚くって…重大なことが聞けるのかも。大切な秘密とか??
こういうのドキドキする。
はぁ〜楽しみになっちゃった。
「驚かないように頑張ります。早く教えてよ!」
わくわく。
「や、あのさ…」
うん。
「俺、美帆のことが好きだ。付き合ってほしい」
…。
……うん?
「え」
昨日、何もなかったから雄三さんはもう諦めたのかとまで思ったのに。
タイミング逃してたんだ…。
どうしよう。
「本当、急だけど…俺は初めて美帆を見たときから気になってて、好きになってたんだ」
雄三さんなら、って思ってたけど…でもわかんないよ。
タイミングが合わないって、致命的じゃない?
だめだ、まだ答えは出せない。
「私…昔付き合ってた人をまだうっすら引きずってて、正直まだ返事出来る感じじゃないんです。雄三さんのこと、人間としてすごく好きだし、尊敬もしてるんだけど…」
はっきりしないな、私。
いらいらする。
「うん、わかった。すぐに返事なんてしないで良いから、ゆっくり考えて。可能性はあるんだろ?」
「あ、はい…」
「うん、じゃぁまた」
「はい、また…」
ピッ
早まったか?
しくじったか…。
でも、なんとか思いは伝えられたはず…だよな。
俺は本当に美帆が好きだから、これからは積極的になる。
―諦めない。