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《…!………っ!!》
頭の中で悲痛な叫びが木霊して眉間に皺が寄った。この城はずっと【賑やか】だったけれど、今は人間達の叫びも相まって騒がしいまでの域に達していた。
嫌な予感はずっと続いている。シルヴィアを追いかけなければいけないが、奴隷としては主人である戦奇様と先に合流するのが良いだろう。それに…戦奇様なら何か知っているかもしれない。
そうして戦奇様を探している。城の外は益々騒がしく、『オルディアス侯爵を出せっ!』『オルディアス侯爵を処刑しろ!』そんな声が聞こえてきた。
人間同士で憎み合うなんて…何て馬鹿馬鹿しい。魔女を憎んでいたと思えば、人間も憎むなんて人間とは分からない生き物だ。
この城は石造りだからなのか、周囲より少しひんやりしている。走る足を進める度にカツンカツンと甲高い音が響いた。
やけに城内に人が少ないと門の方を見れば、メイド達が逃げ惑い、思い思いの物を持って城を出ようとしていた。門衛は門を閉めたままとっくに逃げ出したようで、女だけの彼女らでは開けようが無いのか途方に暮れていた。私がいればすぐに開くだろうが、彼女達を手伝う義理も無いので先を急ぐ。
「戦奇様。」
戦奇様はオルディアス侯爵の執務室にいた。何故か机の上に座って楽しそうに微笑んでいる。
「お行儀が悪いです…。」
王族なのに、と思わず漏らすと戦奇様は顔を顰めた。
「やっと来たと思ったらばあやみたいな事を言うな。」
「遅くなってしまい申し訳ありません。お怪我などはされてませんか?」
「俺を誰だと思ってるんだ?」
「…戦奇様です。」
にやりと不敵に笑ういつもの戦奇様にほっとする。戦奇様は持久性は無いが瞬発力はそれなりだ。特に、銃を持っている戦奇様に勝てる者はそうそういない。
「それにしても、一体どうなっているんですか?」
「なに、大した事じゃないさ。オルディアス侯爵の圧政に耐えかねた民衆が、オルディアス侯爵をどうにかしてやろうと此処に押し寄せているに過ぎない。」
「かなり大した事だと思います…。戦奇様は逃げなくて良いのですか?」
何て事の無いように言うので溜息が出た。領民が領主に対して反乱を起こすなど余り聞いたことがない。少なくともここ50年は起こっていない筈だ。
「そうでも無い。この流れは4区全体に広がっているわけじゃない。一つの街の住民程度ならどうにでも出来る。」
そうだろう?と戦奇様はほくそ笑む。
「そもそも俺が逃げる理由なんてない。彼らの目的はオルディアス侯爵だからな。あいつらも直系王族に手を出すほど馬鹿ではないさ。」
直系王族に手を出せば問答無用で一族どころか知り合いの親族までも拷問の上死刑だ。国王は無情で残忍な性格で自分に従わない者に容赦ない。
明らかに王族の証しでもある紅い瞳を持つ戦奇様が巻き込まれ危険な目に遭うことは確かに少ないのかも知れない。
いつも読んでいただき有難うございます!
次回は10月5日の18時頃に更新します。




