第四話 真実
私が子どもみたく泣きじゃくった後、ウルは縄をほどいてくれた。
いい歳してないてる私も大概だけど、この男は自分の責務を忘れてるんじゃない?
ちゃんと仕事しなよ。
「それで、少しは落ち着いたかい?落ち着いたらアルカのことを話してほしいんだけど。」
「空気読んでくれない?もうちょっと灌漑に浸っときたいんだけど。」
「まあ俺もそろそろ仕事しないとだからね。」
罪人の拘束といた人間が何言ってんだろう。
多分だけど、この人バカだね。
でもまあなんやかんや命を見逃されてるわけだし、その礼はしないと。
「7日前、私はアルカにたまたま居合わせた。」
「ちなみになんで?デートかい?」
「…ただの休暇だよ。殺されたいの?」
この男多分デリカシーないな。
真面目に話してるんだから茶化さないでよ。
少しむっとしながら私は話を続ける。
「私がアルカに来て4日後だったかな。街の東門が大爆発したんだ。私が駆け付けるとそこには獅子王がいた。」
「獅子王レオ・アイアス…四大英傑最強にしてクーゲル王国の最高戦力。彼がアルカを襲撃した理由は?」
「…わからない。彼は四大英傑の中でも謎が誰よりも多い。元々自分の考えを誰かに明かすような人でもないよ。」
獅子王レオ・アイアス。彼は間違いなく人類最強だ。
唯我独尊を貫き、自身の欲を何よりも優先する。
私と顔を合わせるたびに夫婦になれ、なんて言われて困ったものだった。
「できる限りの抵抗はしたんだ。実際にあいつを9回殺したし。」
「9回殺した…?」
「あの男は殺しても死なないんだ。彼の魔術なのか、そもそもの特性なのか、はたまた呪いの類なのかはわからない。」
「不死身ってことか。それはまた厄介な…。にしてもよくあの獅子王を9回も殺せたね。」
「あなたも言ってたでしょ?私の能力は対人戦特化だからね。一回きりの勝負なら獅子王でも倒せる。」
しかしその能力があの状況で裏目に出たのも事実だ。
獅子王の攻撃は範囲が広すぎた。
まさに大群戦闘用の攻撃だ。
私自身は回避できても、街への被害は抑えられなかった。
「にしても、君がさっきの戦闘で能力を使わないでくれて助かったよ。もし君が本気だったら俺は瞬殺だろうね。」
「…ていうか本気じゃなかったとしても、四大英傑を一撃でノックアウトできるあなたも大概だと思うんだけど?」
「そう言ってもらえて光栄だね。」
実際ウルは魔術抜きの戦闘であれば、四大英傑に勝る。
そんな人間がいるとは思いもしなかった。
態度を除けば尊敬に値するかもしれない。
…いや前言撤回。顔がうざい。
「話を戻すけど、その後どうして君がアルカを消し飛ばした犯人にされたんだい?」
「…推測になるけど、多分裏で獅子王とつながっている人がいる。私が王都に戻った時の状況は、どう考えても根回しされていたとしか考えられない。」
瀕死になった私が命からがらアルカから離脱し、なんとか王都フォルクスに戻った時、すでに私はアルカを滅ぼした犯人にされていた。
どう考えても情報の伝達が速すぎる。
それに獅子王のことについては一切情報が出回っていなかった。
「その人物の目星は?」
「確証はないけど…多分、クーゲル騎士団団長フェルータ・ペストだと思う。」
キャラの名前考えるのって難しいですよね。