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永夜の流星  作者: Ragna
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第十八話 スピカ

あの暗黒竜狩りから早くも3週間が経った。

結局リアはその間、ずっとベッドの上にいなければならなかった。

本人はけろっとしているけれど、あの雷を受けて無事なわけがない。

医者から絶対安静を言い渡されて文句を言い続けている。

まあその調子なら多分大丈夫だと思う。

え、私は何をしてたかって?

私はこの3週間とっても忙しかったんだよ?

だって四六時中暴漢が殺しに来るんだから。


「今日こそぶっ殺してやる!逃げんじゃねぇ!!!」

「そっち行ったぞ!逃がすな!」

「もー!昼ご飯ぐらいゆっくり食べさせてよ!!!」


私がどこにいようと、暴漢たちは殺しに来る。

なんで襲われているかって?

それは私がリアの代わりをしているから。

この暴漢たちはみんなギルド所属の冒険者たちで、普段は打倒リアを掲げている連中らしい。

なんでも誰がリアを超えるか競っているそうだ。

でも今リアは療養中だから、私が代わりに相手してるってわけ。


「死ねぇぇぇぇぇぇ!」

「食事中だって言ってんでしょうが!!!」


暴漢たちを容赦なく蹴り飛ばしながら、パンをかじる。

こいつらのしつこさにはもうお手上げだ。

何度ぶちのめしても襲ってくるんだから。

なんなら最近この街、トリアで私と暴漢の殴り合いが人気になっているらしい。

噂では賭けもやってるとかなんとか。

私に全ベットしないと許さないからね。


「油断したなクソや…ぐふぅ!!!!!」

「これでやっと静かになった…」


最後の暴漢を蹴り飛ばして、ようやくゆっくりできる。

今日は鍛冶屋に行かないといけないのだ。

こいつらを早めに処理できて助かった。

パンをかじりながら、鍛冶屋に向かって歩き出す。

なぜ鍛冶屋に行くのかというと、頼んでいたものが完成したからだ。


_____________________________________


「お、時間ぴったりじゃねぇか。俺はてっきりあいつらに追われたまま来ると思ってたが。」

「こんにちは、ジル。今日は早めに片が付いたからね。それで、剣ができたって?」

「おう!こいつが頼まれてたもんだ。」


ジルはカウンターに二振りの短剣を置いた。

惚れ惚れするほど美しい漆黒の曲刀。

見ただけでわかる、これほどの短剣は今まで出会ったことがない。

恐る恐る手を伸ばし、短剣を持ってみる。


「重さも完璧。さすがだね、ジル。」

「だろ?俺にかかればこんなもんよ。そいつの特性、わかるか?」

「この感じ…魔力吸収?」


手に持った瞬間から感じたのだけれど、かすかに剣が私の魔力を吸っている。

いや、私だけじゃなくて空間にある微細な魔力も吸っているっぽい。


「ご明察。俺もここまでとは予想してなかったんだが。おそらくその気になれば魔力そのものを斬ることだってできるだろうよ。」

「ありがと、ジル。これでようやくまともに戦える。」

「そりゃよかった。そんでなんだが、そいつの名前はどうするよ?」

「な、名前?」

「そりゃこの俺が鍛えた獲物だからな。名前は付けてやらんと。」


名前かぁ。

私がつけた名前は昔から評判が悪い。

いつだったか、馬にガルバサンドロスって名前を付けたことがある。

ヴィリアールとレインに信じられないほど大爆笑されたのだけど、未だに納得していない。

かっこいいでしょ。

でも剣に名前は付けたことないんだよなぁ。

どうしよう。

一人悩んでいると、突然扉がバァァァァンという爆音を立てて吹っ飛んだ。


「ウチ復活!元気いっぱいや!!!」

「り、リア⁉なんでここに…」

「ふっふっふ…アイラがちょうど困ってる気がしたんや!」


何この子、怖い。

テレパシーでも使ってるの?

ともあれ悩んでいることは事実だから、事情を説明してみる。


「なるほどなぁ。短剣に名づけかぁ。ほなウチがつけてもええ?」

「ふぇ?ま、まあいいけど…」

「よっしゃ!命名、スピカや!」


決めるの速くないですか。

なんでそんな簡単に思いつくの?


「スピカか。ちなみに意味はなんだ?」

「意味?知らんで。ウチの故郷に伝わる古文書にスピカっていう単語があったんや。勉強してないからどんな言葉かは知らんけど、かっこええやろ?」

「お前なぁ…」


スピカ…

スピカね。

確かにかっこいいい。


「ジル、スピカにするよ。気に入った。」

「あんたが言うなら止めねぇが…。まあ聞こえは悪くねえからいいか。」


リアはそれを聞いてうれしそうにうなずいている。

ともあれこの名前なら笑われることもなさそうだ。


「よっしゃ!ほなさっそくスピカの試し斬りしに行こや!うちもなまった体元に戻したいし。」

「おっと、そうはいかないぞ。リア、お前にはしてもらわねぇといかんことがる。」

「え、めんどくさいことならお断りやで。」

「お前がついさっき壊した扉の修理だ。」


リアの顔から笑顔がすーっと消えていく。

なんでこっち見るの。

自業自得でしょ。

私は泣きそうなリアから視線を外すことにした。

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