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永夜の流星  作者: Ragna
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第三十話 休日

王国軍を国境まで押し戻した後、リアは家族に会いに行った。

本当に無事でよかったと思う。

一方私はというと、特にすることもないのでフォドという街に来て買い食いをしていた。


「あ、これおいしい…」

「でしょう?この国を建国した大賢者キタサキが伝えた伝統料理のタコ焼きだよ!」


小麦粉のようなものを水に溶かして焼いているだけなのに、ここまでおいしいと思わなかった。

さすが異世界人の興した国だ。

店主さんにお金を払ってタコ焼きを買い足し、その場を後にする。


「思ったよりも賑わってるんだなぁ。」


私はてっきり戦時中だから市場など開いていないのではないかと思ったのだけれど、実際はかなりにぎわっていた。

まあ王国軍はもう追い返したんだし、活気がある方がいいだろう。

そのおかげで私もおいしいもの食べれたしね。

それじゃさっき買ったタコ焼きをほおばりながら、街並みを満喫するとしますかね。


「でもその前にネズミを処理しないとか…」


私の休息を邪魔する奴には鉄槌を。

これが私のポリシーだ。

私は路地裏に入り、何もない場所に向かって声をかける。


「さっさと出てきたら?」

「一つ聞きたいんだけど、キミは毎回どうやって大迷宮(ラビリンス)の障壁を見破っているんだい?」


空間が揺らめき、レインが現れる。

この私を尾行なんていい度胸だ。


「勘。それで、用件は?まさかもう借りを返せって言いに来たの?」

「いいや、そこまでケチじゃないよ。キミに貸しを作る機会はなかなかないからね。大事にしないと。」


私は基本的に誰かに借りを作りたくない派だ。

なのにレインには二つも大きな借りがある。

こいつになにを要求されるのかを考えると、鳥肌が立ってくる。


「じゃあ何しにきたわけ?私の休日を邪魔しに来たんじゃないよね?」

「まさか。ちょっとしたお知らせをしに来ただけだよ。」

「そう、なら早く言って。タコ焼きが冷めちゃう前に。」

「ヴィリアールのことだけど、完治したよ。僕もあんなに早く復活すると思っていなかった。」


ヴィリアールらしいな、と納得する。

彼女は昔から風を引いても次の日にはケロっとしていた。

あの回復力はどこからきているのか。


「それで、ヴィルは王国に帰ったの?」

「それが二つ目のお知らせだ。彼女は僕の迷宮から出て行ってしまってね。その後は行方知らずだ。」

「…探せってこと?」


私は顔をしかめる。

あんな別れ方をしておいて、もう再会?

本気で言ってる?


「私はヴィルを見つけてもあなたに引き渡さないよ?」

「それはキミの自由にすればいい。僕はもう王国に帰らないといけないから、彼女の面倒まで見ていられないしね。」

「そう。なら私を付け回すのもやめてくれるわけだね。さっさと帰ってよ。」


レインは昔から面倒ごとを避ける性格だ。

今回その後処理を押し付けられたのは私ってわけか。

ならこっちにも考えがある。


「ヴィルを探し出せっていうのはやってあげる。でもこれで借りは一つ解消だからね。」

「ああ、それでいい。いや助かるよ。それじゃ、幸運を祈る。」


レインの姿がすっと消える。

私は緊張の糸がほどけ、深く息をつく。


傀儡術(マリオネット)っぽい魔力は感じなかったな…」


タコ焼きを取り出して口に放り込みながらつぶやく。

傀儡術の魔力を感じなかったとしても、あの男が何か企んでいるのは間違いない。

おそらく前に私を助けてリアを紹介したのにも、何かしらの意図があったのだと思う。

なおさら警戒を強めなければ。


「にしたってお姉ちゃんを探せって?手掛かりもなしに?」


よし、今度会ったらあいつ殴ろう。

帝国領がどれだけ広いと思ってるんだ。

これで休日はお釈迦だ。

最後のタコ焼きを飲み込んで、トボトボと歩き出す。

さようなら、私の平穏な休息。

今からはお仕事の時間だ。

ついに30話突入です。

ここまで読んでくださった方々に感謝を。

感想等々、お待ちしております。

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