第24話 騒動のその後
シャリーとその相方であるケイルがメタスホーネットの巣から救出され数日ほど経ち、大きな怪我などはなかったが様子を見るという形で数日ほど医療院という場所に入院しそのお見舞いにリロリーとルギスが来ていた。
「しかしよく助かったわね。巣の中を歩いているときは絶対に駄目だと思っていたけど……」
「私も思いました!あの肉団子みた時は流石に駄目かと思いました」
「ルギスさんは相変わらずで……運が良かったのもあるけど何というかアーゼ様のおかげですね」
「と言うと?」
シャリーがメタスホーネットに攫われる数日前にゼオラと防具を見に行った事が生死を分けた。その時にゼオラが自分の力で破れる服か単よく切れる短刀をすぐに手に取れる場所にしまっておけとアドバイスを受けていたのが幸いした。
農場でいなくなった家畜を調査中にどこからともなく現れた蜂の魔物にシャリーとケイルは一瞬で敗北し巣に連れて行かれた。
幼虫の餌にされる時に団子がある程度の大きさにする必要があるので取ってきた獲物を纏め逃げない様に蝋で固められる。
その時に目をさましたシャリーは周りに蜂がいないタイミングを狙って服を破り魔法で蝋を溶かし動ける様になり気絶してるケイルを探し出し短刀ですぐに装備を切って助け出した。
そして起きたケイルと協力して魔法で蜂達から見えにくい場所に穴を掘り壁を埋め助けが来るまで息を潜めていたという感じだった。
「アーゼ様から聞いてなかったらと思うとぞっとしますよ」
「何にしても助かって良かったわ」
妹が助かった事にリロリーがホッとしていると一緒に来ていたルギスが水を差す。
「でもあれですよね?先生が専門家に任せとけっていう様な事を言ったからシャリーが攫われた訳で巡り巡れば先生のせいでは?」
その台詞に何言ってんだと姉妹は似たような顔をする。
「それはただの結果論でしょうが……そんな事ばかり言ってるから蜂の巣に置き去りにされてびびって漏らすのよ」
「ぐっ……」
リロリーの言葉どおり蜂の巣でシャリー達を助けた後にゼオラはすぐに帰還した巣にルギスを放置して……
◆
「二人の意識もしっかりしてるしここで話す事はないわね。じゃあ帰るわよ」
皆が頷き一瞬で世界が切り替わるが、一人だけ世界が切り替わらず巣の中に残された。
「……はい?」
ルギスの周りにいた者達は全てが消えた。冗談にしてはシャレになっていないのでゼオラの名前を呼ぶが巣に響くだけで何の返事も帰ってこなかった。
何かが動く気配がありルギスが振り返ると巣の中を好き勝手に歩かれた蜂達が誰が見てる分かるほどにブチ切れモードで女王蜂直轄の親衛蜂を筆頭に視界を埋め尽くしていた。
「……確かに怒るのも分かりますけど!私に怒るのはお門違いでは!?」
そう言った所で魔獣がそうですね。ではお帰りくださいと言ってくれる訳でもないので、ルギスの声を合図に一斉に飛びかかった。
あっ……流石に死んだなと覚悟し蜂の大きな顎が首に触れる瞬間に景色が切り変わる。
「あら。遅かったじゃない」とそう笑うゼオラを見てルギスの下には小さな水たまりが出来ていた。
◆
また黒歴史が出来て良かったじゃないと笑うリロリーにシャリーは質問する。それはあのメタスホーネットの巣をどうするか? と言う事だった。
「とりあえず地の魔導師様には簡単には報告したんだけど詳細をどう報告するか? なのよ。流石に天の魔女様に手伝ってもらったとは言えないし……シャリーは金色でしょう?そのレベルの冒険者が簡単に負ける様な魔物がいるって言うのも問題……」
「頭痛いね……私の方も冒険者ギルドに報告しないと駄目だから頭が痛い……誰に助けて貰ったってなるし……」
悩む姉妹にルギスはいつもの様に答える。天の魔女様に助けて貰ったと書きましょうと。
姉妹はルギスの顔をみて大きなため息をついた。
「ご本人が嫌がるから天の魔女とは書かないにしてもルギスの先生とは書かないと駄目ね。どうせ出した報告書とかまともに確認しないからある程度は適当でいんだけど……」
「しっかしあの巣はどうするんでしょうね?幹にいる魔物が地上に降りてきてるのに先生もびっくりしてましたけど……地の魔導師ロキアス様に倒せるんでしょうかね?」
「その辺はアーゼ様いわく倒せるって言ってけど……かなりの高ランクの冒険者を雇っていかないと被害が凄そう。私達が見たのって働き蜂らしいけど女王直轄の蜂がいてそいつらは転移魔法で針を飛ばしてくるんですと……」
「うーん……私よく生きてた」
「あの蜂から取れる蜂蜜って美味しいですし……茸の方も気になるのでなんとか潰さずに有効活用したいですね。せっかくの資源ですし。たぶん他の国にはないですよ」
「そうかも知れないけど……まぁ無理。蜂からしたら私達なんて餌だし……どうしてもと言うならルギスが担当になってみなさいよ。距離もあるしなかなか大変よ」
「誰かやってくれるなら応援だけはしますけど……自分がやるのは絶対にいやです。まぁ討伐って方向になるんでしょうね」
「流石に危険すぎるでしょ……まぁアーゼ様に討伐後の処理とかちゃんと聞いておかないと駄目だし……やる事がおおい!」
「流石は私の先生で天の魔女……現れただけでやる事が増える」
シャリーを助ける為に読んだのにこの娘はめっちゃ失礼な事いってるなと姉妹が心を一つにする。そしてその事でまた三人を悩ませた。
それはゼオラにお礼というか謝礼をどうすか? と言う物だった。本人は別にいらないから肖像画を動かす時は絶対にお願いね。と行って帰って行ったが……流石に何もしないというのはあり得ない事だったが……魔導師の最上位である天の魔女に何を渡せば良いのかという大問題があった。
お金に困っている所は見たことはあったがお金がない訳ではないので謝礼金を渡しては喜ばれないだろうし……そもそも天の魔女に手に入らない物はあるのだろうかと言う話になった。
「正直……これが一番難しい……失礼がないようにしないと駄目だし。ルギス、貴女の妄想だろうけど元生徒なんでしょ?何かない?」
「妄想と違います!れっきとした天の魔女の弟子もしくは生徒ですよ!……そうですねー……まぁ先生ですから変に高い物とかお金とか渡すぐらいならお酒とそのつまみと……後は種とか苗とか渡す方が確実に喜びますよ」
流石にそれはと思ったがお酒が好きだとも言っていたし家に立派な畑があるとも行っていたし元ではあるが生徒であるルギスがゼオラに嫌がらせをしようとは思ってもいないだろうし、そもそも本当に何を渡したら喜ばれるかなどリロリーとシャリーには全く分からなかったのでその案を採用する事になった。
「シャリーが退院したら皆で買いに行きましょう。ルギス頼んだわよ」
「この天の魔女の一番弟子であるルギスにお任せあれですよ」
「冗談で言ってるのは分かるんだけど……天の魔女様の弟子って言うのも結構な問題になりそうだから言わない方が……」
その事が新たな波紋を呼ぶ事になるのは少し先の話になるのでリロリーは妹が帰って来た事を喜びシャリーも家に帰れた事を喜びルギスは友人が戻った事を喜んだ。
その頃別の部屋にいるケイルはと言うと……
「なんで男ばっかり見舞いに来るんだよ!」
「来てもらっただけありがたいと思え」
「それで噂の白い先生とか言う人は来てくれたのか?」
「来てない!これから来るはずだ!」
「じゃあ脈なしだな」
なんやかんやで友人はいるようで医療院内で騒がして怒られたとかなんとか。
ここまで読んでくれてありがとう。これでこの章は終わりになります。次回の更新は二章が書き終わったら投稿する予定なので気長にお待ちください。




