第三十九話 獅子の輝き
鋭い金属音が鳴り響く。
リアによる神速の抜刀を、獅子王は小手をつけた腕で容易く受け止めていた。
「蛆虫にしてはやるな。お前は記憶するに値するかもしれん。」
「バケモンが!」
リアの猛攻が始まる。
恐ろしい速度の斬撃を無数に繰り出す。
その全てが正確に相手の救助目掛けて放たれており、まさに不可避だ。
普通ならば。
「はっ!まさかこれで本気とは言うまいな!」
獅子王の拳がリアの斬撃を全て相殺する。
やはりこの男は常軌を逸している。
精霊の加護を得たリアの猛攻を全て相殺することなんて、私でもできない。
「この剣技…異世界人の流派だな。それに精霊術とはな。未だに扱える者がいるとは思わなんだが。」
「クソッタレ…固有魔術すら使わんつもりなんか。」
「はっ!なぜ蛆虫如きに俺が全力を出さねばならんのだ。おこがましいにも程があるぞ。」
次の瞬間、獅子王が鋭い一撃を放つ。
リアはこれをなんとか刀で受けるが、弾き飛ばされてしまう。
「そもそも貴様の剣速は見切った。貴様では俺を倒せん。」
「随分舐めてくれとんのやな。絶対に殺したるわ。」
リアが姿勢を低くする。
あの構えは抜刀術だ。
でも獅子王はさっき初見でリアの抜刀を受け切った。
このまま突っ込んでも意味がない。
「またそれか?随分と芸に乏しいのだな。」
「舐めんなや。」
リアが再び地面を蹴り、疾走。
さっきよりも速い…!
「何度やっても同じ…」
そう言いかけた瞬間獅子王の右腕が飛び、血が吹き出す。
リアの抜刀が獅子王の腕を鎧ごと切断していた。
そしてそれに留まらず、続く斬撃でリアは獅子王の腰のあたりを殻裂いた。
「…ほう。我が鎧を斬るか。」
「次は首を貰う。この間合いなら外さん。」
「やはり貴様は蛆虫にしては強いな。名乗ることを許す。」
「…リア・マキノ。冥途の土産や。」
「はっ!思い上がるなよ。この程度で俺を殺せるとでも?」
「…なっ!?」
獅子王が右腕を高く掲げる。
いつの間にか出血が止まっている。
いや、それどころかどんどん再生している。
「我が魔術、獅子の輝きは星々から魔力を吸い上げる。そして魔力がある限り、俺は不死となる。」
「…せっこいな。そんなんずるいわ。」
「これが俺が王たる所以だ。さて、もう貴様に用はない。」
「あがっ…」
獅子王の拳が、リアの腹にめり込む。
バキバキという音が鳴り、リアはそのまま後方に吹き飛ばされた。
おそらく肋骨を粉砕された。
勝負はついた。
獅子王の勝ちだ。
しばらく振りの投稿になります。




