第八話 白銀
壊レタ一矢の爆発による煙が収まってくる。
さすがの女皇でもあれを受けて無事では済まない。
「うぐっ…さすがに傷を負いすぎちゃったな。どこかで休まないと…。」
重い脚を引きずって森の出口を目指す。
追手は排除できたから、もうそこまで急ぐ必要もないだろう。
ゆっくりラント共和国を目指していけばいい。」
「よし、これで森を抜けれ…」
視界が揺れた。
私の意志に反して足から力が抜け、そのまま倒れこむ。
腹部に強烈な痛みを感じる。
握りこぶし程度の石が私の腹を貫通したらしい。
あぁ、なるほど。しくじったな。
「お姉ちゃんをおいてどこに行くつもり?」
「チッ…化け物め…」
やはり女皇の名は伊達じゃない。
私の壊レタ一矢を浮遊魔術で受け止めたのだろう。
彼女には傷一つついていない。
本当に嫌になる。
「頑張ったねぇ、アイラ。でもダメじゃん。あんな攻撃でアタシを倒せるわけないでしょ?」
「がはっ…」
ヴィリアールは私の傷を足で突っつきながら笑っている。
その周りにはの小さな水晶玉のようなものがたくさん浮かんでいる。
「これはね、宝珠イヴ。これに貫かれた人は痛覚が10倍になるんだぁ。」
「趣味…悪いね…」
「今からアイラが死なない程度に宝珠で貫いてあげるね?しっかりお姉ちゃんからの贈り物、堪能するんだよ?」
冗談じゃない。
ここまで来て負けるわけにはいかない。
失血と激痛で視界はぼやけている。
でもまだ死んでいない。
ならば立て。
まだ責務を果たしていない。
まだ人生で幸せを見つけていない。
まだ人生の意味を見つけていない。
こんな奴に負けるなど許されない。
「へぇ、まだ立てるんだ。」
「私はあなたが嫌いだから。だから…負けない。」
弓に矢をつがえ、構える。
次の一撃で絶対に決める。
そのあとのことは考えない。
「今度は効くといいねぇ!」
「そのやかましい口、吹っ飛ばしてやる!」
矢にありったけの魔力を込める。
ヴィリアールの宝珠が飛んでくる。
こっちの被弾は考慮しなくていい。
確実に当てる!!!
「…大迷宮。」
どこからか低い声がした。
それと同時に私とヴィリアールの間に大きな壁ができる。
「一体何が…!」
「ちょっと!邪魔しないでよ白銀!!!」
壁の向こう側からヴィリアールの怒号が聞こえる。
この能力、まさかとは思うが…
「悪いね、女皇殿。キミに戦姫を殺されるわけにはいかない。」
その声は唐突に聞こえてきた。
いつの間にか私の横に独りの男が立っている。
純白の髪に蒼い瞳、間違いない。
四大英傑、白銀レイン・ヴァイスだ。