【第5章】未来人、利権村が勝手に崩壊していくのを見届ける
利権連盟の会議室から逃げ出した俺。
息を吸った空気が、なんかうまい。
いや、会議室の中が濃縮された利権臭だったせいかもしれない。
(……さて、任務に戻るか。
この時代の文化停滞の原因分析が目的なんだし)
だが、そのとき──
「おい!! あそこ見ろ!!」
ビルの下から怒号が聞こえた。
何事だと思って覗き込むと──
利権連盟のビル前で、メンバー同士がケンカしていた。
「お前が漏らしたんだろうがぁ!!」
「いやお前が勝手にリークしたんだろ!!」
「文体所有権の資料、外部に流れたぞ!!」
「SNSでバズって叩かれてんぞ!!」
(……え、予想以上に展開早くない?)
◆ どうやら“内部リーク”が発生したらしい
SNSでは、利権連盟の議事録とされる画像が拡散中。
【“日の丸構図は当団体の所有物である”】
【“AI学習は呼吸のように悪である”】
【“色彩使用料徴収制度の導入案”】
などなど。
発信者は不明──
いや明らかに内部の誰か。
「内部文書が全部出回ってるぞ!!」
「特許庁から問い合わせ来てる!!」
「スポンサーが手を引いた!!」
「テレビにも取り上げられたぞ!!」
(……うん、典型的な自滅ルートだ)
◆ 利権村、完全内戦状態へ
「お前が原因だろ!!」
「誰でもいいから責任取れ!!」
「うちの構図権、否定されてるぞ!!」
「色彩使用料、批判殺到して崩壊したぞ!!」
「文化保護どころか文化破壊って書かれてるんだが!?」
(いや最初からそうだったろ……)
◆ 未来人、冷静に分析を始める
(やっぱりな)
(未来の資料にもこう書いてあった)
“利権構造は、外敵ではなく内部の自己矛盾によって崩壊する。”
この時代の利権集団がやっていることは──
文化を独占しながら、文化に依存して生きるという矛盾 そのもの。
だから外圧がなくても、勝手に瓦解する。
俺の目の前で、そのプロセスが高速で起きていた。
◆ さらに地獄みたいな展開が続く
「弁護士費、払えねえ!!」
「スポンサー撤退で赤字!!」
「文化保護の大義名分が完全に消えた!!」
「俺たちが“文化泥棒”扱いされてるぞ!!」
「ネットで“利権マン”って呼ばれてネタ化してる!!」
(誰だよ利権マンって……俺じゃねえだろな)
「AI撲滅ロードマップ、批判殺到!!」
「“色は自然現象なので所有できません”って高校生に論破されてる!!」
(高校生に負けるなよ……)
◆ そしてついに、決定的な瞬間が来た
「団体会長が辞任したぁぁぁッ!!」
「予算消える!!」
「法務部だけ残された!!」
「どうするんだよもう!!」
(法務部だけ残っても何もできんだろ)
◆ 会議室の結末は、実にシンプルだった
利権村は、たった一日で崩壊した。
原因は外部の攻撃でも、未来人の介入でもなく──
メンバー自身の欲と矛盾。
(……これ未来で学んだ通りのパターンだな)
“文化を囲う者は、自ら文化に食われて滅ぶ。”
(争って、暴走して、暴露されて、信用を失って……
結局最後は“自爆”なんだよな)
◆ 未来人、静かに結論づける
(……文化は、利権が守るんじゃない)
(文化は、使う人と作る人が守るんだ)
(利権構造は……ただそこに寄生してただけなんだよな)
任務はほぼ終了だ。
俺にはもう改革する必要もなかった。
(あと残ってるのは……この時代のクリエイターに“未来の考え方”を伝えることか)
文明に必要なのは破壊でも対立でもない。
ただ、正しい循環に戻すだけ。




