第十一話 流星
私の固有魔術、流星。
自身の魔力を一点に集中させ、一気に発散させる。
それだけ見ればただの魔力放出だが、流星はかなり異質な力だ。
魔力そのものを増幅させることができる。
これによって私は自身の魔力出力以上の攻撃が可能になる。
そして限界値を考慮しないのなら、無限に魔力を増幅することだってできる。
まあそんなことをすれば、もちろん即死するんだけど。
「それで、獅子王は私を狙ってるってこと?私は永夜の流星を発動するための部品なんでしょ?」
「おそらくね。それも生け捕りにしようとしている。今のところ魔力の増幅なんて神業ができるのはキミだけだ。」
「でも、それならあいつがアルカを襲って、私を罪人に仕立てた意味が分からないよ。そんなことする必要あった?」
「彼はアルカでキミを捕らえる気だったんだろうね。でも殺さないことを意識しすぎて、キミに逃げられた。」
なにそれ。
私は手加減されてたから、生き残れたってこと?
舐めた真似しやがって。
「キミを罪人にしたのは、失敗したときの保険だろう。実際戦姫アイラ・フォードは現在、クーゲル王国で極悪人という認識だからね。」
「ふん。本当に極悪人になってやってもいいんだよ?」
少し不貞腐れつつ、これからのことを考える。
獅子王は私を捕らえるためだけにわざわざアルカを襲った。
でも失敗してるから、また私を狙いに来る。
…ん?
ちょっと待って?
それってもしかして…。
「ねえ、レイン。獅子王が私を狙ってるのなら、この世界に安全な場所って存在してなくない?」
「よくわかったね。獅子王は国境なんてもの気にしないからね。どこにいようと容赦なく襲ってくるよ。」
ははははは。
レインに助けられて得られた安心感が、今きれいさっぱり消え去った。
獅子王は二度と同じ失敗をしないから、次また戦闘になれば確実に詰みだ。
「幸い、獅子王はキミの居場所を特定できていない。だからキミにはこれから逃げ回ってもらう。」
「そりゃそうするけどさ、それじゃ根本的な解決にならないでしょ。」
「ああ。だから逆に僕は獅子王の居場所を特定するために、クーゲル王国に戻るよ。」
何言ってんだろ、この人。
私を助けた=大罪人だよ?
今王国に戻ったら一瞬でつるし上げられると思うけど。
「心配しなくても大丈夫だよ。ここに来る前に、戦姫を殺す手柄を女皇に取られるのは嫌なので僕が殺します、っていう手紙を出したから。」
「あなたって真面目に見えて相当やばい奴だよね。」
「そう言わないでくれ。僕は自分のしたいことをしているだけさ。」
騎士団への内部工作といい虚偽申告といい、私の中のレインのイメージが崩れ去っていく。
今度から白銀推しの人と合ったら、あいつはやめときなさいって言おう。
「ともかく、私は逃げればいいわけだね。どこに行こうかな…。」
「もし行先が決まらないのなら、共和国内にいる僕の知り合いを訪ねるといい。彼女ならきっといい助けになるはずさ。」
レインの知り合いかぁ。
きっといい人だろうから、会いに行ってみるかな。
いや死神騎士みたいに変な人って可能性もあるのかもしれない。
やっぱりやめよっかな。
「ここから東に2日ほど行った所に大きな町がある。そこの冒険者ギルドで金髪に赤い目の女の子がいるはずだよ。」
「ふーん。その子の名前は?」
「キミも聞いたことあるはずだよ。パンドラと呼ばれている冒険者、リア・マキノだよ。」




