10:元カノ
―あの子、雄三さんの妹さんだったのかなぁ…。
それにしてはやたらと印象が違った。
雄三はもっと優しく明るい性格がにじみ出している顔だから。
パーツとして見てみると、例えば目自体は似ているかもしれない。
だが、あの冷たい眼差しは似ても似つかない。
同じ家庭に育ったのに…何故こうも違うのだろう?
《今日は有難うございました。1つ聞きたいことがあるんですけど、私が雄三さんの家を出てすぐに妹さん帰ってきませんでしたか?》
気になった美帆は、本当に妹だったのか、雄三に確認を取ってみることにした。
―…ん?メールか。
サイレントにしてたから気ぃ付かなかった。げ。
なんで恵実が帰って来たこと知ってんの…。
会ったのか…?
アイツ、無愛想だから妙な雰囲気を漂わせたに違いない。
《あー、会った?》
やっとメールが届いたと思ったら、この間の抜けた返事はなんだろう。
あー、というのは面倒臭がっているニュアンスとしても受け取れる。
《はい。お話出来なくて残念だったょ。》
メールは今まで丁寧語にしていたので(無意識にだが)、いつも話すときのようにタメ語も混ぜておいた。
《アイツ、今日はうっすら機嫌悪かったから…なんかしなかった?(笑)》
《え?なんかってなんですか!(^-^;)》
いつもなんかするのかよ、と突っ込みを入れつつ質問する。
《目で訴えるというか…。や、なんでもない。(笑)》
《??まぁ、良いです。でもやっぱり妹さんだったんだ〜。》
ただの独り言とも言えるメールを送る。
《そうだよ。》
と雄三は打ちながら、メールを続けたいのに話題がないもどかしさを感じた。
《よろしくお伝えください。それではまた☆》
あー、やっぱ止められちゃったよ。
少しわびしさを感じたが、仕方ないので静かに携帯をベッドの上に置いた。
今日、勝負に出ようと気合いを入れていたのに、結局タイミングを逃し良い雰囲気を作ることさえ出来なかった。
元はと言えば実悠のせいだぞ?
あんなトコに、似合わず手紙なんか隠しておくから。
何が“ビックリしたかなぁ?”だ。心臓が飛び出る程慌てたっつうの。
何が“まだ2人は付き合ってるかなっv”だ。お前からふったくせに。
何が“ずーっと、別れても仲良く出来てるとイイね☆”だ。
お前が…浮気したクセに。
しかも俺に何も言わせず、そっちもきちんと説明しないで逃げやがって。
だから今も仲良く出来ねんだろーが…。
―…けど。
なんか、ふっきれた。
お前もちゃんと俺を好きだったことあったんだろ?
だからこそ余計、罪悪感があったんだろ?
…そう、思うことにするよ。