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永夜の流星  作者: Ragna
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第四十三話 トア

真っ暗で何も見えない。

最高に気分が良かったはずなのに。

頭の中で鳴り響いていた声と私の声が重なった瞬間、視界が真っ暗になった。

獅子王とレインはどうなったのだろう。

リアは無事なのだろうか。

何より私は今どうなっているのだろう。

体は全く動かない。

と言うより感覚が全くない。

もしかして死んでしまったのかもしれない。

まだ何も成し遂げてないのに。


『死んだなんて、冗談やめてよね。』


突然あの声が聞こえた。

私と重なったあの声だ。

一体誰の声なのだろう。

確かヴィリアールも頭の中で声がしてたって言っていた。

じゃあ彼女と同じように、私は洗脳されているのかもしれない。


『ちょっとちょっと、失礼じゃない?私を洗脳扱い?』


じゃああなたは誰?

さっきから何も分からないんだけど。


『私はあなただよ。だからあなたは私。』


やっぱり洗脳の類かも。

意味わかんないし。


『ほ、ほんとのことだって!私はあなたから生まれたもう一人のアイラ。断じて洗脳なんてものじゃない。』


なんかもうめんどくさいから、そう言うことにしておいてあげよう。

それで、もう一人の私は何で生まれたの?


『さぁ?それは知らない。でも私はずっと昔から存在してたよ。』


それは結構だね。

じゃあ話は終わり。

私は獅子王を殺しに行くから、また今度ね。


『もー。今体の主導権は私にあるんだよ?話を聞いてくれないと、元に戻さないから。』


それが本当なら、ずいぶん悪趣味だね。

さっさと話して、早く体を返してよ。


『せっかちだなぁ。じゃあ簡潔に行こう。アイラ、あなたの願いは何?』


そんなの決まってる。

家族を、友人を、私の人生を滅茶苦茶にした奴らを皆殺しにすること。

誰一人として生かしてはおかない。


『そう。その願いを叶えたとして、後悔しない?』


後悔だって?

今更何を後悔するの?

虚勢と欺瞞と失敗に塗れた人生を歩んできたんだ。

あなたは私なんでしょ?

なら分かってるはずだよ。


『…よかった。それなら私が生まれた意味はある。』


どうでもいいよ。

早く体を返して。

あいつらを殺すことが、私の責務なんだから。


『ねぇ、アイラ。私はね、あなたに幸せになってほしいんだ。』


うるさい。

今更幸せなんて必要ない。

私が求めた幸せは、すでに失われた。


『私が生まれたのは、アイラを守るため。私はアイラが傷つくのを許容しない。』


私なんてどうでもいい。

奴らをこの手で殺す。

それが願いだってさっきから言ってるでしょ!


『分かってる。分かってるよ。ずっと見てきたんだから。私とあなたは同じだよ。』


じゃあ邪魔しないで。

お願いだから。


『大丈夫。私はあなたの力になるよ。いつかあなたの願いが叶うその時まで。』


あなたを信用していいわけ?

そもそもこれまでの時間が夢だったなんてのはやめてほしいんだけど。


『私たちの会話は正真正銘現実だよ。まあ精神世界ではあるけどね。』


そう。

あなたがどんな役に立つのかは知らない。

でも手伝うって言ったのなら手伝ってよ。


『任せておいて。私はそのために生まれたんだから。それじゃ、そろそろ体を返すよ。』


あっそ。

…でもとりあえず言っとく。

ありがとう、私。


『どういたしまして、私。うーん、やっぱりどっちもアイラっていうのはわかりにくいよね?』


私は改名なんてしないからね。


『じゃあ私のことはトアって呼んで。いい名前でしょ?』


はいはい可愛い可愛い。

トア…でいいんだよね?


『よくできました。それじゃあ、近いうちにまた会おうね。さ、夢から覚める時間だよ。』


声がふっと消える。

トアか…今の話は信じ難い。

でもまあ、今は気にしていられない。

とにかく敵を討ちに行かないと。


「…夢から覚める時間だ。」

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