第十四話 暗黒竜
狩りの時間だ。
なーんてカッコつけた私。
現在後悔中。
まさか暗黒龍がここまで硬いとは思わなかった。
「ねえ、リア？さっきから何回も矢を当ててるんだけど。」
「全く落ちる気配ないなぁ。元気いっぱいや。」
暗黒竜は一軒家ほどの大きさで、全身にとんでもなく硬い鱗がついていた。
ただ硬いだけならいいんだけど、その鱗は魔力を弾く特性があるらしい。
故に私の壊レタ一矢を受けても、暗黒竜には全く効いてない。
ていうか、そもそも相手にされていないんだけど。
なんたる屈辱。絶対仕留めて唐揚げにしてやるんだ。
「うーん、どうしよか。飛んでる限りウチはなんもできんしなぁ。」
「あれを叩き落とせばなんとかなる？」
「なるっちゃなるけど…どうやって落とすん？矢は効かへんで？」
「まあ、お淑やかな方法じゃないから聞かないで。」
そう言って私は屈伸をする。
できるだけ上品な戦い方を心がけてたんだけど、あのクソ鳥にはお仕置きをしないといけない。
私を無視した罪は重いのだよ。
「え、アイラちゃん…もしかして…」
「ふぅー…ふん！」
足を魔力で最大限強化し、流星でさらに増幅。
そして一気に地面を蹴る。
「おわっ！ア、アイラちゃん！？」
空高く飛び上がった私はタイミングを見計らい、暗黒竜の背中に着地した。
我ながらナイスジャンプ。
「さっさと落ちろ、クソやろう！」
拳にありったけの魔力を込め、またもや増幅。
そのまま暗黒竜の背に渾身のパンチを叩き込む。
「ギャォォォォォォォォォォン！」
「手応えアリ！」
背中に強烈な一撃を受けた暗黒竜は一気に落下していく。
ざまあみろ！
「うひゃ〜、ほんまに落とすんかぁ！ほな次はウチの出番やな！」
リアは腰の刀に手をかけ、暗黒竜が落ちてくるタイミングを見計らう。
あの構えって確か…抜刀術？とかなんとかだった気がする。
「ここっ！」
リアは暗黒竜が地面に激突するのと同時に、目に負えないほどの速度で抜刀。
暗黒竜の腹をざっくりと斬り、そのまま2撃目、3撃目を繰り出す。
私はその間にしっかりと地面に着地した。
我ながらナイスな着地だったと思う。
リアは暗黒竜が動くなったのを確認して刀を収める。
「さすがだね、リア。暗黒竜をここまで斬り刻めるなんてね。」
「いやぁ、褒めてもらうのは後に取っとくわ。ウチの攻撃何一つ効いてへんし。」
「はい？」
耳をつんざく咆哮が鳴り響く。
暗黒竜の方に目を向けると、もう立ち上がっていたのだ。
それに信じられないことが起こっていた。
「傷が…塞がっていく？」
「あーそっか。説明忘れとったわ。暗黒竜って、自己治癒できるねん。」
そんな大切なことを言い忘れてたって？
リアさん、なんでそんなにケロッとしてるんです？
超ピンチだと思うんだけど。
「とりま、これで暗黒竜はウチらを敵って認識してくれたみたいやで？」
「ちなみにどうやって倒す？」
「え？そんなん決まってるやん。再生できんくなるまで斬る。」
満面の笑みを浮かべるリア。
なるほど、こういう感じね。
「ウン、ガンバロウネ。」
私は死んだ魚のような目で、元気いっぱいの返事をした。
