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永夜の流星  作者: Ragna
31/59

第三十一話 悪

ヴィリアールを探す。

それは簡単なことではない。

なにせ帝国領はとんでもなく広い。

クーゲル王国ほどではないけれど、その中から手がかりなしに人を探し出すなんてほぼ不可能だ。

私でなければ、だけど。


「はぁ…あんまりやりたくないんだけどなぁ。」


私は渋々見晴らしのいい丘の上まで足を運んでいた。

今からすることは莫大な魔力を消費する。

仮に襲撃されても反撃出来なくなるほどに。

だがこの際文句も言ってられない。


「さて、手のかかる姉を探しますかね…!」


どうやって探すかって?

もちろん、魔力探知だ。

ヴィリアールほどの魔力の持ち主であれば、確実に探知できる。

ただし今回は探す範囲が広すぎる。

だから流星(ミーティア)の出番だ。


「流星…三重(トリプル)!」


流星による魔力増幅を三重に重ねる。

それによって私は帝国領全土への探知が可能になる?

ただしこの状態は際限なしに魔力が流れ出す。

だから維持できるのも数分程度だ。


「桁外れに強い魔力が…3つ。1番近い反応は…リアかな。」


改めてリアは怪物だ。

ここまでの魔力量だとは思わなかった。


「次は…これだ。見つけた。」


随分早く見つけることが出来た。

リアよりも一回り大きな魔力反応、間違いないヴィリアールだ。

反応的に、彼女は沿岸部へ向かっているらしい。

これならすぐに追いつける。

急いで流星を解除し、魔力探知を切る。

今ので大体半分ほどの魔力を持っていかれた。


「半分で済んだって考えようか。さて…」


足に魔力を流し込み、強化。

そしてさらに増幅。

一気に地面を蹴って走り出す。


「待っててよ、馬鹿ヴィル!」



______________________________________


夕日が差し込む綺麗な浜辺。

お目当ての人物はそこに一人佇んでいた。

その立ち姿は思わず見惚れてしまうほどだった。


「よく見つけられたね。」


ヴィリアールが振り撒く。

その顔は笑っていた。

あの不気味な笑みじゃない。

心の底から出た、昔の笑顔だ。


「おかげでもう魔力がすっからかんだよ。この馬鹿。」


私はここに来るためにほぼ全ての魔力を費やした。

疲労で足は悲鳴を上げている。

結局馬車で二日かかる距離を移動したのだから、当たり前だ。


「…。」

「…。」


しかし困った。

何を話せばいいのか全く分からない。

非常に気まずい。

この空気に耐えかねて、私は口を開く。


「王国に帰らないの?」

「…うん、帰らない。多分アタシは王国に帰った時点で殺される。」

「誰に殺されるの?ヴィルを殺せる人なんてそうそういないはずでしょ?」

「あの連中にはアタシじゃ勝てないからね。せっかくアイラに貰った命を無駄には出来ないよ。」


あの連中…。

やはり王国の中枢はすでに堕ちているのだろう。

私に罪を被せたのもそいつらなのかもしれない。


「ヴィル、教えて。そいつらは誰なの?」

「…宵闇。数十年前から王国を背後で操っている4人の怪物たち。」

「よいやみ?」


そんな奴らの事なんて一度も聞いた事がない。

ヴィリアールが勝てないのなら、私でも勝てるかどうか分からない。

そんな奴らがいるなんてにわかに信じがたい。


「それで、その宵闇ってのはどんな奴ら?」

「全員は知らない。私が把握してるのは2人だけ。」


その後の発言を聞き、私は視界が揺れた。

まさかそんなわけがない。

これは悪い夢だ。

そんなことがあってはならない。


「その二人の通称は、調律者と白銀。調律師はアタシに術をかけた傀儡術師。白銀は…知ってるよね?」

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