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畑とお酒と天の魔女  作者: 絵狐
一章 畑とお酒と天の魔女
18/24

第18話 魔女の日常

 ゼオラは目覚めるとやっぱり二日酔いだったのでいつもの様に自分で作った二日酔い浄化薬を飲み酒場の一階で朝食を取る。


 食べる量は少ないでささっと食べてから酒場の店主の妹にあたる女将に礼を言って店の前に置いてあった蜂蜜酒様の樽を回収して服の修理を頼んでいた仕立屋へと向かった。


「……店主。普通の蜂と勘違いしてるわね。あの蜂でかいからもっと大きな樽を持て行きましょ」


 そんな事を言いながら目的の場所にたどり着くとゼオラのライバルである犬のロゼが店先に繋がれていた。この犬が店先に繋がれている時は主人留守という証だった。


 ロゼがゼオラを発見すると姿勢を低くしうなり始める。


 繋がれているロゼを鼻で笑い鎖の範囲外から煽り始める。


「おん?この犬畜生がよ。お前みたいな奴は鎖に繋がれてるのがお似合いだ!バーカバーカ!」


「ガルルルルル!ぎゃんぎゃん!」


「おおん?いっちょこまえにこのゼオラ様に文句いってるんか?ほれ!ほれ!かかってこいクソ犬!!」


 ゼオラが煽りロゼが怒る……そのやりとりを何度か繰り返すとロゼの激しい動きにロゼをとその鎖を止めていた杭がスポッと抜けた。


「あぁーーーー!誰よ!杭ぐらいちゃんと打ち込んどきなさいよ!」


「ワンワンワンワン!」


 そこから店主が戻ってくるまでゼオラとロゼの第二ラウンドが始まった……


◆◆◆


 やっと戻って来た店主は一人と一匹の喧嘩を止めた。そして後に大きくため息をつきゼオラを店に招き珈琲を準備する。


「ゼオラ先生……いい大人なんですから犬と喧嘩しないでください」


「何言ってるのよ。いい大人は犬と喧嘩しないわよ。というかあのクソ犬は魔物の餌にしない?」


「家族なんですからしません……それと先生の服は直ってますよ」


「仕事がはやいわね」


 前に農具に引っかけて破れてしまった服をゼオラ喜んで受け取った。それから店の奥にある生地などをおいてある部屋へと二人で向かい帝国で買ってきた生地を全てテーブルの上に並べついでに魔導ミシンも出した。


「とりあえずこの肌触りの良い生地でいっつも着てる服に似てるような形で作って欲しいのよ。あとその魔導ミシンはお土産。使ってみて使いやすかったらあげるわ。いらなかったらバラして構造見るから教えてね。あとこれ説明書」


 生地の多さにも驚くがお土産に最新式の魔導ミシンとかどういうことだろうと店主は絶句する。


「さっさすがに……これだけの量は……先生払いますいくらですか?」


「ん?安かったから良いわよ。いっつもツケで作ってもらってるし。その生地は私の服をつくったら店で使ってもいいわよ」


 いつもの事だがお金を払うと言ってもツケがあるからと言って受け取らないので仕立屋の主人は諦めて素直に生地とミシンを受け取った。


「先生いつもありがとうございます。服の方は全部で十着で良かったですか?」


「ええ。白を基調に良い感じにデザインして縫っておいてあなたのセンスに任せるわ」


「それが一番大変なのですが……」


「本職なんだから頑張りなさい。私はこれから蜂蜜取りに行くからまたその内来るわ」


「分かりました。すぐに来られると思いますが来なかった時は村長から連絡してもらいます」


 了解~と軽い感じで挨拶をしてこちらを見ていたロゼに中指を立てた後にまた元からいなかった様にゼオラはそこから消えていた。


「間違いなく凄い人なんだけど……いつもあなたと喧嘩してるからそうは見えない」


「わんわん!」


「さてと新型の魔導ミシンって使いやすいのかしら……」


 ゼオラは村からかなり離れた場所に転移していた。その場所は多くの人は山というが、天井界にいく為の山より巨大な樹木なので幹と呼んでいた。


 まだその場所は危険ではあったが竜が住む天井界よりは安全で頑張れば人が生活できる様な場所だった。ただまぁゼオラの結界の外で森より遙かに危険なのでケイルやシャリー程度の冒険者であれば数分も持たないそんな場所だった。


「先にまんだらけさがして実を取ってから……メタスホーネットね。まー……蜂の方は巣がある場所は地下だし場所も変わらないからまんだらけを探しましょう。パウンドケーキにしてみるのもありね」


 暢気にそんな事を言っていると風を切る音と共にゼオラの腕より遙かに太い針が空から雨の様に降り注ぐ。


 いつもの瞬間転移でそれを躱しその針の主を視界に収める。


「畑荒らしならぬヤマアラシって感じね。ちょくちょく幹には来るけどあなたは初めましてね」


 ゼオラに攻撃してきた魔獣は姿だけはヤマアラシによく似ていたがその大きさは熊よりもさらに大きく牙や爪も動物とは比べものにならないほど鋭く尖っていた。そして転移したゼオラを一瞬だけ見失ったがすぐにゼオラを発見し次の攻撃の動作に入る。


 だが次の瞬間には地面が盛り上がりそのヤマアラシの魔獣を飲み込んだ。


 ゼオラや魔獣が立っていた場所は地面ではなく巨大なトカゲの様な魔獣で獲物を飲み込むと今度はゼオラと目があった。


「戦うって言うなら戦うけど起こしてごめんなさいと言って伝わるなら謝るわよ?」


 その言葉が伝わったのかゼオラには勝てないと悟ったのかは分からなかったがまた地面に隠れる様にその魔獣は擬態しおとなしくなった。


「流石は人類屈指の危険地帯ね」


 空を飛んで目的のまんだらけを探しても良かったが今の様に遠距離から攻撃してくる魔獣も多いので陽当たりが良い場所に短距離転移を繰り返し探していく。


 一ヶ月に一度程度は別の用事の幹に来るのだがそれでもこの巨大な樹木の全てを見て知っている訳ではないのでちらほらと初めて見る魔獣を見かける。


 通った後が溶けその殻が鉱石でできている様なカタツムリや、襟巻きの部分で光を集めそれを魔力と結合させ攻撃に転用するトカゲや立派な角から圧縮した空気を打ち出すカブトムシの様な魔獣まで様々な魔獣が幹では生態系を作っていた。


 そして転移を繰り返しもうすぐ天井界。竜の住む世界にさしかかろうとした日当たりの良い場所でようやく目的のまんだらけを見つけた。


「こいつら……こんな上の方で生活できるの?さっきのヤマアラシの方が強いでしょうに……というか天然物の方がデカいわね」


 帝国の農場でゼオラが種を植えた物が養殖物なら栄養、魔力共に十分すぎる程に足りているまんだらけは二倍も三倍も大きかった。そしてその体色も毒々しい色合いではなくどちらかと言えば綺麗な色合いをしていた。


 まんだらけの強さでは幹の上部では生きていけるのは大変だと思い少し観察していると、近くの景色に擬態していて獲物が来ると集団で襲いかかっていた。それは巧妙で空から見ると普通の花にしか見えなくもしかしたら先ほど転移を繰り返していたが見落としていたかも知れないほどだった。


 それでようやくゼオラは納得し少し群れから離れたまんだらけの空間を固定し、その顔? の中央部分にある実を数体から回収した。倒して素材としても良かったがゼオラ自身お金に困ってないので回復薬も入浴剤もまだまだあるので無駄に殺す必要もなかった。


 回収した実を収納しその場から少し下った場所に転移する。そして取れたての実を一つ向いて小さく切ってから口に運んだ。


「……流石は天然。養殖が不味い訳じゃないけど……本当に美味しいわね」


 そしてもう一つ口へ運ぼうとするがこんな危険地帯ではゆっくりできる訳もなく、次は尾の部分が剣の様になった蛇が現れ攻撃を仕掛けてきたのでため息をつくまもなくその場から転移した。


 次の目的地はまんだらけがいた辺りより下に位置する場所にいる蜂。メタスホーネットと呼ばれる蜂だ。この魔獣は蟻の様に地中に巣を作り蜜を作る魔獣だ。蜜を作る魔獣だ花などから蜜を集めるだけではなく魔獣などを襲い巣へ持ち帰る習性もある。恐ろしい所はゼオラが前に転移する蜂がいると言っていた蜂がこのメタスホーネットだった。


 一度、巣を作ると女王が死ぬまでその場を動かないのでゼオラのが蜂蜜を採取する時はいつも同じ巣からだった。そして巣の近くに転移すると兵隊蜂がゼオラを見かけ威嚇する。


「お?……守ってる兵隊蜂が少ない。巣分かれでもした?」


 先ほどのまんだらけと同じように空間を固定し兵隊蜂達を動けなくしてからゼオラの背丈より高い巣穴の中へと入っていく。


 若い蜂達はゼオラを見かけると威嚇し襲いかかってくるがゼオラを見かけた事のある古い蜂達は諦めた様に無視し気にせず自分の仕事していた。


「この巣も何百年前からあるって話だし……私が略奪者だけども顔なじみと言えば顔なじみよね」


 巣の中を我が物顔でゼオラは歩くが古い蜂達が新しい蜂達に何かを伝えた様で襲ってくる蜂達もどんどん減っていき蜂蜜を貯めてある部屋に着く頃には襲ってくる蜂はいなくなっていた。


 蜜が溜まってる部屋にたどり着くと樽を取り出し兵隊蜂とは少し形の違う羽のない蜂に声をかける。


「よーし。この部屋ぶっ壊されたくなかったらこの樽に蜂蜜ちょうだい」


 まさに略奪者だが……このやりとりもいつもの事なので諦めた一匹の蜂がゼオラの近くにやって来てその樽を運んでいった。そして部屋の上の方へと上がっていき蜜が溜まっている場所に小さな穴を開けその樽に入れ始めた。


 ドロッとした液体なので樽が一杯になるのは少し時間がかかったがなみなみに入った樽をゼオラの前に持ってくる。


 その蜂に礼を言ってから樽に蓋をし空間に収納する。


 用が終わったら早く帰れと言わんばかりにその蜂がゼオラを見つめているので、軽く手を振ってから入り口の方へと向かった。


 帰り道ではゼオラの事を警戒はしていたが襲ってくる蜂もいなくなっていたので空間を固定していた蜂達を解除し入り口へと戻って来た。


 本来ならもっと蜂がいるのだが入る前に言った様に巣分かれしたか、何者かに襲われて数を減らした様だった。


「まぁ……転移できるだけで戦闘能力はそこまで高くないから減りもするか」


 ゼオラからすればの話で一匹だけでもケイルやシャリークラスの冒険者なら相手にならない位の強さをほこったりもする。


 流石にこのまま帰ってはただの略奪者なので少し巣の周辺を調べ蜂より強い魔獣がいたら適当に倒してから家へと帰還した。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。連休が恋しい。

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