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< 現場体験学習 >

現場体験学習の日だった。空は高く、登山道は妙に平穏だった。平穏は、いつもそうであるように、ハシノケ-マタチの番になると壊れた。


「おい、ハシノケ。」


前へ進めなくなった。不良の群れの中の二人が前を塞いだ。先頭の黒崎 拓真(不良1)が肩を一度すくめるようにして笑った。その笑いは「面白い」ものではなかった。


「その体で山を登れるのか〜?」嘲りは終わらなかった。彼らは鼻をつまみながら言った。「うわ、豚骨スープの匂い〜」きっと俺の汗の匂いのせいだろう。


俺の体を上下に見ながら、皮肉るように言った。周りでクスクス笑う音がした。ハシノケは息を飲んだ。体が固まっていった。目は床ばかり探した。そうするほど、道はもっと狭く見えた。


その時だった。

すぐ横の木の後ろ。


「おい!」


飛び出してきたのは松尾 健太(不良2)だった。まるで「驚かせ遊び」でもするかのように、顔を突き出して手を振った。


ハシノケの喉から音が引き裂かれるように出た。


「ㅇ…あ…あ…??」


体が後ろによろめいた。バランスを取らなければならなかった。頭は分かっていた。しかし体がついてこなかった。重かった。


普段のように、早く動けなかった。左へ、反射的に手を伸ばした時、指先に引っかかったのは木の手すりだった。湿った木の木目が手のひらを擦った。


『掴んだ—』


考えが終わる前に、手すりは俺の体を支えきれず折れた。手すりが低すぎて古かった。まるで待っていたかのように。


視界がひっくり返り、空が押し寄せてきた。

崖の下へ。

「ハシノケ!!!」

黒崎 拓真が俺の名前を叫んだ。その声は、今までハシノケに投げてきた嘲りとはまったく違うものだった。黒崎 拓真は迷いなく前へ飛び出した。手を伸ばした。指先がかすった。


紙一枚の差だった。


正確には、掴みかけた。


指と指。肌が触れ合い、もう少しだけ早ければ……。


ハシノケは下へ落ちた。不良1は上から見下ろすだけだった。


「きゃあああっ」


それを見た子供たちは叫んだ。


一寸。


本当に一寸の差で、ハシノケの手が届かなかった。


黒崎 拓真の手のひらには何も残らなかった。


「あ…」


その瞬間、黒崎 拓真の目は虚ろだった。その目はハシノケが落ちるのを「見た」というより、直接「経験した」顔だった。


そしてハシノケは終わりを見た。


空は遠ざかり、風が裂け、音が遠のいた。最後の考えは驚くほど怒りではなかった。


『…これで終わりだと?』

世界は何事もなかったかのように回り続けた。

しかしハシノケは、ずっと残っていた。

体ではなく—重さのない「俺」が。


目を開けると、学校だった。扉が開いている場所が見える。音が聞こえる方へ足取りが向かった。前には校長室が見えた。俺はそこへ向かった。

とぼとぼ..


校長室の反対側の窓から白い光が差し込んでいた。部屋の中は暗い。しかしその白い光が、床と机の輪郭をかろうじて浮かび上がらせていた。暗闇の中で人々の顔が半分だけ浮いていた。


左には不良が三人。

中央には校長。

右には担任の先生。


校長が机をバン、と叩いた。


「今回の事件で学校のイメージは地に落ちるでしょう!」


担任は頭を下げていた。

校長は声をさらに上げた。


「事故に偽装して、責任は最大限避けましょう。

加害者の生徒たちについての話は徹底的に隠してください。」


担任はうなずくだけだった。


校長が不良たちを順番に見ながら低く言った。


「お前たちも、少しの間でも静かに生活しろ。」


その時、松尾 健太が平然と言った。


「はい、おじいちゃん。」


校長室の空気が一瞬止まった。

ハシノケはその言葉を理解するのに1秒もかからなかった。


『…あ。』


権力。

そして隠蔽。


ハシノケは足のない歩みで、どすどすと前へ進んだ。胸のない胸が苦しかった。


「おい!」

俺は叫んだ。

「そんなこと言うな!」


しかし声は壁に届かなかった。

彼は暗闇を殴ったが、暗闇は何の反応もなかった。


その時、背後から声が聞こえた。


「ハシノケ…」


振り返ると黒崎 拓真だった。

ズボンの裾を拳で握ったままだった。手の甲が白くなっていた。目は泣きかけた人のように赤かった。


「本当に…ごめん。ハシノケ…」


ハシノケは息が詰まった。

手が震えた。彼は震える指で黒崎 拓真を指さした。


「お前…この野郎…」


その瞬間だった。


空気が引き裂かれるように変わった。

暗闇が晴れ、校長室が消えた。


目の前には温かい草原が広がっていた。


風は妙に温かく、空はあまりにも綺麗だった。


『ここはどこだ?』


ハシノケが心の中で呟いた時—

誰かが後ろから答えた。


「ここ?ここは私の空間だよ。」


ハシノケはびくっとして振り返った。


一人の女性が、背を向けたまま花を見ていた。

彼女はその場でゆっくり立ち上がりながら言葉を続けた。


「君を呼んだのも、さっきの場面を見せたのも私がやったの。」


ハシノケは呆れて、怒りが先に込み上げた。


「俺の声を…聞いたのか?

いやそれより…お前、俺を殺したのか?

お前は何だ、神なのか?」


女性は少しだけ首を回して笑った。


「お〜…神ね。」

「正解ではないけど、そういうことにしよう。」


ハシノケが言葉を続ける前に、女性が手をさっと上げて振った。


「ごめんごめん。死んだのは気の毒だけど、私がやったんじゃない。

私は介入できないの。」


彼女は指を弾くように動かし、空中に一つの場面が浮かんだ。


不良1が膝をつき、どこかに向かって祈っていた。

本当に、一日中。

息をするたびに祈っていた。


女性が肩をすくめた。


「私がやったことじゃないけど…

君をここへ呼んだ理由は二つある。」


「一つ目、君はあまりにも虚しく死んだ。」


「二つ目—」彼女が手のひらで空中の場面を指した。

「こいつが一日中願い事を祈ってさ?

どれだけうるさかったか。」


ハシノケが焦って叫んだ。


「待て!今…そいつ—!」


しかし女神はまた、彼の言葉を遮った。今度はもっと明るく軽いトーンで。


「だから君にもう一度チャンスをあげる!」


「なに— どういう—」


「またね〜!」


足元が抜けた。


ハシノケは下へ落ちた。

闇でも光でもない、終わりのない落下。


彼は短く悲鳴を上げた。


「うわっ!」


目が簡単に開かなかった。周りではざわめく声だけが聞こえた.....

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