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【第3章】未来人、利権村の内乱を目撃し、そっと距離を置く

 利権会議は荒れていた。

 あまりにも荒れすぎて、議案よりも椅子の脚が折れる音のほうが多い。


「構図は俺のものだ!」

「いやウチの伝統だろ!」

「赤は俺の持ち物だ!」

「RGBで語れ!!」


 地獄か?


 そしてついに、その瞬間が訪れる。


「おいお前! 俺の“縦スクロール文化保護権”を使ったな!?」


「知らねえよそんなもん! スマホ時代から自然発生してただろ!」


「自然発生? 無断使用の間違いだろうがァ!」


(自然現象に無断使用……? 21世紀の言語、難しすぎるんだが)


 やがて議論は「誰のものか」から

「どっちが先に持っていたか」に変わり、

さらに最悪の方向へと進化していく。


「お前! 去年ウチの色彩理論を引用しただろ!」

「引用は合法だろ!!」

「許可取ってねえ引用は違法だ!!」


(いや、引用は原則として自由だぞ……?)


 なぜか法律を知らない側が

“法律を武器に殴る”という高度な文化プレイをしていた。


「そもそもなァ! あの新人が悪いんだ!!」


「未来から来たって話、本当かよ!? 調子乗ってんじゃねえぞ!!」


(え、俺……?)


「おい未来人!! お前の文明はどうやって文化を守ってんだよ!!」


「共有です」


「論外だろそれ!!!」


 全員が激怒した。

 未来人である俺は、今なぜ怒られているのか理解できない。


「共有って、お前……文化をタダで配るつもりか!?」

「そうだ、価値が下がるだろ!」

「未来はどんな無法地帯なんだよ!!」


(文化が共有財、と未来の教科書に書いてあったが?)


「ほら見ろ! 未来は無法地帯なんだよ!!」

「文明崩壊待ったなし!!」

「未来人のせいで文化が死ぬ!!」


(いや、未来は普通に発展してるぞ……?)


「そもそもAI学習を許した時点で終わってんだよ!

 過去作品を読ませるとか無許諾の極みだろ!」


 ここで、未来人の俺は口を開いた。


「すみません、それですが……未来ではAI学習は“文化の継承”扱いです。

 人間もAIも過去の文化を読み解くことで新しい文化を作るので──」


「うるせえ!!!」


 怒号が飛んだ。


「AIに学習させるなら金払え!!」


(人間が本読んで新作作るときは?)


「人間はよくてAIはダメなんだよ!!!」


(理由になってないんだが)


 そして、ついに会議は最悪の方向に進む。


「おい! あいつ未来から来たなら、

 “未来の文化のような作品”を今作れるよな?」


(いや、作れるけど……?)


「つまり!! 未来の文化の元祖を名乗れるってことだ!!」


「権利は全部我々だ!!!」


「新人、今すぐ未来の文化を全部吐け!!」


(絶対やだ……)


「権利は連盟で吸い上げる! 貴様の未来も我々のものだ!!!」


(おい、なんで未来の文化まで所有し始めてんだ!?)


 利権側の“範囲外まで所有しようとする欲望”は、

もはや宇宙の法則をも侵害していた。


 ここでようやく、会議の誰かが気づく。


「……なあ、それ未来人が損しかしなくね?」


「確かに……未来全部ここに搾取されるのか?」


 沈黙。


「……まあいいか! 利権が得ならなんでもいい!!」


(やっぱだめだこいつら……)


 議論は再び混沌へ。


「未来を囲い込むのは我々の使命!!」

「AIを滅ぼせ!!」

「構図を有料化しろ!!」

「自然現象は全部買い取れ!!」


(未来の文明史に書いてあった“利権構造の最終症状”、これだわ……)


 俺は悟った。


(あ、これ改革する価値ないやつだ)


 この瞬間、未来人の中で何かが静かに折れた。

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