当たり前のもの
主人公 : 霜花
親友 : 花純
「霜花って気になってる人とかいないの?」
夏のじりじりとするような暑さはどこへ行ったのか、だんだんと凍えてきた11月の秋(もう冬のようなものだが)、ふいに花純が聞いてきた。
花純は私の親友だ。
親友といっても、幼い頃からの幼馴染だとか、苦楽を共にした深い絆が~だとか、
そういったお伽噺みたいな関係じゃなくて、中学から高校まで一緒にいたくらいだ。
「またその話ぃ~?」
「だって...わたしたち華のJKだよ!?甘々な恋しなきゃ損でしょ!!」
「そういうものかなぁ...」
「で、どうなの!」
「まぁいない,,,こともないけど」
「ほんとに!?誰!?」
「ひみつ」
「おーしーえーてー!」
「いやですぅー」
「ケチぃー」
とまぁ、こんなありきたりな一般的な女子高生然とした会話から、
どういった関係なのかは想像していただけるとありがたい。というか頑張ってしてほしい。
恋愛、たしかにJKたるもの興味がないというわけではないが、いまいちピンとこない。
クラスメイトにもビジュの良い男子はいるし、私だってそれをかっこいいと思うことはある。
が、しかし、だからといって好きになるというわけじゃない。
中学は女子中で、小学校はノーカン(別に特別、恋愛をしていたわけでわないが)とすると、恋愛という感情を上手く言語化できるほど理解できていないのだ。
一応気になる人というものはいるが、とてもじゃないけど花純には言えない。
だって気になる人に直接、
「あなたが気になります」
だなんていえないじゃないか。
私にそこまでの度胸、いや覚悟はない。
今の関係が壊れてしまうくらいならこのままで、いい。
「そういうあんたは気になる人いないの?」
「バ先の先輩がかっこよすぎて超やばい!」
「来月告白しようかなぁ」
こくはく。告白?
一瞬頭が働こうとしなかった。
何気なく聞いた。話の流れで。聞かなきゃよかった。
後悔するには遅かった。
「いいじゃん。花純なら絶対オトせるって~」
「ほんとにぃ~?」
「私が嘘ついたことあった?」
「昨日の漢字テスト、間違えた範囲教えてきたよね?」
「ナンノコトカナー」
私は今マトモに会話できていただろうか。
少なくとも正常な思考ができる状態ではない、
ふざけて、はぐらかして、そうやって現実逃避しないといけない。
そうしないと、可笑しくなってしまう。
来月、そう、12月。
12月に告白なんて、どこぞの神の誕生日しかありえない、
薄々と気づいてはいた。
彼女がセンパイとやらの事を好いていることを。
もう既に二人で遊びに行く仲らしい。
あの聖夜に結ばれるのなんて、必然だ。残酷なまでに。
彼女は優しいから、彼氏ができても、私に態度を変えたりすることはない。
でもそういう問題じゃない。
私は1ヶ月間かけてゆっくりと失恋をしていくだろう。
だからこそ、謳歌したい。
これは1か月で溶けてしまう、霜のような初恋のお話。
霜(しも、ソウ):気温が氷点下になり、空気中の 水蒸気が直接氷の結晶と変化したもの。
冬によくみられる。
花に付着したものがフロストフラワー(霜花)とよばれる。
霞(かすみ、カ):空気中の水蒸気が細かい水滴となって浮遊し、遠くの景色をぼんやりと見せる現象。
春によくみられる。
花言葉:カスミソウ - 清らかな心、無邪気
フロストフラワー - 健気
霜月:主に12月を指す。昔は11月を表していた。