第五話 旅
「騎士団長ねぇ…。まああの方は全騎士への命令権を持っているし、情報操作もたやすいだろうね。」
私の話を聞いたウルは一人でうなずいている。
この人自分の上司信用してないわけ?
「ただの推測だよ?証拠なんてないけど、それでも信じるの?」
「別に俺は君を信用しているわけじゃない。俺が信用しているのは俺の勘だよ。」
何を言っているのかよくわかんないけど、そんなことはまあどうでもいいとしよう。
「それで、あなたはこれからどうするの?私をこのまま連行する?」
「いいや、俺は君を見逃す。そっちの方が面白くなりそうだからね。」
やはりこの人は騎士失格だと思う。
仕事できないならやめればいいのに。
そんなことを思っている私を気にする様子もなく、ウルは荷物をまとめ始めている。
「俺はこのまま王都に戻って、騎士団内部を探る。きっと面白いことが分かるさ。」
「…それは結構なことだね。」
「で、君はどうするんだい?」
どうする…?
どうしようか。
今の私に行く当てなんてない。
特に頼れる人もいないし、人生詰んでいるんじゃないかと思っている。
それでも一つだけ、まだ私がしなくちゃならない仕事がある。
「…獅子王を探す。あいつは私の手で絶対殺す。」
「一回負けたのに?」
「もう負けない。次は弓を使う。」
「まあそういうなら止めないけどさ。」
あの男を野放しにするわけにはいかない。
あいつは単独で世界征服なんて馬鹿げた夢を実現できるほどの力を持っている。
そもそもあれを倒せなかったから、私は全て失ったんだ。
だから復讐してやる。
「それなら君にアドバイスだ。まずはクーゲル王国領を抜けて、ラント共和国に行くといい。そこまで行ければ安全だからね。」
「ラント共和国…遠くない?」
「そりゃ遠いさ。でも共和国には君の助けになれる人がいる。行ってみればわかるさ。」
どのみち行く当てもなく、獅子王の居場所もわからないんだ。
まあ今更この人を疑ってもって感じだから、共和国に行くのもいいかもしれない。
「ちなみにだけどね、なるべく早く共和国を目指した方がいい。」
「え、なんで?私急いで旅するの嫌いなんだけど。」
「明日には四大英傑、女皇に君の討伐が命じられる。この意味わかるね?」
鳥肌が立つ。
なんだって?
あの人が私を殺しに来る?
やばい、早く逃げないと。
ともかく行先は決まったのだ。ならば善は急げだ。
さっさとラント共和国へ逃げよう。
え、なんでこんなに焦っているのかって?
私は女皇が苦手なんだよ!!!