マッチングアプリの怪
手軽で気楽なマッチングアプリ。恋愛に奥手な僕にとって、それは最高のツールになるはずでした。
しかし、画面の向こう側に潜む「何か」に気づいたときには、もう遅かったのです——。
日常のすぐ隣にある恐怖を描いた短編ホラー。どうぞお楽しみください。
僕が最近ハマっているのはそう、マッチングアプリです。恋愛経験はおろか、女性に声を掛けることすら出来ない僕にとって、新しい希望を見出だせたというような気持ちで大いにアプリには期待していたのであります。
アプリの中では会話を求められるわけでもなく、返事が来なかったからといって深く傷つく必要もないし、テキストで会話が成り立つから、緊張することもないし、空気を読む 必要もない。僕にとっては最高のツールとなりそうなのであった。
しかし、とはいえ、あを使うのにも実際に女性と遭うにしても、必要なものはお金だ。
僕は様々なマッチングアプリを使ううちにだんだんと徐々に金欠になっていったのである。
一応社会人として会社へ勤め、給料もいただいている。それでもお金が足りないのだから、女性とお付き合いするということには、随分とお金が掛かるものだと痛感していた。
残高チェックをしようと銀行アプリを開いた僕は、息をのんだ。使った覚えのない「課金履歴」が、毎晩午前三時に刻まれている。
(……おかしい。こんな時間にアプリなんて開いていないはずだ)
気味悪さを感じつつマッチングアプリを開くと、見知らぬ美女とのトーク画面が目に飛び込んできた。僕の口座から引き落とされていたのは、その女性へ贈られた大量の有料ギフト代だった。送信された覚えのない僕のメッセージ履歴には、こう記されている。
『もっとお金をあげるから、早く僕の部屋に来て』
震える手でアプリを閉じようとした瞬間、画面いっぱいに女性の笑顔が広がり、トーク画面に新しい返信が届いた。
『ありがとう。お金、たくさん届いたよ。今、君の家のドアの前にいるね』
ドン、ドン、ドン。
玄関のドアを激しく叩く音が、静かな部屋に響き渡った。
【了】
最後までお読みいただきありがとうございました!
日常のすぐ隣に潜む「もしも」の恐怖を楽しんでいただけたなら幸いです。
また次の作品でお会いしましょう!




