第九話 再会
「やあ、アイラ。久しいね。」
「レイン…なんでここに?」
「僕はキミを迎えに来たんだよ。いつまでたっても共和国にたどり着かないから、何かあったのかと思ってね。」
白銀、レイン・ヴァイス。
四大英傑の中で一番まともな人だ。
他の英傑は性格がねじ曲がっているから、誰よりも仲良くしていた人物でもある。
「ちょっと!この壁どけてよ!さもないとあんたも殺すから!」
壁の向こう側からはヴィリアールの怒号が絶えず聞こえてくる。
レインはため息をついて壁に近づいてく。
「さっきも言ったけど、君にアイラを殺されるわけにはいかない。かといってキミとここで殺しあうつもりもない。」
「一体何の権限があってアタシの邪魔をしてるわけ?いいからさっさと開けろ!」
「はぁ。気難しいお嬢様にはご退場願おう。」
レインはぱちんと指を鳴らす。
その次の瞬間壁の向こう側の怒号がぴたりとやんだ。
それどころかヴィリアールの気配が消え去った。
「相変わらずでたらめな力だね、レイン。」
「キミほどでもないよ。さ、傷の手当てをしよう。その怪我は今すぐ処置をしないと命に関わる。」
レインの固有魔術、大迷宮は守ることに特化した能力だ。
その名の通り、自由に迷宮を作り出すことができる。
迷宮内は完全に彼のテリトリーであり、誰であろうと手のひらの上だ。
攻撃はあまりできないものの、迷宮内にいる人物の転送や治癒は朝飯前。
なんともうらやましい能力だ。
私も使いたい。
「それで、レインが私の助っ人さん?」
「ああ。ウルから聞いていなかったのかい?」
「全く何も。あのクソ騎士め…。」
「ははっ、そう彼を責めないであげてほしいな。治療終わったよ。」
少し雑談している間に、私の腹の穴はきれいさっぱり塞がっていた。
本当に便利な能力だこと。
「ありがと、レイン。それで今から私はどうすればいいの?」
「とりあえずラント共和国に入ろう。共和国には僕の別荘があるからね。」
「…一体何個の別荘があるのやら。」
「ん?全部で8個だよ。」
レインは貴族出身だから資産の桁が並外れている。
ついでにこの顔。
英傑の中でも人気がずば抜けているわけだ。
この色男め。私がどんだけ苦労してお金稼いでると思ってるんだ。
なんなら養ってくれないかな。
「いろいろと知りたいこともあるだろうけど、詳しい説明は安全な場所についてからにしよう。」
「はいはい。それじゃあご厚意にあずかります、白銀様。」
私はレインの後について歩き出す。
罪人になってから初めて安心を得られたような気がした。