21
私は溜息を吐いて、戦奇様に無理はしないで下さいと伝える。戦奇様は取り敢えず素直に頷いているが…私の言うことなんて聞くとも思えない。何かあってからでは困るのだが。
「そういえば戦奇様、シルヴィアを見ませんでしか?」
「シルヴィア…?誰だ?それは。」
そういえば戦奇様がシルヴィアを見たのは此処に来た初日だけだ。名乗ってもいなかったのだからシルヴィアと言われても分からないのは当然だろう。
「オルディアス侯爵の奴隷です。」
「ああ、あの女か。いや、見てないな。」
「そうですか…。」
もしかしたら戦奇様がシルヴィアを見ていないかと思ったけれど…。
「……お前はあの女が何者なのか分かってるのか?」
「…?シルヴィアはシルヴィアです。」
戦奇様は何かを言いかけて…しかし何も言わずに私の頭を撫でた。
「友達になったんだな。」
「…友達…かは、分かりません。」
友達…?私とシルヴィアの関係は友達と言えるのだろうか。今まで友人らしい友人が出来たことが無いので分からない。
シルヴィアは私に優しくしてくれたし、本までくれた。そしてこのままここを去れば、二度と彼女に会えないような気がした。
「でも、見つけないといけないんです。」
「…分かった。好きにしろ。」
戦奇様は私にそう言うと机の上からひょいと降りて、「俺も一緒に行こう。」と言った。
「戦奇様もですか?」
「何かあった時に俺がいないとどうにも出来ないだろう?」
「確かに、先程捕らえられた時に少し困りましたね…。」
私が言うと、彼が眉を顰めた。
「お前、捕まっていたのか?」
「はい。ほんの少し。でも、助けて頂けましたので。」
「誰に?」
問われて言葉に詰まる。私を助けてくれたあの人は、昔の知り合いだ。ただ、学園に入るより前のことは戦奇様に話した事が無かったし、話して良いのかの判断も私には付かなかった。
「……。」
何も言えずにいると、戦奇様が言えないのなら良いと言った。その横顔が少し不機嫌に見えて、慌てて謝る。
「戦奇様ごめんなさい。」
「謝ることはない。俺にもお前に言ってないことの一つや二つはあるのだから。」
「王子と奴隷では立場も違いますからそれは当然です…。」
戦奇様はどうにも私達と自分が同じ立場のように言う癖がある。そんなこと、奴隷が言われるだけでも罪になりかねないというのに。
「何も違いはしないだろ。」
戦奇様のその言葉はどこか虚しく響いた。私とこの人は余りにも違うというのに…。
「…今度、話しますから。今はどうかシルヴィアを追わせてください。」
何とかそれだけ言うので精一杯だった私には、戦奇様がどんな顔をしているのかは見えなかった。
「分かった。」
ただ、力強く歩くその背中を追いかけた。
5日に更新出来ず申し訳ありません!
読んでいただき有難うございます。明日から毎日更新が出来るように頑張ります!




