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畑とお酒と天の魔女  作者: 絵狐
一章 畑とお酒と天の魔女
7/24

第7話 話の真相

 また酒好きが変な事を言い出したと若い冒険者の男は笑ったが、昔からゼオラの事を知ってる店主は思い当たる節が多いので、まじまじとその姿を見た後に質問する。


「先生……まじか?」


「嘘はつくけど嘘言ってどうするのよ。ってクリエスにも言ったわね」


 クリエスという名前に聞き覚えがあった冒険者がその事を訪ねるとさっき別れた事を伝える。ジョッキに酒を入れてもらってからクリエスは家に来た事、送ってきた事、戦って来た事、国王に誘われて断った事、ジウロ王国であった様々な事を飲みながら伝えた。


 そして帰りに買ってきた串焼きの事を思い出し何も無い空間から葉っぱに包まれたそれを取り出し男共に二本ずつ配り自分はタレと塩の一本ずつ皿にのせた。


「それ王国のお土産!食べていいよ!」


 冒険者の男はすげー嘘くさいと怪しんだがもらった串焼きを食べると知っている味だった。


「……先生。これって王国にあるタレがどうとうか言ってるおっさんが焼いてる串焼きか?」


「おん?そうだって言ってるだろう!嘘言ってるとか思ってるんか!?」


「いやー嘘にしか聞こえん……」


「おん?やるか若造。私はお酒の魔女様やぞ?負けるとおもってるんか?」


 そんな感じでゼオラと冒険者が口喧嘩を始めたが酒場の店主はもらった串焼きを一口食べてからゼオラの為に何かの料理を作り出した。


 口喧嘩もヒートアップし始めた頃に冒険者を殴り、ゼオラの前に作ったつまみを出して喧嘩を止めて質問する。


「天の魔女様。これで落ち着いてくれ」


「しゃーない。許してやろう」


「ぐうぅぅ……おい。店主……ふつう客なぐるか?」


「この店を出禁にされたくなかったら黙ってろ。……先生。あんたが天の魔女って事を疑ってる訳じゃないが……少し質問していいか?」


「うん?年齢以外なら何でもいいわよ?」


 それはこの前聞いたと店主はため息を付いてから質問する。それはこの村を含めたこの辺りの事だった。実力的にも村人のほとんどがゼオラの事を言わないだけで天の魔女とは思っているが……どうやって転移しているかと言う事だった。


 いくら強いと言っても魔法を使えるから強いのであって転移の魔法や魔術が使えない場所で転移できるのは異常な事だった。そんな場所で転移ができるのであれば何処に行くしても流通の面にしても便利なので転移できる方法があれば教えて欲しかったからだ。


 そんな悩みだったのだがあっけらかんとゼオラは伝える。


「ん?村長から聞いてないの?この辺の森の主が私だから!」


「全然わからん」


「うん。言ったけど確かにそれだけじゃわけわかめだったわ。私の縄張りでは転移できない結界張ってあるから私以外は転移できないって話。大昔の村長に言ったけど伝わって無かったの?」


「……まじか!?」


 嘘ついてどうするのよと文句を言った後に指をパチンと鳴らすと隣で殴られた頭をさすっていた冒険者が消える。そして出入り口の方向から驚きに声が聞こえた後にドアを開けて入ってきた。


「先生……やるなら言ってくれマジでびっくりした」


「すま○こ!……って言うか昔から重い荷物とか転移させてるの見た事ない?牛車とかぬかるみにはまって私が動かしてたでしょうに」


「そうだが……そういう動かす感じの魔法だと思ってた。って事は先生が結界を解除すればここにも転移できる様になるのか?」


 と期待を込めた目で店主が質問しここに転移できれば人が増えるし、生活が楽になるなと冒険者は言ったがゼオラはそれをやると村が無くなると答えた。


「村が無くなって良いなら結界とくから村の人達とよく話し合ってね」


「村が無くなるとは?」


「この辺が転移できない様にしたのって昔に転移魔法がはやり初めてそれを悪用して人さらいが増えたのが原因が一つね。今はほぼ居ないからこれはおk。もう一つは私の縄張りにはいないけど転移して植物を食べる鳥が縄張りの外にいるのがね。こいつらは普通に作物を狙うしそこそこ強い」


「あーあれか先生がこないだ肉食いたいって捕まえてきた鳥か」


「それそれ。私の縄張りは私がいるから賢くて強い奴は近寄らない。負けるからね。この辺にいるのは縄張りの外では生きていけない魔獣ばっかりってこと」


「えっこの辺ってまだ弱めなの?俺……ようやく赤い木を見つけたんだけど?」


「お前はちょっと黙ってろ」


 なんかこの二人面白いなーとゼオラは笑い話を続ける。


「で……一番の問題はこの森を抜けて幹まで行った所に住んでる蜂っぽいやつ。女王を中心にコロニー作って生活してるんだけど、蜂で言う働き蜂が転移して餌を広範囲から探しててその範囲以内にここも入ってるってこと。大きさは子供とか中型犬くらいだけど数もそこそこ多いし魔法も使うから村とか一瞬で消える。普通に人も家畜も襲うしね。村が昔から使ってる地下の貯蔵庫とかその魔獣の女王が巣別れしてこっちの方にきて巣を作り出したんだよ?倒したけど聞いてない?」


「そういや……じいさんが貯蔵庫は昔に蜂がどうとか言ってたな……と言うか先生まじか?」


「まじよ。幹まで行ったら普通にいるから捕まえてこようか?この辺りは魔物は強いかも知れないけどここまで豊かな土地で人が住まないって事はちゃんと理由があるのよ」


 その話を聞いていろんな事を整理する為に店主は腕を組みう~んと悩み始めた。そしてゼオラはまた酒を飲み出したので若い冒険者は手を上げてゼオラに質問する。


「先生がさっきから幹って言ってるのは何の事?」


「ん?あなたは冒険者よね?天上界と冥道界は知ってる?」


「ケイルって名前の金級冒険者だ覚えてくれよな。……それで天上界と冥道界だっよな。もちろん知ってる。雲より高い木を昇りその先にある楽園が天上界。で、深き大穴より落ちた先が死の入り口の冥道界って冒険者の間では伝わってる」


「まー軽く正解。この村から北に向くと雲より高い山が見えるでしょ?」


 外は暗くなっていたがケイルが窓から外を見ると雲に隠れた山が積もったであろう雪に月明かりがはんしゃしてほんのりと光っていた。明るい時にもみたがその山は何処までも広く北西や北東を見ても端が見えない程の大きな物だった。


「あれって言ってもほとんどの人が信じないけど大きな木なのよね」


「はい?」


「あの見える部分全部は木で言う所の幹にあたるから私は幹って呼んでる。知らない人は山って呼ぶけどね。あの木を雲より高く昇りさらに進むと天上界があるって話。で、さっきの話に戻るけどここからでも見える辺りにその転移できる蜂がいるから結界があるって話」


「すげー嘘くさい……酒飲みのうわごとにしか聞こえない。でも天の魔女ってのが本当なら本当なのか?天の魔女と数人だけだろ?天上界に行ったのって……」


「ケイルだっけ?その髪の毛むしってこの毛いる?って聞いてやろうかこの小童!」


 ゼオラとケイルが口喧嘩を始めたタイミングで、ようやく考えがまとまった店主がこちらに戻って来て話に加わった。


「……転移の事はこのままでいいか。流石にシャレにならん。というか俺が前に話した六星魔の話と先生の話を合わせるとたまに飲んで話してる畑荒らし六人衆が六星魔だったのか?」


「まさにそれ!今日会ってびっくりしたわ。あいつらのせいで私が天の魔女って事になったし!思い出しただけでも腹立つわ!」


「おっ?何それ。俺もその話聞きたい聞きたい」

       

 ゼオラが酒のネタによく話す畑荒らし六人衆とは世間一般で言う所の六星魔の事であった。今より遙か昔、戦いが絶えなかった時代に六人の魔導師が果ての森を抜け空の上にある争いもない楽園。天上界を目指した。


 その道中で見かけた小さな家には希少植物が大量に生えていた小さな庭があり家の中には全てを直すと言われた薬や一国の王ですら持っていないと言われる宝石などが飾られていた。


 それを家主がいれば分けてもらおうと考えた。が、数日そこで待っていても現れなかった為に言い方は悪いが盗んで天上界へ行く為に幹へと向かった。


 それが六星魔の運がつきた瞬間だった。転移する虫や地上とは桁違いの力を持った魔獣達を倒しもう少しで雲を抜けるといった所で荒らした家の家主が戻ってきた。


 荒らされた畑や家を見てゼオラはぶち切れる。すぐに追跡し荒らした者の所まで飛んだ。


「へーって事は……そこから伝説になってるみたいに眠りもせずに先生と六星魔が七日間戦い続けたって話になるのか?」


「畑荒らしが天上界とか冥道界で活動してた魔導師に勝てる訳がないのよ。一瞬でボッコボコにしてやったわ!上に行ける位の実力はあったとは思うけど……というかどんだけ話盛ってんねん。7分もかかってないわよ」


「で、先生が昔から言ってるみたいに取られた物を奪い返して持ち物全て灰にして放置してきたって話だったよな。……よく生きてたな」


 店主が聞いていた様に六星魔と対峙したゼオラはほんの数分の間に六人を文字通りボッコボコにして男女問わず『崩壊』を使い身につけている物すべてを破壊し生まれたままの姿にした。


 それでも怒りが収まらなかったゼオラは六星魔が空間に収納している魔法やアイテムにまで干渉し文字通り全ての物を破壊した。


「もっとひどい畑荒らしもいるけどあの時はマジでキレたわ。やっと栽培方法見つけて根付いた薬草とか盗まれたのよ?しかも取り返したけど枯れたし……あー腹立つ」


「さっきから面白半分で聞いてるけどマジなのか?」


「ケイルだっけか?お前さんはここの出じゃ無いから先生の事を知らねーだろうけど村の者からしたら先生が天の魔女じゃない方が違和感あるからな。で……そこで話は終わらずに先生がたまに使ってる魔法を使って体中に生えてる毛という毛を全部消滅させたって話だ」


「毛根は殺してないから生えてくるわよ。私が奪われた薬草は品種改良したのもあったから二度と生えてこなかったけども……♂♀問わずツルツルにしてやったわ!それでその時に畑荒らしを脅すのに……我は天!天の魔女ゼオラ!って言ったって訳……」


 話してる内に少し酔いも冷めてしまいノリで言ったとはいえ恥ずかしい過去を思い出し手で顔を覆いテーブルに倒れ込んだ。


「思い出しただけでも恥ずかしいわ……店主。もう一杯ちょうだい」


「ほらよ」


 気持ちよく酒を飲んでいるゼオラを見ると伝説に残る様な魔女には到底思えないなーとケイルは思ったが嘘にしても本当にしても面白いのは間違いないのでまだ早い時間でもあったので質問を続けた。

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