第十七話 死にゆく一閃
私のせいで失敗した。
もう逃げ場はない。
回避も間に合わない。
リアが稼いでくれた時間で用意したものも使えない。
暗黒竜のブレスが今放たれる…
「水…鏡!!!」
突然ぴたりと暗黒竜の動きが止まった。
これは…水の結界?
「アイラ、撃って!!!」
リアの叫びを聞いて我に返る。
私が諦めてどうする。
リアが最初で最後のチャンスを作った。
ならここで必ず決めなければ。
私が用意したもの…ありったけの魔力を込め、ありったけの強化を施した矢を弓につがえる。
そして矢に、そして弓に今できる最大限の増幅を施す。
これがすべてをかけた一撃だ。
「死にゆく一閃!!!」
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「いやぁ、マジで危なかったわ。あんなん反則やと思わん?」
「私は本当にリアが死んだと思ったよ。生きててよかった。」
私のはなった一撃で、暗黒竜の右半身は消し飛んだ。
さすがにここまでの負傷は治せないらしい。
いやホントに倒せてよかった。
あの状態から復活したらもう泣いちゃうからね。
「それにしても、雷に打たれて生きてるなんて丈夫だね。」
「せやろ?ウチの取柄は可愛いだけじゃないんやで!」
「さすがはパンドラ様だね。見習わないと。」
「いやいや、あの怪物を一撃で倒した戦姫様の方がすごいんちゃう?」
そういわれるとなかなかに照れる。
私が放った死にゆく一閃は、街一つくらいなら吹っ飛ばせる威力がある。
その代わり魔力はすっからかんだし、魔力増幅を無理にかけたせいで矢も弓も砕け散った。
まさに最終奥義であり、最後の手段だ。
名前はかっこいいよね。ねぇ?
「ともあれ、これで双剣も素材はゲットやな。まーじで疲れたわぁ。」
「ごめんね、付き合ってもらったのに怪我までさせちゃって。」
「いやいや、ぜんぜんええんやで。元々ウチには暗黒竜の撃退依頼が来てたって言うたやろ?」
お互いに目を見合わせて笑う。
いろいろあったが、二人とも生き残れたのだ。
まずはそれを喜ぼう。
「さーてと。ほな素材回収して街戻ろか。そろそろ暗くなってきたし、ちょうどええ時間やわ。」
「ねえリア?昨日奢ってもらったし、今日は私が奢るよ。」
「ほんま?じゃあごちになるわ!今日もべろんべろんに酔ったアイラちゃん見れるん楽しみやわぁ~!」
「そ、それは忘れてほしいな…」
私たちは帰路に就く。
四大英傑だったころはこんなに楽しい時間など過ごしたことがなかったから、今かすかに幸せを感じている気がする。
友達っていいものなんだね。
次回から少し長めになります。




