第六十五話 戦線
「ちょいちょい。自分だけカッコつけた登場すんの、ズルない?」
「リア、今はそんなことを気にしている場合じゃないだろう」
アイリの背後に、新たに二人の姿が現れる。
確かこの二人は――死神騎士とパンドラ……だったはずだ。
どうやら、アイリについてきたらしい。
この三人が並ぶと、不思議と様になっている。
「マリアちゃん、誰を倒せばいい?」
アイリに声をかけられ、はっと我に返る。
危ない危ない、完全に見とれていた。
「両方、できれば拘束して。特にトアには気をつけなさい」
アイラ・フォードは、おそらくすでに傀儡にされている。
術を私の固有魔術で剥がせれば、なんとかなるかもしれない。
「うん、分かった。ちょっと休んでてね」
アイリが剣を抜いた直後、少し離れた場所で轟音が響いた。
空気が凍りつき、気温が一気に下がる。
……これは、完全にお怒りだ。
「アイラさんをお願いします。あれは、私が」
「おっしゃ、任せとき。気ぃつけてな」
アイリの呼びかけに、パンドラ――リア・マキノが応じ、刀を抜く。
二人の剣士が、二人の怪物を迎え撃つ。
……お芝居だったなら、間違いなく名場面だろう。
「……リア、邪魔しないでよ。殺すしかなくなるよ」
「ウチ、あんたにいろいろ文句あんねん。ここで精算したるわ。」
戦姫とパンドラが、互いに睨み合う。
強烈な魔力が渦巻き、大気が震える。
まるで、天変地異の前触れのようだ。
「みんなアイラの敵なら……ぶっ殺す!」
突如として咆哮が轟き、甲高い金属音が鳴り響く。
少し離れた場所では、アイリとトアの剣がぶつかり、火花が散っていた。
「あなたの相手は……私です」
「邪魔だって言ってるでしょ!」
戦姫。
パンドラ。
トア。
アイリ。
四人が同時に地面を蹴り――
戦いの火ぶたが、今、切って落とされた。




