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畑とお酒と天の魔女  作者: 絵狐
一章 畑とお酒と天の魔女
21/24

第21話 防具を買おう

入り口に飾られた杖などを見ながら三人は店の中に入っていく。


 中はゼオラが想像していたよりも遙かに広く様々な防具が並べられていた。そして魔法使いのシャリーがおすすめと言うだけあって魔法を扱う者が好んで使う帽子やローブなどが綺麗に並べられていた。


 ゼオラが冒険者として活動していた時と比べるとなくなってしまった技術もあったが防具にしろ魔道具にしろかなり発達し技術の進歩を楽しんだ。


「基本的には同じだけど進歩してるわね。見てるだけでも面白いわ」


「そんなものなんですか?昔と比べるとかなり変わったと習いましたが」


「傘を想像するとわかりやすいわね。大昔から形状はほとんど同じだけど持つ所が変わったり材質が変わったりしてるでしょ?防具もまさにそんな感じね。材質が違ったり内側に護符とか術式が書き込んであったりとかね」


「そういうのって見て分かるものなんですか?」


「魔眼でも持ってれば楽に見えるけど無くても見えるというか感じるって感じね。そうじゃないと魔法とか避けるのって無理だしね~」


「あれですね……アーゼ様ってやっぱりというか何というか魔法使いとは住んでる世界がちがいますよね」


「あのね……魔法使い魔術師ならともかく魔導師を名乗る者なら誰でもできるわよ」


 リロリーが心の中で絶対に嘘だと心の中で叫んでいるとシャリーが気に入ったローブを数着見つけた様でゼオラの意見を聞く為にそれを持ってきた。


 一つは中に装備そのものが強化される護符が縫い付けられた物で全体的な防御力が上がる物。もう一つは魔力の回復速度を手助けしてくれる物。もう一つは身体能力を向上させてくれる物だ。


 どれも素晴らしい作りで並の魔物なら牙も通らない様な防具にゼオラもおぉーと感激の声を上げる。


「これ一着いくらなの?」


「一番高いので金貨十五枚ですね。予算が十枚ぐらいなので少しオーバーしますが買えます!装備をケチって死にたくないので。それでアーゼ様。どれがいいと思います?」


 時代の流れって凄いなーと笑いゼオラはその服を触って調べる。ついでにシャリーが着ているローブも触って確かめ……思った事を質問する。


「シャリー。少し聞きたいけどあなたは今着てる装備もそうだけど自分の力だけでひっぱって破ったりできる?」


 質問の意味は分からなかったが、流石に魔獣や魔物の攻撃を防いだりする様な装備を破ったりする事など常人よりは力はあっても魔法使いのシャリーは無理だと答えた。


「流石に無理ですよー。姉さんならワンチャン可能かも知れません」


「私はゴリラか!私でも無理よ」


「じゃあ……やめておいた方が良いわね。というか今着ているローブも売って中に着るというか体に密着する装備にお金かけた方がいいわよ。籠手とか腹巻きとかね」


「どうしてなんですか?」


 姉妹の疑問にゼオラは答える。大型の魔獣や魔物の相手をして体当たりの様な攻撃を躱し損ねて魔獣の牙や角に装備が引っかかったりすると自分の力で破れないと下手すれば命つきるまで引きずられたりする事もある。


 他にも投擲系の攻撃で打ち付けられた時など破れる様にして置かないとただの良い的だと教えた。


「貫通せずに助かる事も多いから一長一短だけどね。大型の魔獣の攻撃を躱したのは良いけど牙に引っかかってそのまま食べられたってのもあるから難しいけど……外側のローブはもう少し押さえて中の装備にお金かけた方が良いと思うわよ」


二人ははいまいち実感がわかない様だったので破れたら弁償すると言ってゼオラはシャリーがいま着ているローブの裾を踏み。一分後に魔法をぶっ放すからそれまでに破って逃げてねと伝えた。


「……あと三十秒~」


「あっアーゼ様!本気ですか!?というかビクともしません!」


 その美しい足からは想像もできない程の力がありシャリーがいくら本気で引っ張ってもゼオラも服もビクともしなかった。そして一分が経ちゼオラがぱっと足を離すとバランスを崩しは尻餅をついた。


「とっ、まぁこんな感じね。外側の装備にお金かける物良いけどおすすめは内側ね。それに中に着る装備だと対人の時とか装備を隠せるしね~」


 今のが魔物だったらと考えると大変な事になったと少し落ち込むシャリーに変わりリロリーが質問する。


「破らないと駄目なのは分かったんですけど刃物で切ったりでも良いんですよね?それならわりかし楽に切れると思うんですよ」


 今出さなかったでしょ? とゼオラがウィンクすると二人はあっと声にだし納得した様に頷いた。


 そんなやりとりを店の店員や他の冒険者も見ていたようで感心した様な声と納得した様な声が聞こえた。


「……今ので自分の力で破れないのはかなり危険だと思いました」


「後はよく切れるナイフでもすぐに手に取って使える所に忍ばせといた方がいいわね。それなら別に外の装備にお金かけても大丈夫だし。というかシャリーは金色の冒険者なんでしょ?今までそんな危険無かったの?」


 基本的には安全な場所から魔法をぶっ放すのがお仕事ですからと苦笑いし、今の話を近くで聞いていた店員を呼び装備の相談をはじめた。


 シャリーが店員と相談を始めたのでゼオラも自分が着る装備を見繕いはじめる。


 天の魔女がどういう装備を買うのか気になったリロリーは装備を見て悩んでいるゼオラに質問する。どういう物を買うのかと。


 その質問にゼオラはかなり悩んでいるようで逆にリロリーに質問する。


「基本的にいっつも布の服だからどんなの買えば良いか分からないのよね」


「どんなのが欲しいんですか? 近距離とか遠距離用とかの装備はありますよ?」


「そもそも魔導師の視界に入るなって話だから……それだと話が進まないわね。普通の装備が良いのよ。普通の装備」


「……普通ってなんですか普通って」


「理想は……身につけたら何処にでもいる様な普通の魔法使いに見える感じのが良いわね。街に来る時はそれで来ようかと思ってる。できれば髪の色までは変えたくないからそれなりに出来そうな冒険者に見える装備が良い感じね」


 そう言われたのでその辺にある装備を頭の中でゼオラに着せてみるが自分の想像力が足らないのか……どう足掻いても弱そうに見えない事態になってしまったので別の店員を呼び、ゼオラの理想を伝えコーディネートしてもらう事になった。


 最初はお任せくださいと超強気だった店員も一着、二着とゼオラに着替えてもらう度にその顔を曇らせていった。


「……そろそろ二桁になるんだけど?というかこれなら何処にでもいる魔法使いか魔術師に見えるでしょ」


「「全然」」


 リロリーと店員が声を合わせて否定する様に何を着ても手練れの冒険者か成熟された魔法使いにしか見えなかった。


「なんでなんでしょうね?こう……雰囲気というか立ち振る舞いが弱そうに見させてくれない感じですなんですかね?」


「私も長い間ここで働いていますが……なんというか素材が良すぎて何を着ても似合う感じになってしまってますね……あとお客様の場合は全く魔力を感じないのでそれも異様な雰囲気が出てるのだと思います。その装備ですと魔力に反応して強度があがる護符がついているので護符は反応してるのに魔力を感じないというおかしな現象が発生していますので……」


「魔力を見せたら魔力感知で狙われるわよ」


「アーゼ様……ここは街の中ですから攻撃される事なんて滅多にないですよ」


「つい先日、空の魔導師に攻撃されたわよ」


「後は……お客様のその白く美しい髪も原因の一つかと試しに髪の色を変えて見るのはどうでしょう?白い髪の方は街の中でも見かけますがそこまで綺麗で長い髪は珍しいので」


「うーん……せっかくだし変えて見ましょうか。ピンクでいい?」


「どうしてその色を選んだんですか……無難に黒でいいのでは?」


「黒はね…………死者に祈る色だからあんまり好きじゃないのよね」


「じゃあピンクはどうなんですか?」


「ピンクは淫乱かな?」


 淫乱は良いのかと? リロリーと店員の頭の上には?マークが浮かんだ。そして今着ている装備をよく観察してからゼオラは指をパチンと鳴らした。


 すると白く長い髪は水を吸い上げる様に変わっていき深い海のような濃い青へと代わりその色の美しさに見ている者は歓声をあげる。


「どうよ!これなら金色ぐらいの冒険者にみえるでしょ!」


「「「いやー……全然強そうです」」」


「なんでよ!」


 教えてもらった事を参考に新しい装備を買ったシャリーも加わりゼオラのコーディネートを手伝ったが……髪の色を変え装備を変えるもその辺にいる魔法使いには見える事は無かったので、一番マシな装備を買い髪の色はいつもの白に戻した。


「納得がいかないけど……まぁいいわ。それで?シャリーの方も買い終わったの?」


「はい。流石に今着ているローブを売るのもあれでしたので、中にきる防具と短刀を買いました。今までこういう装備は着なかったので少し重たいのと動きづらいですね」


「その辺は魔法使いでも暇な時に走るか模擬戦でもして体力つけて装備にも慣れなさいって感じね。魔力なんて突き詰めれば生命力だから魔法使いでも体力つけておいて損はないわよ」


「それもそうですね。戦闘中に息切れするとか話になりませんね」


 まさにそんな感じとゼオラは笑った。防具屋で買う物は買いゼオラも当初の目的は終わったので野菜の種や苗が売っている所を本職のリロリーに訪ねると近くにあると言う事なのでついでに案内してくる事になった。


「さすが帝国。王国に行った時には全然なかったのに……というか悪いわね。付き合わせて」


「あれだけ美味しい物を頂いたら返せる方法もないので喜んで案内しますよ。というかアーゼ様って伝説にもなっているのに話しやすい方ですね。もっと気難しい人かと思ってました」


「そう?まー……魔導師とか変なの多いからね。私の場合は酒場が好きだからよく村人と飲んでるからその加減なんじゃない?大昔はもう少しきつかったとは思うけども」


 そんな話をしながら街をぶらつき目的の苗などが売ってる店に入り、帝国が品種改良して販売している苗や種を買ったりしたり三人で夕食を食べたりして肖像画の事をリロリーに念を押してゼオラは自分の家へと帰っていった。


そして畑を耕したり買った苗を植えたり酒場に飲み行ったり、ルギスから私の分は無いのかと村長宛に文句が届いたのを無視したりして一週間がたった頃にリロリーから連絡が届いた。


 ようやく肖像画を破壊するチャンスがやってきたとゼオラは心を躍らせたが……届いた内容はそうでなく切羽詰まった様な文字でこう書かれていた。


 数日前から妹のシャリーが戻ってこないのでどうか手を貸してほしいと……

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