1:幕開け
ざわ…っ
うららかな春色の陽射し。
決して優しいとは言えない風に包まれて、ただ立っていた。
涙が風に乗り、散る様は、心をきゅっと軋ませそこはかとなく切なくなった。
これからも忘れないように…
―
1:Prelude
―
「恋なんてしたコトないよっ?」
明るい口調で、あっけらかんと喋る美帆。
「えぇ?でも、もう十六だよ?良いなぁっとか思う人くらいいるでしょ」明るい赤茶の髪色で、顔を綺麗に化粧している菜茄が驚きながら聞き返す。
「ほらぁ、私って結構乙女だから?運命信じてるしぃー」
と、冗談で返す美帆。
手を顎の前で組み、どこかのギャルを装った。
「マジでぇ??あ、例の白馬の…?」
と調子を合わせる。
美帆は、
「そぉなのよ。まっじイケメンでぇー、怪我した美帆を、白馬でお城まで運んでくれるのっ」
というように妄想を膨らまして行く。
すると菜茄はいきなり真顔に戻り、
「でも白タイツなのよね」
と一言。
「そうそう、足が長くてステキ☆…っておい!!」
美帆は乗りツッコミをする始末。長く暑い夏休み。
外はかんかん照りで、アスファルトは干からびきっているように見える。
二人は涼むためにジャンクフード店に入り、カフェオレ一杯と軽食で何時間も粘っている。
「―でも、本当に好きな人いたことないんだ?」
もう一度、確認しつつ訊く。
「ホントに」
少し眉を潜め、寂しそうな顔をしながら言う。
美帆と菜茄は高校で出会った友達。
当時の菜茄は髪の色が金で、メイクがコギャル風だった為あまり気が合うとは思わなかったのだが、席が近くなったことがきっかけで話が合うことがわかった。
それから二人は一緒にいることが増え、お互いに友達の輪が広がったのだった。
「なーんだ。美帆は一般的には可愛いからモテんのかと思ったのになー」
氷で薄くなったカフェオレを少し飲みながら、つまらなさそうに呟く菜茄。
「あれ?可愛いのは嬉しいけど、一般的てのはどゆコト?」
鞄からガムを取り出しながら聞き返す。
菜茄はガムを受け取って、
「だって私は可愛いと思わないし」
と言いながら包み紙を剥がす。
「随分キッパリ言ってくれちゃったわね。本当のことだから仕方ないけど」
美帆があっさり引き下がると、
「えっやだぁ、ウソウソ!!誰が見ても美帆はかっわぃぃよ☆」
と、わざと他人行儀な言い方をする。
「あぁ嬉しい」
美帆もわざと投げやりな感じでそう言って、チラッと腕時計に目をやりながら、
「そろそろショップ見に行かない?」
と提案した。
「あーそだね、片して来よ」
トレイに空のコップと包み紙を置き、ダストに向かう。
「やっぱミュール買うよね。パンプスもまだ欲しいけど」
席に戻りながら菜茄が話しかける。
「美帆はねーバッグ欲しいっ。後ワンピも」
「あっワンピ欲しい!!可愛いの見つけたんだょね」
などと話しながら店を後にした。
§
「ふぅー…、買っちゃったね」
帰りの電車の中で。
「セール、すごく安かった!!びっくりだよ」
二人の手にはいくつもの大きなショップ袋が提げられている。
「しかも空いてたし」
「うん。ところで美帆さ、彼氏作る気ないの?」「えー、またそんな話?もちろん彼氏募集だよ」
笑いながら答える。
「だよねぇー。私もそろそろ欲しいな」
菜茄は一ヶ月程前に、有名高校二年の粕芽君と別れてしまったのだ。
三ヶ月だけの付き合いだったけれど。
「夏休み長いし、また遊ぼ!いつ空いてる??」
「部活もやってないし毎日暇してるよ」
「菜茄も。んじゃ、また一週間後に遊ぼ」
「良いよぉ。カラオケとか映画行きたい!」
「映画…今何やってるっけ?」
「あれ見たいの!ほら……」
会話が弾みながら、時は流れて行った。
ほんっとに、これからなんです(x_x)盛り上がるのは6話位からですかね…(笑 栗山の初作品なので、感想たくさんお待ちしてます!