表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

【第5章】未来人、利権村が勝手に崩壊していくのを見届ける

 利権連盟の会議室から逃げ出した俺。

 息を吸った空気が、なんかうまい。

 いや、会議室の中が濃縮された利権臭だったせいかもしれない。


(……さて、任務に戻るか。

 この時代の文化停滞の原因分析が目的なんだし)


 だが、そのとき──


「おい!! あそこ見ろ!!」


 ビルの下から怒号が聞こえた。


 何事だと思って覗き込むと──

 利権連盟のビル前で、メンバー同士がケンカしていた。


「お前が漏らしたんだろうがぁ!!」


「いやお前が勝手にリークしたんだろ!!」


「文体所有権の資料、外部に流れたぞ!!」


「SNSでバズって叩かれてんぞ!!」


(……え、予想以上に展開早くない?)


◆ どうやら“内部リーク”が発生したらしい


 SNSでは、利権連盟の議事録とされる画像が拡散中。


【“日の丸構図は当団体の所有物である”】

【“AI学習は呼吸のように悪である”】

【“色彩使用料徴収制度の導入案”】


 などなど。


 発信者は不明──

 いや明らかに内部の誰か。


「内部文書が全部出回ってるぞ!!」


「特許庁から問い合わせ来てる!!」


「スポンサーが手を引いた!!」


「テレビにも取り上げられたぞ!!」


(……うん、典型的な自滅ルートだ)


◆ 利権村、完全内戦状態へ


「お前が原因だろ!!」


「誰でもいいから責任取れ!!」


「うちの構図権、否定されてるぞ!!」


「色彩使用料、批判殺到して崩壊したぞ!!」


「文化保護どころか文化破壊って書かれてるんだが!?」


(いや最初からそうだったろ……)


◆ 未来人、冷静に分析を始める


(やっぱりな)


(未来の資料にもこう書いてあった)


“利権構造は、外敵ではなく内部の自己矛盾によって崩壊する。”


 この時代の利権集団がやっていることは──

 文化を独占しながら、文化に依存して生きるという矛盾 そのもの。


 だから外圧がなくても、勝手に瓦解する。


 俺の目の前で、そのプロセスが高速で起きていた。


◆ さらに地獄みたいな展開が続く


「弁護士費、払えねえ!!」


「スポンサー撤退で赤字!!」


「文化保護の大義名分が完全に消えた!!」


「俺たちが“文化泥棒”扱いされてるぞ!!」


「ネットで“利権マン”って呼ばれてネタ化してる!!」


(誰だよ利権マンって……俺じゃねえだろな)


「AI撲滅ロードマップ、批判殺到!!」


「“色は自然現象なので所有できません”って高校生に論破されてる!!」


(高校生に負けるなよ……)


◆ そしてついに、決定的な瞬間が来た


「団体会長が辞任したぁぁぁッ!!」


「予算消える!!」


「法務部だけ残された!!」


「どうするんだよもう!!」


(法務部だけ残っても何もできんだろ)


◆ 会議室の結末は、実にシンプルだった


 利権村は、たった一日で崩壊した。


 原因は外部の攻撃でも、未来人の介入でもなく──

 メンバー自身の欲と矛盾。


(……これ未来で学んだ通りのパターンだな)


“文化を囲う者は、自ら文化に食われて滅ぶ。”


(争って、暴走して、暴露されて、信用を失って……

 結局最後は“自爆”なんだよな)


◆ 未来人、静かに結論づける


(……文化は、利権が守るんじゃない)

(文化は、使う人と作る人が守るんだ)


(利権構造は……ただそこに寄生してただけなんだよな)


 任務はほぼ終了だ。

 俺にはもう改革する必要もなかった。


(あと残ってるのは……この時代のクリエイターに“未来の考え方”を伝えることか)


 文明に必要なのは破壊でも対立でもない。


 ただ、正しい循環に戻すだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ